土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
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77 巻, 2 号
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水工学論文集第66巻
  • 原田 大輔, 江頭 進治
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_601-I_606
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年,洪水・土砂氾濫に伴う災害が顕在化しており,豪雨時に山間部で生産された土砂が下流に流出するプロセスを適切に評価できる手法が求められている.本研究では降雨流出モデル(RRIモデル)と単位河道モデルを統合した流域土砂流出モデルを提案し,これを流域の渓床堆積物の侵食に伴う土砂流出を簡易に評価する手法と比較して検討している.両モデルを用いて2019年五福谷川洪水の計算を行い,得られた土砂流出量を境界条件として平面二次元流れの解析を行った.その結果,流域土砂流出モデルで計算されるよりもやや多くの細粒土砂が実際には流出したと考えられ,このモデルにとって山地河道の土砂供給条件が重要な要素である.一方簡易モデルは,特に五福谷川の洪水のような多量の土砂が供給される場合,一定程度の有用性が示された.

  • 関根 正人, 藤浦 望誇
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_607-I_612
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     日本の河川では粘土層の露出が懸念されており,河床の砂礫化を実現させる対策が行われている.効率的な砂河床化には,輸送されてきた砂礫により形成される「砂礫と粘土からなる混合層」の特性の解明が必要である.そこで本研究では,混合層の剥離現象に着目し粘土河床と砂礫河床との遷移メカニズムの検討を行なった.その結果,掃流砂により形成された混合層が,無給砂で流水のみの影響を受けることにより生じる際の砂礫の離脱プロセスを経て形を変えていくことが明らかとなった.さらに,混合層の消失過程には「砂礫の入り込み深さ」が関係しており,給砂条件によって粘土河床上に被覆した砂礫の剥がれやすさが異なることも明らかとなった.この入り込み深さを捉えるために,砂粒子の挙動を1粒ずつ追うことで,入り込み深さと粘着力の関係を検討した.

  • 溝口 敦子
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_613-I_618
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     流砂に関する実験的研究は,1980年代ごろまで活発に行われ,その知見を集積してきた.その後は,その知見を利用した解析を利用した研究が増えている.解析技術の発展により詳細な解析による流砂機構の検討は継続される一方で,混合粒径の取り扱いなど素過程の課題が解決されないまま簡便な方法で利用されているものも多い.本研究では,画像計測技術の向上によりこれまで計測が難しかった流砂が存在する場での流速と流砂動態を調べ未だ残る課題解決を目指すことを目的に,PIV・PTVによる計測を行った.急勾配水路で3種類の粒径を用いた実験を行い,掃流砂を含む流れの計測,および砂粒子の速度計測を実施した.その結果,流速とともに流砂の速度分布を示し,流速に対し掃流状態の砂の速度は小さいこと,浮遊状態の砂は流速に近づくことなどを示した.また流れ構造についても検討し,レイノルズ応力の掃流砂による低減と運動形態が異なる砂の存在によって乱流エネルギーの鉛直方向変化率が異なることを明らかにした.

  • 熱海 孝寿, 福田 朝生, 福岡 捷二
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_619-I_624
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,粒径幅の広い石礫河川の移動床現象の理解を深めるため,1オーダー異なる粒径幅を有する粒子群を用いて数値移動床実験を実施し,河床付近で跳躍運動する粒子群について分析を行い河床構造の変化を調べた.その結果,河床表層の全粒径が移動する場合,最大粒径程度の厚さの交換層で強い鉛直分級が生じ,粒径が大きいほど河床の鉛直上方に連続して位置すること,また,跳躍時の粒子運動の軌跡から,小粒径粒子が堆積層内に落下する様子や流体力によって上昇する様子が見られた.最後に本研究から明らかになった課題を示している.

