地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
14 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • -フランス・リヨンのブションを事例に-
    村上 繭子, 横山 智
    2021 年 14 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    フランス・リヨンでは1990年代以降,「美食都市」として食文化をアピールし,外国人観光客を集める政策を推進した。そして,伝統食を提供するレストランである「ブション」での食事がリヨンの食文化とみなされるようになった。しかし,伝統食を提供せずにブションを名乗る観光客向けのレストランが増加したため,伝統的な食事を提供するブションに対して,ブション協会がラベルを与えて「真正なリヨンのブション」を認定する動きが見られた。リヨンの食文化の真正性は,ブションのラベル作成によって構築され,そのラベルを得たブションのアイデンティティの確立と差異化を図る手段として機能した。しかし,トリップアドバイザーの口コミを用いた量的および質的な統計分析では,ラベルによる真正性は,ブション利用客の店への評価に影響を与えておらず,ブションの利用客に対してラベルの意味が正しく理解されていないことが明らかになった。
  • 岩井 優祈, 村山 祐司
    2021 年 14 巻 1 号 p. 19-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,伊能図と現在地図をGIS上で重ね合わせることにより,1821年から2020年までの日本国土の地理的変化を分析した。具体的には,街道,湖沼,河口,島を対象に,それらの位置や形状の変化を可視化するとともに,変化をもたらした要因を考察した。オーバーレイ解析を施した結果,(1)代替道路の敷設によって伊能が実測した街道の24.7%が現在までに消滅し,それらは地方の山間部に多く分布すること,(2)湖沼の周長や面積の変化量は基本的にその規模に比例するが,変化の要因には都市部と農村・山間部で違いがみられること,(3)大都市圏における河口の移動は流路の変更や改修に起因する一方,非都市化地域では主に浸食・堆積作用に起因すること,(4)都市に近い島ほど埋立・干拓による影響が大きく,自然的要因による形状変化は小島に多くみられることが判明した。これら実証分析の成果は,古地図研究においてGISを活用したオーバーレイ解析が威力を発揮することを示唆する。
  • 児玉 恵理
    2021 年 14 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,和歌山県美浜町における煙樹ヶ浜松林の環境保全活動が防災教育と観光資源の保持とどのような関係になっているかを考察する。地域住民の要望により,行政が主体となって松林の保全・管理が行われている。そして,南海トラフ地震の発生が予想される和歌山県の沿岸部では,松林の伐採や松の植樹などの防災教育が実施されている。煙樹ヶ浜松林の一部は,地域住民の交流の場だけでなく,次世代のための防災教育と地域活性化の場でもある。また,江戸時代から継承されてきた煙樹ヶ浜松林は,地域の防災資源であるとともに観光資源でもある。煙樹ヶ浜は,アニメの聖地としてコンテンツ・ツーリズムにおける目的地にもなっている。そのようなかかわりにおいて,環境保全活動は,物語による学校における防災教育と防災・減災対策における地域住民との連携による防災教育の両方と関係している。そこに煙樹ヶ浜の自然景観と文化的景観の保持も連関し,それらが相互に機能して煙樹ヶ浜松林は持続可能となる。
  • 宇野 広樹
    2021 年 14 巻 1 号 p. 51-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,全国展開をしているビジネスホテルチェーン16社を対象にして,時空間的に出店戦略をパターン化・モデル化し,それぞれの特性を明らかにすることを目的とした。まず都市階層については,全体的に都市部への出店が多いが,地方小都市への出店が多いホテルも数社見られた。次に駅との距離については,多くのホテルが駅との近さが立地への重要な要因となっているが,地方型のホテルは駅から遠い結果となった。その一方で駐車場の多さに関しては,駅との距離と対比する結果となった。さらに役場との距離については,特異なホテルが数社見られた。そして全国展開パターンについては「ドミナントエリア拡大型」「都市階層型」「その他」の三つに大別された。これらを総括すると,「大都市指向駅近接型」,「都市分散駅近接型」,「都市分散CBD近接型」,「地方指向車主体型」の四つに類型化され,ホテルの経営形態がハード・ソフトともに多様化している現状が明確になった。
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