AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
5 巻, 3 号
選択された号の論文の92件中51~92を表示しています
  • 小林 真二, 阿部 真己, 梶谷 裟和
    2024 年5 巻3 号 p. 487-494
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    大規模言語モデル(以下 LLM)は,ChatGPTの公開を契機として急速に広がっており,ToM(Theory of Mind)に代表されるような他者の意図・信念・願望・知識などの心の状態を理解・予測する能力についても多くの研究報告がある.ToM分野は人々の性格・行動・感じ方を勘案した都市計画など土木分野への応用も期待できる一方で,行動や感じ方に関するデータと性格データを紐づいた形で収集することが困難であるという課題が存在する.本研究では,アンケートの実施と性格診断を同時に行うことでデータセットを整備し,LLMによるアンケート回答者の性格推定が可能かどうかを検証した.蓄積されたデータはまだ200 名規模と大きくないが,アンケート調査のような比較的短い文章からでも一定精度で回答者の性格特性を推定できることが確認でき,人の行動や心理の分析といった分野への活用可能性が十分に高いことが明らかとなった.

  • 高橋 悠太
    2024 年5 巻3 号 p. 495-501
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    土木分野におけるAIの活用促進はデータ化・デジタル化が求められる.データはセンサー以外にも,人によって記入・集計される場合もある.人の手を介したことにより処理前後で異なる結果となったデータを,人手による多重確認によって検知することは現実的でない.本研究では大規模言語モデルを用いたAIチャットボットであるChatGPTを用いて,現段階でこのような不一致データが現実的な条件で検知可能か検証評価を行った.実験にはxROADの道路橋データのうち,地方自治体のデータを使用した.公開用APIから得られた複数橋梁を含むデータと点検調書との不一致箇所について,短時間かつほぼ固定されたプロンプトで検知した.

  • 福澤 健人, 井林 康, 長井 宏平
    2024 年5 巻3 号 p. 502-516
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の老朽化に加え,人口減少による公共財源の縮小などが市町村の維持管理負担を増大させている.一方で人口減少に伴い,交通需要が減少する橋梁の増加が予想されることから,地域特性に応じた橋梁統廃合計画を策定することが求められている.そこで本研究では北陸4県の計81市町村をケーススタディとし,定量指標に基づく統廃合計画策定の支援や市町村同士の協力体制の構築のため,各市町村の維持管理状況に基づく類型化を試みた.さらに,橋梁統廃合の有効性を示す定量指標の1つとして,橋梁統廃合有効度の提案を行う.オープンデータを用いて分析を行った結果,類型化された市町村群ごとの異なる維持管理状況の特徴が明らかになった.また,橋梁統廃合有効度を用いることで,橋梁統廃合の検討に適する可能性がある自治体を示すことができた.

  • 中村 健二, 中原 匡哉, 久原 巧夢
    2024 年5 巻3 号 p. 517-525
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,現実空間を計測した点群データから構築したデジタルツインの活用に注目が集まっており,我が国では点群データ等の計測データを用いて国土のデジタルツイン化を進めている.ただし,国土全体の形状を常に最新に更新するために計測データ全てを用いて更新すると膨大なコストを要する.そのため,2時期の点群データから更新が必要な変化箇所のみを検出して効率的に更新する技術が必要とされている.既存研究では,点群データ全体をボクセル分割し,マークルツリーを用いて変化箇所を検出する手法が提案されている.しかし,任意の分解能で変化箇所を検出できない課題がある.そこで,本研究では,マークルツリーの階層ごとに生成したハッシュ値により,任意の分解能で2時期の点群データ間の変化箇所を検出する手法を提案する.

  • 鎌田 浩基, 山本 真哉, 櫻井 英行, 西尾 真由子, 大竹 雄
    2024 年5 巻3 号 p. 526-541
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    Physics informed neural networks (PINNs)は従来の教師データのみでの学習と比較し,教師データの削減やモデルの予測性能の向上が期待されている手法である.本研究では,工学問題への適用を見据え,任意の不確実パラメータ,設計パラメータに対して応答を出力可能なパラメトリックPINNsを対象とした検討を実施した.パラメータの入力層の位置については,出力層に近づくに従い,予測性能の悪化が確認された.また,対象とした二次元円孔板問題においては,入力パラメータ数に関わらず,導入した3種類のエンコーディング手法のうちrandom Fourier featuresが最も良い性能を示した.本検討の結果,パラメータに関するエンコーディング手法は,パラメータの変化に対する応答の複雑程度に応じた設定により,効果的な学習が可能であることが示された.

