地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
11 巻, 1 号
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  • 矢ケ崎 典隆
    原稿種別: 会長講演
    2018 年 11 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
    21世紀に地理学はどのような方向に進むべきなのであろうか。本稿は,地理学の伝統的な視角,すなわち自然と人間,起源と伝播,地域と景観,時間と変化に,グローバリゼーション,ローカリゼーション,サステイナビリティの視角を組み込むことにより,ローカルからグローバルまで,地域と世界を読み解くための考察の枠組みを提示することを目的とする。具体的な事例として砂糖について検討した。世界の砂糖はサトウキビ糖回路とテンサイ糖回路により供給され,これらの回路はそれぞれサトウキビ糖地域とテンサイ糖地域によって構成される。製糖地域を構成する四つの要素,すなわち資本,製糖工場,原料調達,労働力に着目することにより,製糖の地域的特色,製糖地域間の交流と競合関係,グローバルな動向,製糖の持続性について,地理学からアプローチすることができる。このような甘さの地域構造を探求することは,地理学にとって魅力的な研究フロンティアである。
  • 益田 理広
    原稿種別: 論説
    2018 年 11 巻 1 号 p. 19-46
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
    地理学の語源たる「地理」の語は五経の一,『易経』を典拠とする。『易経』は哲学書としての性格を有し,「地理」の語義についてもその注釈を通し精緻な議論が展開されている。本稿は,初期の「地理」注釈である唐宋の所説を網羅し,東洋古来の「地理」概念がいかなる意味を以て理解され,かつどのように変遷したのかを明らかにしたものである。 唐代における最初期の「地理」には,地形や植生間の規則的な構造とする孔穎達,及び知覚可能な物質現象たる「気」の下降運動とする李鼎祚による二説が存在する。 続く宋代には「地理」の語義も複雑に洗練され,次のような変遷を経る。即ち,「地理」を(1)位置や現象の構造とする説,(2)認識上の区分に還元する説,(3)形而上の原理の現象への表出とする説,(4)有限の絶対空間とする説の四者が相次いで生まれたのである。 これら多様な「地理」の語義は,東洋地理学および地理哲学の伝統の一端を開示する好資料といえる。
  • 川添 航, 坂本 優紀, 喜馬 佳也乃, 佐藤 壮太, 渡辺 隼矢, 松井 圭介
    原稿種別: リサーチ・ペーパー
    2018 年 11 巻 1 号 p. 47-62
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
    本研究は茨城県大洗町におけるコンテンツ・ツーリズムの展開に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を目的とした。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている地域である。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを来訪者として呼び込むことに成功した。宿泊業においては,アニメ放映以前までは夏季の家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は夏季以外の1人客の割合が大きく増加するなど変化が生じた。コンテンツ・ツーリズムの導入によるホスト・ゲスト間の関係性の変化は新たな観光者を呼ぶ契機となったことが明らかとなった。
  • 佐々木 緑, 堤 純, 磯野 巧, 永田 成文
    原稿種別: 地理資料
    2018 年 11 巻 1 号 p. 63-77
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
    本稿は,これまであまり着目されてこなかったオーストラリアにおける米産業の動向を明らかにすることを目的とした。また,同国米産業を題材としたESDのあり方を検討した。オーストラリア国内での米の経済的インパクトは小さいものの,米は同国の輸出用作物として栽培されてきた。灌漑地域の形成とともに入植が開始されて商業的米生産が始まり,同国の米生産はほぼNSW州の灌漑地域で行われていた。そこでは水利用制限の下,輪作の導入など環境に配慮しつつ高収量品種を導入することで合理的,かつ大規模にビジネスとしての稲作が展開していた。近年は干ばつによる水制限のため,綿花など市場価格が伸びている作物への転換がみられるなど米農家数が大きく変動していることが明らかとなった。オーストラリアにおける米産業の動向は水利用の視点からESDに活用でき,本研究の結果は資料的価値が高いものといえる。
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