  • 内田 龍彦, 林 勇輔, 木本 祥太, 井上 卓也, 鳩野 美佐子
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_625-I_630
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     混合粒径河床における土砂輸送問題では交換層の概念が適用されてきたが,空隙率と交換層厚の問題が未解決である.本研究では,個別の粒子の運動を解く個別要素法では交換層が問題とならないことに着目し,オイラー型土砂堆積モデルを検討した.まず,個別要素法に用いられる粒子の基礎方程式を空間平均し,土砂粒子の河床堆積条件から利用可能空隙率を定義することで,堆積高と粒子の存在率の時間変化式を導出し,従来の交換層モデルと比較した.また,静的条件における混合粒径土砂堆積実験を行い,粗い粒径と細かな粒径の割合によって堆積過程が異なることを明らかにした.そして,混合粒径土砂の堆積過程実験にオイラー型土砂堆積モデルの適用性と課題を明らかにした.

  • 大野 純暉, 山下 篤志, 竹村 吉晴, 福岡 捷二
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_631-I_636
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     山地河川の河床材料は幅広い粒径で構成され,大きさ1m程度の巨石群の移動は,流れの抵抗・土砂移動に大きく影響を及ぼす.また巨石の移動は,山地河川で形成されている瀬・淵等の安定を評価する際にも重要となる.本研究では,滝山川温井ダム上流河道における洪水前後の巨石,砂礫の存在状況を観測データに基づき分析し,洪水流による巨石の移動を検討している.さらに,この観測結果に対して,詳細地形測量データと観測水面形に基づくQ3D-FEBSによる準三次元洪水流解析を用いて,移動した巨石に作用した流体力等の解析結果と現地データを比較し,巨石の移動の解析法について考察し,課題を示している.

  • 原田 守啓, 吉川 敦希, 三輪 浩
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_637-I_642
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     幅広い粒径の土砂からなる石礫床河川では,流量に応じて異なる粒径範囲の土砂移動が生じており,平水時であっても河床環境の変化が生じている.本研究は石礫床河川の早瀬において,平水時に生じている緩やかな土砂移動を河床変動解析モデルにより記述するための基礎的知見を得ることを目的に,移動床水理実験及び木曽川水系長良川扇状地砂州における現地調査を実施し,流水抵抗の評価方法及び河床面に作用する掃流力と河床表層粒度分布のバランスについて検討した.水理実験では,河床表層の粗粒化が進行し,混合粒径河床の粒径別限界掃流力に漸近する形で静的平衡状態に至る過程が観測された.実河川の早瀬においても平衡状態に近い状況が観測されたが,流量変動等の要因により平衡状態が崩れ,河床環境の更新や劣化が生じるであろうことも示唆された.

  • 音田 慎一郎, 加納 隆伸, 肥後 陽介, 山口 凌大, 高野 大樹
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_643-I_648
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年の局地的集中豪雨の出水において,堤防決壊などの甚大な被害が報告されている.こうした被害を軽減するためには,破堤時の堤体内の物理的メカニズムを解明し,対応策を検討することが必要である.本研究では,模型堤防の決壊時における堤体内の飽和度分布を求め,そのプロセスを考察するため,地盤工学の分野で利用されているトランスパレントソイルに着目し,越流水と堤体材料にヨウ化ナトリウム水溶液と石英を適用して,破堤の水理模型実験を行った.そして,得られた画像から画像解析を行うことで,堤体内の飽和度の可視化を試みた.その結果,トランスパレントソイルを用いることで,珪砂では示すことができなかった堤体内の飽和度分布の時間変化を可視化できることを示した.

  • 音田 慎一郎, 木本 康太, 肥後 陽介
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_649-I_654
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     局地的集中豪雨の出水において,河川堤防の決壊が発生し,堤内地の甚大な被害をが報告されている.こうした被害を軽減するためには,決壊に至るメカニズムを理解し,水の流れと地形変化を精度よく予測できる数値モデルを構築して既存の堤防の安全性評価を行うとともに,その対策を検討することが重要である.本研究は,堤体内への浸透による裏法尻の破壊について再現性の高い解析手法を確立することを目的とし,表面流と浸透流を同時に予測できる開水路流れモデルと,砂の弾塑性構成式を基本とし,GIMP法によって離散化した土の変形モデルを連成させ,数値モデルの構築を行った.浸透破壊に関する水理模型実験に適用し,裏法尻から破壊が進行していく様子を再現できることを示した.