  • 上間 大輔, 神谷 大介
    2024 年5 巻3 号 p. 542-548
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    少子高齢化やモータリゼーションの進展により,供給能力の低下や利用者減少によって公共交通の維持が困難な状況にある.そのため人々の移動実態に対する利用需要を把握し,少ない供給能力で輸送実績を向上させるような効率的な公共交通網が求められる.そこで本研究では,現状の路線バスの運行ルート・頻度と人の移動との整合性を評価するため,人流データを活用し,路線バスの系統別輸送実績データと人の移動量の関係を分析した.その結果から,輸送効率の良い,もしくは悪い系統について,運行ルート・頻度,土地利用の観点から,その要因について考察した.また,輸送効率改善に向けて交通結節点やバスレーンの設置,競合区間の減少に取り組む必要があることが示唆された.

  • 高田 歩武, 伊藤 可依都, 髙木 朗義
    2024 年5 巻3 号 p. 549-556
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    これまで住民避難行動に対して多様な視点から分析が行われているが,豪雨災害による犠牲者は後を絶たず,住民避難に関する課題は依然として解決しているとは言い難い.そこで筆者らは新たな試みとして,XAI(説明可能な AI)を用いて住民避難行動の要因分析を行っているが,行動モデルの再現率に課題を残している.本研究では,豪雨災害時における住民避難行動のアンケート調査データを画像データへ変換して,画像認識技術におけるXAI(説明可能な AI)を適用した結果,住民避難行動モデルの再現率が向上した.また,災害前に被災経験があることに加えて,災害時の適切な避難情報の取得や自宅被害が避難行動に影響を及ぼすことを示した.

  • 国場 有沙, 神谷 大介, 平野 順俊, 澤口 侑, 大月 庄治, 山本 忍, 小宮 涼, 庄司 康太, 浅野 達海, 今井 龍一
    2024 年5 巻3 号 p. 557-562
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    エコツーリズムには,参加者の体力に見合わないツアーへの参加による事故やオーバーツーリズム等の課題を有する.エコツアールート登山道のデジタルアーカイブ化は,登山道の難所情報の可視化による事故防止,定量的かつ継続的なモニタリングに有用であると考えられる.そこで本研究では,LiDARを用いて西表島クーラの滝への登山道を計測し,5m区間毎の高さの最小値と最小からの85パーセンタイル値の差分の算出結果により難所を選出した.また,2時期の地面の差分算出及び可視化を行い,0.15m程度の倒木等の変化を明らかにした.登山道デジタルアーカイブへLiDARを適用することで,難所選出,自然環境モニタリング調査の一次スクリーニングが可能であることが示された.

  • 中山 龍也, 羽物 裕人, 一言 正之, 樫山 和男
    2024 年5 巻3 号 p. 563-571
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は,従来の数値解析手法による氾濫域予測の代替モデルとして,深層学習を用いた浸水域予測に,次元圧縮技術を適用する手法を提案するものである.次元圧縮手法には,特異値分解(SVD),非負値行 列因子展開(NMF),オートエンコーダー(AE)を採用した.提案手法を荒川の浸水予測シミュレーションに適用し,リアルタイム性の向上と精度の観点から,妥当性と有効性の検討を行った.その結果,提案手法は計算時間を大幅に短縮できるともに精度も維持できることを確認した.また,採用した三つの次元圧縮手法の中ではSVDが最も有効であることを確認した.

  • 佐々木 優輔, 浅野 雄斗, 大西 弘志
    2024 年5 巻3 号 p. 572-578
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の疲労き裂は年々顕在化し,多くの橋梁で問題となっている.疲労き裂は応力や変形の繰返しに伴い徐々に進行する破壊現象であり,構造物の安全性に甚大な影響を及ぼしかねない.したがって,疲労き裂は早期に発見し適切な補修•補強を行うことが重要である.

    本稿は過去に行った振動疲労試験の実験データを再度利用し,膨大なデータの数値処理に対しこれまで行われてきた応力計算やグラフ化を自動化することでき裂検出までの工程を簡易化できないかの検討を行った.また,今回のデータをデータベース化し,き裂の発生と進展の応力状態の傾向を機械学習させき裂進展予測へ発展させていきたいと考えている.

  • 掛田 遥斗, 岩崎 正二, 大西 弘志
    2024 年5 巻3 号 p. 579-585
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,老朽化橋梁の急増に伴い,より効率的で定量的な橋梁点検手法の確立が求められている.著者らは小型 FWD 試験機を用いた衝撃振動試験に着目し,小規模橋梁で実験を行ってきた.応答加速度を計測し,複数の計測点間の応答加速度差に対し,MTS 法を適用することで床版内の局所的な損傷・劣化箇所を把握しようと試みてきた.本研究では,FEM 解析を用い,劣化度・劣化範囲の大きさが MTS 法を用いた結果に与える影響について検討し,床版内の劣化・損傷検出への MTS 法の有用性について調べた.

