地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
13 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • -特集号の趣旨-
    山下 清海
    2020 年 13 巻 3 号 p. 139-141
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
  • 矢ケ﨑 典隆
    2020 年 13 巻 3 号 p. 143-160
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    ロサンゼルス大都市圏では,1970年代以降,多民族化が進行してエスニックタウンが増加し,エスニックモザイクが形成された。本稿は,エスニック社会を読み解くための視点と方法を提示し,エスニックタウンの動態をエスニック資源の活用に着目して検討することを目的とする。はじめにロサンゼルスの都市化とエスニックタウンの形成過程を検討し,次にエスニック社会を読み解くための12の指標を提示した。これらの指標はエスニック社会を構成する要素であり,エスニック資源でもある。エスニック資源に着目すると,エスニックタウンは3類型に区分される。移民の流入とエスニックタウンの萌芽から,エスニック資源が高度に活用されホスト社会への発信が活発化するまで,3段階が想定される。また,エスニック資源の活用形態は,時代の枠組み,地域の枠組み,移住プロセスの枠組みによって説明することができる。
  • -ノートルダム・ドゥ・ラソンプション大聖堂の史跡指定を中心に-
    大石 太郎
    2020 年 13 巻 3 号 p. 161-177
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル フリー
    本稿では,カナダ国立公園局の史跡情報データベースおよび現地調査にもとづいて,カナダの沿海諸州に居住するフランス語系少数集団アカディアンに関連する史跡を事例に,エスニック集団の文化遺産を活用した地域活性化の試みを検討する。最近まで,アカディアンに関連する国指定史跡は18世紀以前にさかのぼるフランス植民地時代や英仏植民地抗争期の要塞などがその大半をしめていた。 2017年に史跡指定が発表されたノートルダム・ドゥ・ラソンプション大聖堂は20世紀半ばの建築であり,マイノリティとして苦難の歴史を歩んできたアカディアンのレジリエンスの象徴である。大聖堂は,史跡指定により文化遺産としての価値を増したことに加え,最新の技術を活用したデジタル博物館としてよみがえり,とくに北アメリカ各地に居住するアカディアンの末裔によるルーツ・ツーリズムを中心に観光客の増加といった地域活性化への貢献が期待される。
  • 根田 克彦
    2020 年 13 巻 3 号 p. 179-196
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,タワーハムレッツ議会によるタウンセンター政策と,ブリックレーン商業集積地の土地利用を検討して,政策と実態との間の整合性を考察する。1990年代後半以降,タワーハムレッツ議会はブリックレーンをバングラタウンとしてブランド化し,バングラデシュ系住民の起業機会を確保し,観光地として発展させた。ブリックレーンの北部では文化・クリエイティブ産業が集積し,夜間経済が発展した。さらに,ストリートアートが観光客を全国から吸引した。しかし,2013年以降,南部ではバングラデシュ系の事業所が減少し,多様なエスニック料理と高級専門店が増加し,商業ジェントリフィケーションが進展している可能性がある。このように,ブリックレーンは,広域商圏を持つ専門的な商業集積地になりつつあるが,タワーハムレッツのタウンセンター政策では,ローカルな需要を満たすディストリクトレベルの階層に位置づけており,ギャップがあるといえる。
  • -スペイン・バスク州ドゥランゴにおけるブックフェアの事例-
    石井 久生
    2020 年 13 巻 3 号 p. 197-214
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,スペイン・バスク州のドゥランゴにおいて毎年12月に開催されるブックフェアを研究対象とし,そこで扱われるエスニック資源や関与するエスニック資本の特徴,それらと地域に刻まれた記憶との関係を記述することで,祝祭がバスク語話者集団と彼らの住む地域を活性化させる過程を明らかにすることを目的とする。1965年に始まったドゥランゴのブックフェアは,現在ではバスク地方最大の文化の祝祭といわれる。来場者はバスク地方在住のバスク語話者にほぼ限定され,彼らは巡礼のように頻繁に来場する。これを主催するゲレディアガ協会は,ブックフェアと来場者を結ぶ社会起業家としての役割を担う。この協会名には,かつてドゥランゴ一帯の政治的自治が執り行われた場所の象徴的地名が冠されている。バスク語話者集団が共有するドゥランゴに刻まれた場所の記憶が,彼らにとってのネイションとしてのバスク地方の地域活性化と連動しているといえる。
  • 加賀美 雅弘
    2020 年 13 巻 3 号 p. 215-230
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    オーストリアには多様なエスニック集団が居住しており,エスニック文化を資源としたビジネスが 展開されている。たとえばウィーンの代表的なエスニックマーケットであるナッシュマルクトでは,固有の文化をアピールすることにより,利益をあげている。また,自身の文化を示すことは,集団への帰属意識を高める一方で,ホスト社会における理解を深め,共生の可能性を大きくしている。 しかし,難民やロマのように差別の対象とされる集団は,固有の文化をアピールする機会は限られている。彼らが自身のエスニック文化をいかに活用し,アピールすることが差別や不公平の状況から変わることにつながるのか。ロマを対象にして,彼らの社会的統合との関わりからエスニック資源の可能性について検討した。
  • -エスニック・タウンの価値と地域活性化-
    福本 拓
    2020 年 13 巻 3 号 p. 231-251
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は,SNS等を基盤にグローバルな展開を見せる韓流ブーム下での,生野コリアタウンの観光地化に伴う変容と,地域活性化への課題を明らかにすることにある。2000年代以降,テイクアウト品や化粧品等の新たな消費嗜好に合わせた店舗が増大し,生野コリアタウンとその周辺では地価上昇や店舗の分布範囲の拡大がみられる。またアンケート調査からは,新たに増加した観光客の行動や意識が同地の歴史的特性や日韓の政治問題とは遊離しているものの,それらへの学習意欲が弱いわけではないことが看取された。既存の商店は,経済的価値の向上という部分では近年の変容を肯定的に捉えているが,多文化共生に資するような社会的価値に対しては,過去や現在の諸種の対立・軋轢により関与が難しい状況がある。しかし,後者もまた地域固有の歴史性としてエスニック・タウンの魅力を構成する一要素であり,地域活性化にとって経済的価値と併せて欠かせないものである。
  • -中華街構想の問題点と横浜中華街の実践例を通して-
    山下 清海
    2020 年 13 巻 3 号 p. 253-269
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    1990年代以降,日本各地で新たな「中華街」の建設が実施され,あるいは計画段階で頓挫した例もみられた。本稿は,これら両者がモデルとした横浜中華街の成功要因の究明を通して,日本における地域活性化におけるエスニック資源の活用要件について考察した。まず,屋内型中華街として,立川中華街,台場小香港,千里中華街,および大須中華街の四つの例を取り上げ,それぞれの設立の背景や特色,閉業の経過・要因などを検討した。次に,構想段階で消滅した中華街として,仙台空中中華街,新潟中華街,札幌中華街,苫小牧中華街,福岡21世紀中華街を取り上げ,構想に至るまでの経過や問題点などを検討した。これらの検討を受けて,地域活性化におけるエスニック資源活用の成功事例として,横浜中華街の観光地としての変遷とその背景などについて考察した。以上の結果,エスニック資源を活用した地域活性化には,エスニック集団,ホスト社会,そして行政の三者の協力関係の樹立が不可欠であることが明らかになった。
  • -特集号の総括にかえて-
    山下 清海
    2020 年 13 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
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