  • 関根 正人, 廣川 萌恵, 宮澤 拓海
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_655-I_660
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年,日本では気象の極端化により局地的な豪雨が増加し,各地で甚大な浸水被害が発生している.河川堤防決壊は甚大な浸水被害をもたらす災害の一つであり,代表的な例として2019年10月に発生した台風19号などが挙げられる.被害が多発する中,堤防決壊メカニズムの解明は防災・減災上重要であると言える.著者らはこれまで,粘土・砂・礫より構成された模擬堤防を対象に,河川空間に貯水して行う基礎的な実験や河川流れを再現した実験を行うことで,粘土と礫が決壊メカニズムに与える影響や,河川の流れの影響について検討してきた.本研究では,堤体材料や河床幅の異なる条件で実験を行い,流線や越流流量など新たな計測項目を加えることで,より詳細な越流決壊プロセスの検討を行っている.

  • 小田 晃, 中村 倫明, 鷲見 浩一, 武村 武, 落合 実
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_661-I_666
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     天然ダムの越流決壊時には急激に越流流量が増加する.また,決壊時に発生する急激な縦侵食と側岸崩壊により高濃度な土砂が流下することが知られている.しかし、天然ダムの湛水域に流木が多量に存在する場合の天然ダムの決壊特性については不明な点が多い.本研究では湛水域に集積した流木が天然ダムの決壊時に及ぼす影響を実験的に検討した.その結果,流木塊が停止するときの状況として,天然ダム下流法面の土砂により流木塊の移動が阻害され停止する場合と,天然ダムに形成された侵食流路の側岸の土砂が移動した流木塊の下流側に覆い被さるように崩れ,流木塊の移動が停止する場合が確認された.また,流木本数が多いほど越流流量の最大値は低下することが示された.さらに,流木塊が集積・停止したとき,流木塊内部の流れにより侵食流路の底面近傍の侵食が促進されて崩壊の原因となる可能性が示唆された.

  • Stephan Korblah LAWSON, Hitoshi TANAKA, Keiko UDO, Nguyen Trong HIEP, ...
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_667-I_672
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     Coastal management around estuaries with highly morphological sandspits or barriers is one of the complex engineering tasks coastal researchers and engineers encounter. Insufficient studies or understanding of the morpho-dynamics of such areas results in poorly designed protection structures and hence exacerbating the existing problem being remedied. Therefore, this study aims at quantifying the sandspit growth and longshore sediment transport rates at the Bouche du Roi inlet in Benin, West Africa. The inlet has a constantly elongating updrift sandspit which results in narrowing and closure of the inlet. During rainy seasons, this poses flooding risks to surrounding communities. The study employed the use of remotely sensed images acquired from 1984 to 2020 to perform long-term analysis. Furthermore, the depth of closure and berm elevation for the study area were calculated using well known empirical formulas. Results from the sandspit analysis revealed an average updrift sandspit growth rate of about 700 m/year and an average longshore sediment transport rate of about 1.2 × 106 m3/year along the Bight of Benin. The results obtained from the method utilized in this study were similar to results from past studies in which different approaches were used.