  • 藤井 純一郎, 岡野 将大, 後藤 早苗
    2024 年5 巻3 号 p. 586-592
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    合流式下水道越流水が流入する都市河川では,降雨後にスカムが発生し悪臭や景観の悪化,生態系への 悪影響などが問題になっている.その対策として,スカムのモニタリングによる早期検知が望まれる.本研究では,スカム発生の早期検知を目的として,モニタリング要件および画像認識要件を検討した上で,大阪府平野川の河川監視カメラのデータを用いて,スカム画像の特性に合わせた画像認識モデルや損失関数を実験により明らかにした.実験結果に基づき,スカム検出の精度が低い画像を教師データに追加した上で最終的な学習を行い,Scum IoU95%を達成し,要件を満足する高精度なスカム検出モデルを開発した.

  • 岡野 将大, 藤井 純一郎, 工藤 雄介, 本田 一彦
    2024 年5 巻3 号 p. 593-599
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省は,人中心で居心地が良く歩きたくなる空間をまちなかに創出することを,新たな都市政策として掲げている.そのためには,居心地の良さを評価することが求められるが,その作業は人手での目視調査により行われており,膨大な労力を要することが問題となっている.

    本研究では,公共空間の居心地の良さに関する調査業務を対象として,マルチモーダルモデルを用いて自動化する手法を提案した.提案手法の妥当性確認のため,調査の精度と時間を人手調査と比較実験を行った.実験結果に基づき,実業務への適用の可能性と今後の課題について論じる.

  • 木村 延明, 吉瀬 弘人, 吉永 育生, 馬場 大地
    2024 年5 巻3 号 p. 600-607
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,ニューラルネットワークの一種であるTimesNet を,ポンプ操作の伴う低平地の排水管理で観測された長期間,且つサンプルサイズが大きな水位の時系列データに適用したものである.一般に,時系列データは,複雑かつ複数のパターンを含むことが多い.この特徴を自動的に抽出できる予測手法である TimesNet は,入力データに含まれる周期性の特徴をスペクトル解析で取出し,それらの周期に合わせた連続データを並べた 2 次元情報から周期性の特徴量を抽出して,将来の連続データを予測するものである. TimesNet を長期間の水位データに適用した場合の予測結果は,従来型の予測手法と比較して,リードタイムが長い場合には,改善は見られなかったものの,期間最大の洪水イベントを伴う排水期間では,洪水波形をより良好に再現することが確認できた

  • 峰松 優祈, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 今 洋佑, 高田 和幸, 高山 純一
    2024 年5 巻3 号 p. 608-613
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    発展途上国である東ティモール民主共和国では,雨季の豪雨により,洪水が頻発している.2021 年に発生したサイクロン Seroja では,道路や橋梁など基盤インフラに甚大な被害が生じた.防災インフラの強化については積極的に取り組まれているものの,途上国である東ティモールは災害などのデータが乏しく,洪水による被害想定は行われていない.そこで本研究では,首都であるDili 県のCristo Rei・Hera を対象として,GIS やリモートセンシングを用いた都市の発展と洪水リスク評価を実施した.欧州宇宙機関が運営する衛星である Sentinel-2 と GIS のソフトウェアの一つである Arc GIS Pro を用いて,土地被覆分類を実施し,浸水域と重なる都市域の面積を比較した.結果として,Hera 地区の都市域は 2016 年から 2024 年にかけて,約 1.89km2 増加し,浸水域は約 2 倍となった.Hera 地区では洪水リスクが高い地域に都市域が広がっていることが明らかになった.

  • 佐々木 碧, 森崎 裕磨, 藤生 慎
    2024 年5 巻3 号 p. 614-623
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,我が国では,人口減少に伴い空き家が急速に増加しており,国による空き家問題解決に向けた方策の整備や空き家の利活用事業の拡大を後押しする補助金制度等が積極的に行われている.一方で,空き家を利活用する際には,空き家毎の地域特性や所有者の意向を重視する必要があり,空き家対策を講じる自治体にとっては利活用できうる空き家を判断できる指標が求められている.そこで本研究では,埼玉県比企郡鳩山町が実施した空き家実態調査データを活用することで,空き家の周辺特性,状態,所有者の意向を考慮しつつ,空き家が持つ利活用のし易さに影響を及ぼす変数を定量評価し,指標化することを目的とする.本研究における分析を通して,自治体が空き家を利活用する際の基準として使える指標を開発することが実現された.

