地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
5 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 呉羽 正昭
    2012 年 5 巻 2 号 p. 1-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/04/11
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  • 水島 卓磨
    2012 年 5 巻 2 号 p. 65-78
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,近世からの商業資本を基に発達した大分県中津より耶馬渓に伸びていた耶馬渓鉄道と,近代以降の鉱業資本により発達した福岡県豊前市宇島より内陸部に伸びていた宇島鉄道を取り上げ,郡市町村別の株式分布と主要な株主の属性ならびに,鉄道建設後から1945(昭和20)年までの旅客・貨物輸送の実績を検討し,資金調達と輸送実績の面からみた両鉄道の性格の違いを明らかにした。その結果,資金調達では沿線外からの出資者に両鉄道の差異が見られた。耶馬渓鉄道では日田,玖珠などの延伸予定地と新潟県,関西などの遠隔地から,宇島鉄道では宇島の産業と関連が深い筑豊の鉱業家からの出資があったことが判明した。輸送実績では,通年および月ごとの輸送量の変化から両鉄道とも地域交通,耶馬渓観光そして林産資源等の輸送を担う性格が明らかになった。また,宇島鉄道では宇島の産業の趨勢と輸送に密接な関係があることも明らかになった。
  • 安部公房「壁」を例として
    益田 理広
    2012 年 5 巻 2 号 p. 79-91
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は「シュルレアリスム文学」である安倍公房『壁』を用い,その舞台となる都市に対する著者自身の地理的イメージを明らかにすることにある。シュルレアリスム文学は作為を極限まで除去するという特質を有するために,文学作品の分析においてより純粋な地理的イメージを得ることができると期待される。『壁』の分析に際しては機械的に「都市空間要素」に該当する語句を抽出し,その種類と出現数によって,そこに見出される都市イメージを確認した。この「都市空間要素」は,大きく3 つのカテゴリーに分かれており,各々のカテゴリーへの該当数によって都市イメージ解釈を可能とする。更にこの結果を,本作の主要概念の意味と関連させて解釈した。また,都市イメージを得た後には『壁』中の主要な概念の関係図を作成した。まず語句抽出分析の結果を述べると,語句数は合計977 個で特に灯火や光に関係するカテゴリーや固有地名のカテゴリーに該当する語句が少なく,そこから抽象的・匿名的な都市イメージが存在することが予想された。これに場面ごとの分析を施し,屋内に語句が集中することや語句数の少ない場面と多い場面が交互に現れることも明らかにした。その後,頻出語句や作中における「壁」「身の回り品」といった主要概念の意味解明を行い,『壁- S・カルマ氏の犯罪』における都市イメージの中心には「人間=壁」と「都市=世界」の対立が認められること,その周縁にはそれを象徴するかのような「砂丘」での「壁」の成長や都市社会的な「身の回り品」の反抗が存在することを示した。更に,それらのイメージの核として「拘束」「遮断」が内在していることを明らかにした。
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