地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
3 巻 , 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 鄭 美愛
    2010 年 3 巻 2 号 p. 77-95
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     本論は,奄美大島出身者の長周期U ターン移動の特性とU ターンを可能とする諸条件を明らかにすることを目的とした。事例地域として同島宇検村芦検を選んだ。芦検出身者の空間的移動は出郷から帰還までのタイムスパンが長期にわたることが特徴である。出郷期にU ターン者は,就職により鹿児島県や沖縄県をはじめ3 大都市圏まで広範囲に移動した。その後,彼らは平均38 年に及ぶ本土滞在の間に大都市圏に集中する傾向を示し,退職を契機に母村にU ターンした。芦検出身者の長周期U ターン移動を実現させた要因は,出郷者どうしそして出郷者と芦検の住民との関係が,長期間にわたって温存されてきたこと,U ターン後の住居が確保されたこと,そして生活を支える定期的な年金収入の存在の3 点がうまく結びついた結果である。
  • 花木 宏直
    2010 年 3 巻 2 号 p. 96-112
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     柑橘に関する従来の地理学研究では,生産や流通に関する研究の蓄積がみられるが,需要の実態についての研究が少ない。本研究では,全国有数の柑橘生産額であった和歌山県と,全国有数の人口規模であった和歌山市街を事例に,近世後期から明治前期の柑橘需要を検討した。近世中期の主力の柑橘品種は小蜜柑であり,歳暮や正月飾りとして利用された。近世後期には品種数が大幅に増加し,贈答品や装飾品,子どもの菓子代わりとして需要が拡大した。また,近世後期には今日の温州に相当する品種も登場したが,無核のため縁起の観点から好まれなかった。明治前期,柑橘の商品流通の機会が増加する中で,温州が日常的な嗜好品として注目され始めた。つまり,供物や贈答品から日常的な嗜好品への柑橘需要の変化が,今日の温州の生食による大量消費の端緒と位置づけられる。和歌山の事例を通じて,近世後期から明治前期にかけての嗜好品需要の変化の一端を明らかにした。
  • 林 琢也, 呉羽 正昭
    2010 年 3 巻 2 号 p. 113-138
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,長野市内を南北に走る国道18 号線(通称アップルライン)沿いに樹園地を有するリンゴ農家を事例に観光農園の経営戦略に注目し,アグリ・ツーリズムの変化を検討する。長野盆地はアグリ・ツーリズムの先進地であり,その成立には,善光寺参詣者やスキー客の存在といった既成観光地への近接性および高度経済成長期にリンゴ生産の核心地域を縦断するように国道が開通したことが大きく影響していた。しかし,上信越自動車道の開通した1990 年代半ば以降,人や車の流れが大きく変化した結果,交通条件に恵まれた立地条件を活かし,単に観光需要に応えるだけの経営では収益の維持が困難になった。このため,農園の経営理念や栽培のこだわりを理解し,支えてくれる個人客の獲得を重視した経営に方針転換が図られた。すなわち,個々の農園の自助努力や工夫を提示することで信頼関係を築くことの重要さが増し,観光農園は,その後の継続的な注文や関わり合いを促すための交流やきっかけ作りの場へと変化していったのである。
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