  • 高桑 健, 森崎 裕磨, 藤生 慎, 馬場 優大
    2024 年5 巻3 号 p. 624-630
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    大規模災害が起きた際に医薬品が不足し,慢性疾患患者に対し必要性の高い医薬品の処方がされないと,医薬品使用者の病態悪化の可能性が高まる.本研究では,大規模地震災害発生時に医薬品の需要量が急増する事態に備えて,地域における将来の医薬品需要量を推計することを目的とする.石川県羽咋市を対象として,地域の過去 10 年間の医薬品処方状況を把握したのち,将来の医薬品処方状況の推計も行う.本研究では,慢性疾患患者にとって必要性が極めて高い医薬品である血圧降下剤,抗てんかん薬,糖尿病用剤を対象とし,時系列データの推計に用いられる SARIMA モデルを用いてそれらの平常時の処方件数を 5 年分推計する.分析の結果,血圧降下剤と抗てんかん薬の処方件数に関しては,推計開始月から 5 年間でそれぞれ約 34.2%,42.1%減少した一方で,糖尿病用剤の処方件数に関しては約 4.2%の減少にとどまった.

  • 真塩 泰輝, 森崎 裕磨, 藤生 慎
    2024 年5 巻3 号 p. 631-639
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    令和 6 年能登半島地震において被災した石川県輪島市では,インフラ復旧の遅れに伴い長期の避難生活を余儀なくされる住民が多数発生している.本研究ではKDDI Location Analyzer より取得した輪島市内 26区域における夜間人口推移データを用いて時系列クラスタリング実施し,中長期的な夜間人口の流動傾向をもとに各地域を分類する.分析を通して,被災地における居住人口推移の把握が本研究の目的である.分析の結果,地域間において地震発生時点から夜間人口のピークが観測された時点までに要した期間に顕著な差違が見られた.夜間人口のピーク到達におけるタイムラグは同地に居住していた人口の帰還実現に要す時間の地域間格差を捉えたものであり,復旧過程にある被災地の現状把握に関する知見が得られた.

  • 西岡 洸紀, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 高山 純一
    2024 年5 巻3 号 p. 640-649
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    2024 年 3 月 16 日(土)に北陸新幹線の金沢~敦賀間の延伸開業が実施された.敦賀開業に伴う時間短縮効果により,北陸地方では他地域との交流人口の大幅な増加に期待が寄せられている.しかし,敦賀開業により,関西圏・中京圏との移動においては敦賀駅での乗り換えが生じることとなり,利便性が低下したという懸念もある.そこで本研究では,石川県金沢市民を対象に,アンケート調査を敦賀開業前に実施し,北陸新幹線の敦賀開業により生じる乗り換え時間・運賃の変化が利用者に及ぼす影響ついて分析を行った.本研究により,乗り換え時間の変化は,年齢,年収,関西圏への移動頻度,関西圏への移動の抵抗感に影響を受けることが明らかになった.また,運賃の変化は,関西圏への移動頻度,関西圏への移動の抵抗感に影響を受けることも明らかになった.

  • 中林 弘貴, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 山谷 佳史
    2024 年5 巻3 号 p. 650-656
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では,2022 年から国際クルーズの受け入れが再開され,今後,寄港回数がコロナ禍以前の水準に徐々に回復していくことが見込まれる.クルーズ観光では,乗客の観光による消費金額が寄港地の経済効果を生み出す大きな要因となると考えられている.一方,発着港となることが多い横浜港では,他の寄港地と比べ観光による消費金額が少ない傾向にある.そこで,本研究では,2 項ロジスティック回帰分析を使用し,発着港の魅力度を考慮した金額消費に影響を及ぼす要因と,発着港における観光消費への確率を明らかにした.さらに,数量化Ⅰ類を使用し,観光消費に影響を及ぼす一因となった魅力度について把握することにより,発着港の乗客の観光行動を詳細に分析し,発着港における観光消費の活性化に向けた重要な知見を得た.

  • 堀越 優侑, 斉藤 大雅, 肥後 陽介, 大竹 雄
    2024 年5 巻3 号 p. 657-668
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は有効応力動的解析の多変量解析パラメータの統計的推定法を考察している.有効応力動的解析の構成則には観測できないパラメータが多数存在し,設定精度は解析者の経験に依存する.解析の客観的な信頼性を得るには,パラメータの設定過程を明確にする必要がある.専門家が実施した解析事例のパラメータセットと土質試験結果を収集しデータベースを構築した.このデータベースを用いて,ベイズ線形回帰を参照解とし,階層ベイズ法を利用した線形回帰,類似度評価を利用したサンプリングを適用し,推定結果が数値解析結果の不確実性に与える影響を考察する.以上の考察に基づいて,本論文では,解析者の経験を材料パラメータ設定に活用するための枠組みを提案するとともに,データベースアプローチを推進するための課題を述べている.

