本論は,奄美大島出身者の長周期U ターン移動の特性とU ターンを可能とする諸条件を明らかにすることを目的とした。事例地域として同島宇検村芦検を選んだ。芦検出身者の空間的移動は出郷から帰還までのタイムスパンが長期にわたることが特徴である。出郷期にU ターン者は,就職により鹿児島県や沖縄県をはじめ3 大都市圏まで広範囲に移動した。その後,彼らは平均38 年に及ぶ本土滞在の間に大都市圏に集中する傾向を示し,退職を契機に母村にU ターンした。芦検出身者の長周期U ターン移動を実現させた要因は,出郷者どうしそして出郷者と芦検の住民との関係が,長期間にわたって温存されてきたこと,U ターン後の住居が確保されたこと,そして生活を支える定期的な年金収入の存在の3 点がうまく結びついた結果である。
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