本研究の目的は,術後せん妄症状の発現,睡眠覚醒パターンおよび夜間尿中プロスタグランジン(prostaglandin: PG)排泄量の関係を明らかにすることである.対象は,右開胸胸部食道全摘術を受け,ICUに入室した男性19名(平均年齢64.7歳)であった.術後3日目まで,20時から翌朝8時までの間,1時間ごとに11せん妄症状および睡眠覚醒状況を観察した.さらに,2時間ごとに尿検体を採取し,EIAキットを用いて尿中PG E
2排泄量を測定した.
結果から,せん妄症状が発現した対象者をせん妄症状群(9名)に,その他を非せん妄症状群(10名)に分類した.非せん妄症状群は規則的な睡眠覚醒パターンを示したが,せん妄症状群は術後1日目から不規則であった.また,9せん妄症状が睡眠覚醒パターンの乱れと同時または先行して発現した.PG E
2排泄量は,非せん妄症状群では術後1日目のみ増加したが,せん妄症状群では術後日数に従って増加した.
術後せん妄症状を発現した対象者が全員睡眠パターンの乱れを呈したことから,睡眠覚醒パターンの乱れと尿中PG E
2排泄パターンが関係していることが示唆された.
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