  • 斎藤 隆泰
    2024 年5 巻3 号 p. 669-677
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,量子コンピューターの開発競争が世界的に激化している.量子コンピューターは,様々な分野での活用が期待されているが,HPC(High Performance Computing) と連携した計算力学分野での活用への期待は特に高い.しかしながら,量子コンピューターを用いた計算力学手法の開発に関する研究は,殆ど行われていないのが現状である.そこで,本研究では量子アルゴリズムを用いた境界要素法 (BEM: Boundary Element Method) について基礎的な検討を実施する.以下では,まず,量子コンピューターの現状について簡単に説明した後,本研究で対象とする2次元ラプラス方程式に対する境界要素法の定式化について簡単に説明する.その後,境界要素法を量子コンピューターを用いて解く際に必要となる量子アルゴリズムについて,工学的視点から簡単に説明する.最後に,実際に量子シミュレーターを用いて計算した境界要素解析結果の一例を示すことで,量子コンピューターを用いた境界要素法を構成できる可能性があることを示す.

  • 吉谷 薫, 小林 巧, 大住 道生
    2024 年5 巻3 号 p. 678-687
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    地震発生後の道路橋の異常時点検(震後点検)では措置方針の決定のために被災状況を迅速かつ的確に把握する必要がある.現行の震後点検は目視によるものが殆どであり,追加調査の必要性に客観的な基準はない.しかし,目視では認識できない損傷が措置方針の決定に影響する可能性も存在する.措置方針の確実性の向上のためには,収集すべき損傷の情報を明確化しそれに資する情報の取得手段とその客観的な評価方法を示す必要がある.本研究はその事例的検討として能登半島地震で被災した鋼アーチ橋の上部構造を対象に目視による外観調査に加え3次元点群を取得した.その上で,上部構造のゆがみを把握する目的で点群から作成したモデルを用いて部材の変形量を計測し結果の定量的な評価を行った.

  • 山田 航大, 久保 栞, 吉田 秀典
    2024 年5 巻3 号 p. 688-696
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    大規模な豪雨災害の影響で浸水被害が頻発している.浸水被害を受けた地域では道路閉塞が発生し,避難行動や復旧活動が妨げられることもあるため,道路の被災状況を迅速に把握することが重要である.本研究では,航空画像から浸水域の検出を行い,検出した浸水域と道路データを重ね合わせることによって,道路浸水箇所を推定した.その結果,土砂や河川などの水域が多い場所では誤検出が散見されるという課題はあるものの,入り組んだ道路部分の浸水域の検出はおおむね可能であった.また,検出した浸水域と道路データを重ね合わせることによって道路浸水箇所の可視化が可能となり,浸水率の低い地域での実際の浸水率に対して,0.4~8.4%程度の誤差で検出できていることから,道路の通行可否を判断する際に有用であることが示された.

  • 佐野 ひかる, 西山 哲, 冨井 隆春, 間野 耕司
    2024 年5 巻3 号 p. 697-705
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は,航行時間が短いことによって広範囲を計測した際に作業効率が低下する,あるいは遠方の対象物の計測が困難であるという,これまでのマルチコプター型ドローンを使った計測の課題の解決に取り組んだ成果を記述する.具体的には,ガソリンを使った発電機で給電しながら航行するドローンおよび取得されるビッグデータを解析するアルゴリズムを開発した成果を記述する.本論文では,開発した長時間航行ドローンを使ったグリーンレーザ計測が高精度の標高値を得ることができることを示し,また沿岸域の海底地形の3次元計測を実施した事例において,得られた2時期の点群データから地形の変化を定量的に可視化するアルゴリズムの有用性を実証することができたことを示す.

  • 佐藤 雅也, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2024 年5 巻3 号 p. 706-718
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,橋梁の点検調書作成に不可欠な変状画像に対する所見の高精度な自動生成手法を提案する.近年,視覚と言語の複数のモーダルを高精度に理解可能な生成AIとして注目を集めているmulti-modal modelは,タスクの例をわずか数件与えるだけで学習可能であるため,様々なタスクに適応可能な技術で ある.そこで,本稿では,類似画像検索に基づき,変状画像と所見の組を取得し,multi-modal modelに入力することでその関係性を効率的に学習させ,高精度な所見生成を実現する.特に,技術者が所見作成時に参考にする変状箇所の部材および損傷の種類を利用し,検索対象のデータプールを圧縮することで,所見生成により有用な変状画像と所見の組を取得可能とする.本稿の最後では,実際の橋梁点検調書に含まれる変状画像の所見生成を行う検証により,提案手法の有効性を示す.

  • 芳賀 栞, 山本 佳士, 野々部 宏司, 村松 眞由, 加藤 準治
    2024 年5 巻3 号 p. 719-729
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,最終的に,局所最適解に陥ることなく,より良い最適解を高速で探索可能な,量子アニーリングを用いたトポロジー最適化手法の確立を目標としている.その基礎的な段階として,二次元トラスのトポロジー最適化を,量子アニーリングおよび一般化Benders分解法を用いて行う手法を実装するとともに,同手法の検証を行ったものである.特に既往の研究では実施されていない条件下で検証を実施するとともに,各種計算条件が計算結果に与える影響を評価した.検証の結果,提案手法は妥当な最適計算が可能であること,および提案手法で妥当な計算結果を得るためには,体積制約に関するペナルティ係数および最適計算過程の反復ステップにおける体積変化分の設定が特に重要であることが分かった.

