ニューラルネットワークを用いた画像処理について, 汎化問題を中心にその概要を説明し, 著者等による医用画像処理への応用例を紹介した.RCE法は, 簡単な仕組みによってネットワークのサイズを半自動的に調整する, 汎化能力の比較的高い優れた学習法である.学習セットのサイズに, ネットワークのサイズを合わせて行くという現実的なやり方の原形であると考えられる.紙面の制約と時間の関係から, 位置不変の接続重みをもつネットワークを用いた角膜内皮細胞写真の処理例や, 中間層ニューロンの自動調整学習法などに触れることができなかった.前者は, 画像処理の知識を利用した汎化能力の向上法のひとつである.同様の方法が, 今後, 様々な特定の目的に対して, 提案されて行くと考えられる.後者は, ここで紹介したHSII法などのネットワークサイズを半自動調整する方法を, さらに発展させたものである.このような手法は, 一般的な方法として, 研究が続けられると考えられる.画像処理の分野では, 入力ベクトルの次元に対して, 学習セットの数がどうしても少なくなる傾向にある.また, 学習には膨大な計算量が必要である.したがって, 何らかの方法でネットワークサイズが自動的に最適化され, ネットワークの汎化能力が最大限に活かされる能率のよい学習法の提案が待たれる次第である.そのためにも, 具体的なネットワークに関する汎化能力そのものの, 普遍的でかつ計算量の少ない評価方法の確立が必要である.今後, ニューラルネットワークはモジュール化され, それらの統合化により, 高度な処理を行う大規模ネットワークが出現することが予想される.このとき, 個々のネットワークモジュールの汎化能力を確保しておくことは, ネットワーク全体の汎化能力を高めるうえで, 非常に重要である.謝辞 : 本稿をまとめるに際し, NTTヒューマンインターフェイス研究所の兼清知之君, ジョージタウン大学メディカルセンターの長谷川玲博士, 本学大学院生の柴田健二君, 津村徳道君から有益な助言や資料を提供していただきました.また, 本学の一岡芳樹教授, 稲邑清也教授からも, 助言と援助をいただきました.感謝いたします.
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