地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
5 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 日本老華僑の僑郷からヨーロッパ新華僑の僑郷へ
    山下 清海, 小木 裕文, 張 貴民, 杜 国慶
    2012 年 5 巻 1 号 p. 1-26
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     中国では,多くの海外出稼ぎ者や移住者を送出した地域を「僑郷」とよんでいる。本研究では,浙江省の主要都市である温州市に隣接し,伝統的な僑郷であった青田県が,新華僑の送出により,僑郷としての特色がいかに変容してきたかについて,現地調査に基づいて考察することを目的とした。山間に位置し貧困であった青田県では,清朝末期には,特産品である青田石の加工品を販売するため,陸路でシベリアを経てヨーロッパに出稼ぎする者も少なくなかった。光緒年間(1875 ~ 1908 年)には,ヨーロッパよりも日本へ出稼ぎに出る者が増加した。しかし,関東大震災の発生後,日本への出稼ぎの流れは途絶え,青田人の主要な出国先は,ヨーロッパになっていった。中国の改革開放政策の進展に伴い,海外渡航者が急増し,青田県では出国ブームが起こった。その主要な渡航先はスペイン,イタリアを中心とするヨーロッパであった。海外在住者からの送金・寄付・投資などにより,僑郷である青田県の経済は発展した。ヨーロッパ在住者やヨーロッパからの帰国者の影響は,僑郷の景観や住民のライフスタイルにも現れている。
  • 久保 倫子
    2012 年 5 巻 1 号 p. 27-42
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究は,都心部における人口回復および都心居住の進展をめぐる諸課題について,地理学における研究成果と統計データ等を基に明らかにし,それらを高校地理B「居住・都市問題」の単元において扱うための授業を開発した。授業展開例は以下の通りである。まず,導入部においては,東京,ニューヨーク,バンクーバーの都心部の景観写真を提示し,近年都心部でのマンション開発が増加し都心居住の傾向が著しくなってきたことを示す。次に,展開部1)では,各都市の特性を反映して都心居住が進行している要因が異なることを説明する。具体的には,東京都心部においては,マンション供給と公営住宅の建替えが人口増加を引き起こしたことを考察させる。そして,不良住宅地区などの都市居住問題が古くから顕在化していたニューヨークでは,都市生活を好む裕福層にむけた高級住宅が供給されるようになり,ジェントリフィケーションが進んでいることを示す。さらに,バンクーバーでは,裕福なアジア系移民による住宅購入が顕著で,EXPO'86 やオリンピックなどを契機として高級な住宅の供給が加速した。最後に,都心居住の背景にある都市居住問題を多角的に議論するとともに,現代世界の課題として都心居住を理解させてまとめとする。
  • 山下 亜紀郎, 谷口 智雅
    2012 年 5 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,2005 年10 月に復元事業が完成した韓国ソウル市の清渓川について,地上の橋上と河床面(水面)の両方からみた天空率・占空率を分析する。そしてそれによって,両護岸の内側の半地下状の水辺空間について,地上の空間との開放性(あるいは閉鎖性)の比較という観点からその空間的特性を定量的に明らかにする。観測方法としてはまず,レーザー距離計を用いて調査区間内の22 地点において,護岸幅および両岸の護岸高を計測した。次に,調査区間内の橋上および河床に設置された歩行者横断用の飛び石上の45 地点において,魚眼レンズを用いた写真撮影を行い,デジタル画像処理によって天空率と占空率を求めた。その結果,清渓川の水辺空間は,その空間的特性から上流,中流,下流の3区間に区分され,その中で特に中流区間において,高い護岸が水辺空間の閉鎖性を高めていることが定量的に明らかとなった。
feedback
Top