  • 木下 耕介, 矢野 友貴宏, 久村 孝寛, 宮本 崇, 全 邦釘
    2024 年5 巻3 号 p. 730-739
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,有ヒンジPC橋を対象として,時系列InSARデータによる橋梁の変位解析と有限要素解析に基づく構造シミュレーションとの比較を行い,InSAR変位の精度検証について考察を行う.対象となる有ヒンジPC橋では桁端部を支える鋼棒が破断して段差が生じるという事象が過去に発生している.解析には,限られた橋梁上の反射点から効率よく構造物由来のInSAR変位を抽出するために,温度変化による時系列変位モデル化手法をもちいる.解析の結果,1) 分析対象の有ヒンジPC橋で発生した段差事象から遡って3年前まででは,SARによる中央スパン上の温度1℃あたりの鉛直変位は,構造シミュレーションでの温度1℃あたりの鉛直変位と近しい値が得られること,2) 中央ヒンジ部の時系列変位においては,事象発生の2年前からシミュレーション結果との乖離が確認され,徐々に垂れ下がり傾向が拡大すること,を確認した.

  • 山村 啓一, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 中山 晶一朗, 笠間 彩, 守田 富美江
    2024 年5 巻3 号 p. 740-746
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    金沢市では都市の持続的な成長に向けコンパクトシティの実現を目指している一方,これまでの都市発展が自動車に過度に依存してきたことで都市の賑わいが郊外に流出し,中心市街地の活力が低下していることが課題となっている.

    一方,本研究が対象とする金沢大学角間キャンパスは金沢市中心部から離れた郊外に位置し,キャンパス内外の移動や町の中心部に移動することも容易ではなく,この状況の改善が金沢市のまちなか活性化につながると考えられる.

    上記を検証し学生のモビリティを社会的・個人的に望ましい方向に変える知見を得ることを目的として,金沢市公共シェアサイクル「まちのり」のエリア拡大による学生の移動の利便性向上を図る実験及び分析を実施した.結果,学生の行動変容の可能性(自動車依存脱却,まちなか回遊行動の促進)が見出された.

  • 筑紫 彰太, 山下 凪, 樹野 淳也
    2024 年5 巻3 号 p. 747-756
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    ため池などの水利施設は,我々の生活に欠かせない.ため池の堤体が部分崩壊や水漏れなどした場合,ため池全体が決壊する可能性があり,早期の発見,対応が求められる.しかし,ため池の維持,管理,点検は大きな社会課題となっている.そこで,本研究では,ため池点検の効率化を目指して,ため池堤体の部分崩壊に焦点をあてる.本研究の目的は,空撮画像を用いたため池堤体の部分崩壊を対象とする異常の自動検出手法の構築である.そのため,教師なし学習のオートエンコーダを用いてため池堤体の部分崩壊を自動で検出する手法を提案する.また,異常箇所の位置と大きさを定量的に示す手法を提案する.実際のため池環境でUAVを用いた実機実験によって提案手法の有効性が示されている.

  • 板倉 健太, 林 拓哉, 上脇 優人, 全 邦釘
    2024 年5 巻3 号 p. 757-768
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,様々な分野で3次元点群の利活用が進んでいる.3次元点群を得るための手法として,地上型レーザースキャナを利用する方法がある.寸法に関する情報は精度が高いというメリットがある一方で,地上にて計測を行うため,人や自動車などの移動体のノイズが計測されることが多い.地上型レーザースキャナは,点群と同時に画像も取得されることが多い.そこで,本研究では地上型レーザースキャナを用いた点群計測とカメラ画像とのセンサーフュージョンを通じて人のセグメンテーションを行う.SOLOv2を利用して,画像から人のセグメンテーションを行った.そして,その情報をカメラの内部パラメータや外部パラメータを利用し,点群にマッピングする.これにより,精度良く人のノイズを点群から除去することができた.

  • 高原 恵男, 坪川 洋友, 加藤 爽, 長峯 望, 合田 航, 前田 梨帆
    2024 年5 巻3 号 p. 769-777
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道における軌道部材の検査や台帳整備等の維持管理業務は,一般的に保線技術者が現地に出向くことで行われており,保線の現場に大きな負担がかかっている.このような背景のもと,これまでに木まくらぎを対象とした木まくらぎ劣化度判定システムを開発してきた.本研究では,軌道部材状態を一元的に把握することを目的に,木まくらぎ以外のまくらぎやレール締結装置種別を識別可能な軌道部材識別モデルを構築した.また,キロ程推定精度向上を目的に,軌道検測車の測定データの位置補正に使用されるデータデポを活用したキロ程補正手法を開発した.さらに,これらの手法をこれまでに開発した木まくらぎ劣化度判定システムに実装することで,新たに「軌道部材状態評価システム」を構築し,本システムを活用した効率的な軌道部材管理手法を提案した.

  • 仁田 佳宏, 福富 佑, 阿部 雅史, 鈴木 芳隆, 中島 正愛, 西谷 章
    2024 年5 巻3 号 p. 778-785
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本研究では,健全時の画像から異常検知を行うEfficient GANによる建物の天井の天井板の崩落や欠落などの中規模な損傷の検知手法を提案する.実適用時の合理性を考慮して,提案手法では損傷検知の判断を,健全時のAnomaly Scoreを基に定めた閾値を,Anomaly Scoreが超えた場合とする.提案手法の有用性については,実建物の天井を対象とする開いた点検口を模擬損傷とする実証実験により確認している.また,建物の対象箇所の画像取得手段も,損傷検知手法の利便性に大きく影響することから,UAVを用いる場合とUGVを用いる場合それぞれについて検討を行う.検討結果から,屋内においては,UGVの方が自律移動が容易であるため,天井部分の撮影の自動化については利便性が高く,UAVの方が天井部分に近い箇所で撮影できるため,Anomaly Scoreの変動が少ない傾向を示している.

  • 大西 功, 藤本 将光
    2024 年5 巻3 号 p. 786-799
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国で運用されている土砂災害警戒情報の的中率は5%程度と極端に低い.その原因の第一は60分雨 量と土壌雨量指数からなるデータを時系列とはみなさず,独立に発生したデータポイントとして処理して いることに起因する.第二はその独立したデータをもとに計算された閾値であるRBFN出力値が,土砂災害の発生と関連付けて生成されていないという点にある.したがって,この警戒情報の精度を上げるには,雨の降り始めから災害が発生するまでの降雨データを時系列データとして入力した統計モデルを構築したうえで,災害発生と関連した出力が得られるかを評価する必要がある.本研究は,その一案として一般状態空間モデルを用いて土砂災害発生降雨に含まれる特異値を検出する方法を示し,その妥当性を検証したものである.

  • 合田 哲朗, 渡辺 賢, 堀江 陽介, 中野 雅章
    2024 年5 巻3 号 p. 800-810
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,道路・橋梁ネットワークを対象とした被災後の道路橋復旧計画について量子インスパイアード手法によるブラックボックス最適化の有用性に関する検証を行った.ネットワークの機能には利用者均衡配分法により求まる総旅行時間を定め,レジリエンス三角形の面積を目的関数とした最小化問題を設定した.最適化手法には,富士通が開発したデジタルアニーラ(DA)に遺伝的アルゴリズム(GA)と Factorization Machines(FM)による機械学習を組合せたFM-DA×GAを採用した.14橋の橋梁を含む小規模な仮想の道路・橋梁ネットワークに対して,FM-DA×GAと既往研究で適用例の多い単体のGAによる最適な復旧計画を求めた.結果として,FM-DA×GAは探索初期での収束が早く,単体のGAと比較して探索効率及び解析時間の面で優位性があることを定量的に検証した.

  • 赤塚 洋介, 高柳 剛, 渡邉 諭
    2024 年5 巻3 号 p. 811-822
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,河川の増水にともなって,鉄道河川橋脚が洗掘による被害を受ける事象が各地で発生している.これらの事象を受けて,筆者らは洗掘による被害が懸念される鉄道河川橋脚を高い精度で抽出するために,機械学習モデルを活用した洗堀危険度評価手法の開発に取り組んでいる.本稿では,鉄道総研において収集した鉄道河川橋脚に関する各種パラメータを入力値として学習を行った機械学習モデルについて,2022年に発生した鉄道河川橋脚の洗掘被災事例を用いた検証を行うとともに,見逃し事例に含まれる各種特徴量の分析を行った.その結果,学習データには含まれない実際の洗掘被災事例を概ね適切に抽出できたことを明らかにするとともに,見逃し事例に含まれる橋脚の3つの特徴を特定した.

  • 長井 巧, 石関 一裕, 佐伯 昌之, 森近 翔伍, 松井 真吾, 川又 忠司, 北原 挙
    2024 年5 巻3 号 p. 823-833
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    安全かつ円滑な道路供用のためには,道路情報板を含む道路附属構造物の異常を適切に見つける必要がある.本研究ではF型支柱で支持された道路情報板を対象に1年間の加速度計測を行い,道路情報板の固有振動数がどの様に変動するかを調べた.その結果,健全時においても温度変化によって固有振動数が変動し,異常の検知性能に影響を与える可能性が明らかとなった.温度による固有振動数の変化を抑制するため,単回帰分析を用いた温度補正を実施したところ一定の改善が見られた.続いて道路情報板の固有振動数の変化を検知する方法として,マン・ホイットニーのU検定で用いられるZ値の累積分布関数に着目した手法を試行した.本手法により,疑似的に与えた0.01Hzの変化を95%の正解率で検知できる可能性を示した.

  • 園田 潤, 渡邉 学, 米澤 千夏, 金澤 靖
    2024 年5 巻3 号 p. 834-841
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,地中レーダと航空機搭載合成開口レーダを用いた大規模自然災害の行方不明者捜索手法を提案し,実際に東日本大震災の行方不明者捜索に適用した結果について述べる.まず,800MHz帯地中レーダを用いた砂浜海岸における地中物体の検出について実験的に確認するとともに,FDTD 法を用いた検出できる物体の大きさや深さについて理論計算で確認する.次に,Lバンド航空機搭載合成開口レーダを用いた砂浜海岸における地中物体の検出実験について述べる.最後に,東日本大震災の津波災害で多くの行方不明者が出た宮城県名取市閖上海岸において実際の行方不明者捜索に適用し,2014年9月から2020年3月までに地中から検出した物体の個数や種類および検出深さについて述べる.

  • 園田 潤, 加藤 泰人, 箕輪 瞭
    2024 年5 巻3 号 p. 842-848
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,津波災害などの大規模自然災害時の効率的な行方不明者捜索のために,無人航空機UAV空撮画像と深層学習による海岸漂着物の自動検出について述べる.深層学習としてリアルタイム検出が可能なYOLOを用いて,比較的均質な砂浜海岸における3年間の長期観測による海岸漂着物の検出率について検討する.さらに,砂礫や植生を含む多様な海岸において適用するために,海岸分類を前処理に導入した手法について述べる.これらの結果,砂浜海岸における漂着物検出では,2020年2ヶ月分のUAV空撮画像の学習で2020年から2022年の間の3年分のUAV空撮画像において平均85.4%の検出率が得られること,海岸分類により検出率を17.2%向上できることを示している.

  • 西内 裕晶, 片岡 勇人
    2024 年5 巻3 号 p. 849-856
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    交通流状態の把握には車両感知器による観測データが主に用いられているが,一般道路における車両感知器の設置は主要な交差点であり,車両の走行に関する情報の取得が困難である.本研究では,地方部にも存在し,また定時刻かつ定路線で安定した観測が可能なバスプローブデータを用いて道路ネットワークの交通流状態の観測を行い,交通流状態の把握への利用可能性を示す.本稿では,車両感知器MFDとバスプローブMFDを比較した.その結果,交通渋滞の発生する平日においてバスプローブデータを用いて交通流解析の可能性を示すことができた.

  • 久村 孝寛, 木下 耕介, 矢野 友貴宏
    2024 年5 巻3 号 p. 857-865
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    構造物に生じる重大損傷を人工衛星によって検知する技術に関する検討を目的として,令和6年能登半島地震が発生した能登半島・金沢内灘エリアの橋長50m以上の275橋を選定して分析した.地震など災害を対象とした分析や情報提供において,発災後の即応性が最も重要であるが,本検討の目的は即応性ではなく,現状の衛星データと分析技術による異常検知の適用可能性と課題について知見を得ることである.12日間隔で観測される衛星データを地震前45回観測・地震後3回観測ほど使用して橋の変位を分析し,地震前後で変位の違いが大きい箇所を抽出するという方法で,被災橋梁の検知を試みた.その結果,現地で損傷確認された橋の7割弱に対して変位の違いを検知できる結果を得た.一方で,分析に適した観測点が得られない橋も1割程度あった.この分析結果は地震発生直後の迅速な情報提供というニーズに答えるものではないが,広範囲で分析できる衛星の可能性を示すものである.

  • 吉田 純司, 寺西 湧多, 今野 哲哉, 遠藤 慶三
    2024 年5 巻3 号 p. 866-874
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    高速自動車国道では特殊な道路性状測定車両により高解像度の路面画像を取得し,ひび割れに関する路面の健全度を目視で評価している.本研究では,このような路面画像を対象として路面のひび割れを抽出・分類することを目的とする.そのために,広域および小領域の路面画像を対象として,2つのニューラルネットワーク(:NN)を構築し,それらを運用する手順を提示する.まず,路面画像において路面外とみなされるジョイント等を除外するために,広域の路面画像を対象に路面とジョイント等とを領域分割するNNを構築した.次に,計測した路面画像の高い解像度を活用するために,画像を小領域に分割し,この小領域を対象にひび割れを抽出・分類するNNを構築した.最後に,2つのNNを任意の範囲の路面画像で運用する手順を提示し,未学習の路面画像に適用したところ,ジョイント等を精度よく除外し,目視と同等のレベルでひび割れを抽出できることがわかった.

feedback
Top