  • 兵藤 誠, 中平 歩, 口石 孝幸
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_673-I_678
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河口砂州周辺では,砂州の地形変形要素として風,河川流,波浪,潮汐等が存在し,土砂水理特性は複雑である.また,短期間で洪水によるフラッシュと沿岸流による再形成が生じるため,河口砂州管理においては,短期的かつ動的に地形が変化する中で効率的・効果的な管理手法を確立する必要がある.本研究では,相模川河口砂州周辺の土砂移動現象を明らかにし,河口砂州管理について考察した.近年,フラッシュが生じた複数の洪水に着目し,測量成果や準三次元不定流-平面二次元河床変動解析等によりフラッシュ前,直後,その後の再形成過程の土砂動態や収支を把握した.また,複数の対策河道を設定し,洪水規模と掘削幅等の組み合わせによるフラッシュ特性,土砂移動量,水位低減効果等の関係を分析した.更に,対策河道に対して三次元海浜変形解析を行いフラッシュ後の再形成と河口砂州管理について考察した.

  • 長田 健吾, 清水 義彦, 松本 礼央, Robert ETTEMA
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_679-I_684
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河道内流木対策施設の効率的な設計の実施に向けて,流木の流下・堆積過程を説明できる流木解析法が求められている.本研究では,著者らが開発した既往の流木解析法(流体解析に1次風上差分を適用)に加え,流体解析に3次風上差分と乱流モデルを組み込んだ2つの新たな3次元流木解析法を提案した.これら解析法の検証のために,流木捕捉施設を有する模型を用いた流木流下・堆積に関する基礎実験を実施した.3つの解析法を本実験に適用し,実験値と比較することで,それぞれの特徴,再現能力と課題について整理した.その結果,流体解析に3次風上差分を採用した解析法が,本実験の渦を伴う流況,流木の流下・堆積過程,水位上昇量,及び堆積割合について再現性を有することが明らかとなった.

  • 太田 一行, 佐藤 隆宏, 新井 涼允
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_685-I_690
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,水理実験および三次元河床変動解析を用いて,細粒分を含む置土の流出・分級特性について議論するとともに,混合粒径のLagrange型非平衡流砂解析の適用性を評価する.解析ではLagrange型非平衡流砂解析および確率論的Exner方程式をベースとし,細粒分を考慮した水際侵食モデルおよび河床砂粒径を考慮した平均Step-Lengthモデルを新たに導入した.実験と解析の結果として,河床砂の細粒分によって粗粒分の輸送が促進される減摩効果を確認し,減摩効果を含めた河床砂粒径の掃流砂への影響を平均Step-Lengthで説明できることを示した.本研究の成果は,置土の流出・分級特性にLangrange的な視点に基づいた知見を与えるとともに,Lagrange型非平衡流砂解析の物理モデルに関して今後の重要な検討課題を示すものである.

  • 関根 正人, 中間 遼太, 鷲津 明季
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_691-I_696
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河床を構成する土砂は,河床付近で生じる乱れの影響を受けて河床から離脱し,移動と堆積を繰り返すことで河床変動を起こす.本研究では,水流によって移動しない大礫が露出した河床と大礫の存在しない平坦河床を水路に再現し,それぞれの河床状況についてPIV解析を行い,河床で生じる乱れの構造について調べた.その結果,大礫が露出する河床では,大礫の背後で渦が発生し,大礫の間隙では平坦な河床よりも強い乱れが発生していることが確認された.また,大礫の露出の有無により乱れの構造が異なり,これが鉛直分級の構造の違いを生じさせることが示唆された.さらに,高速度カメラで撮影された浮遊砂の運動と同時刻のPIV解析結果を重ね合わせると,周囲の流体の影響を受け少し遅れて粒子の運動が変化することが実験映像により確認された.

  • 髙鍬 裕也, 福岡 捷二
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_697-I_702
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,開水路粗面乱流中を流下する非球形石礫の運動機構を解明することを目的に,第一に,開水路粗面乱流中の非球形石礫の流下挙動を撮影した単一石礫流送実験の映像を画像解析し,石礫の移動形態に及ぼす形の効果を示した.第二に,単一石礫流送実験にEuler-Lagrange型のArbitray Particle Multiphase method(APM法)を適用し,本解析法が粗面と接触しながら流下する非球形石礫の移動形態と移動速度を説明し得ることを示した.

  • 音田 慎一郎, 清水 皓一, 山口 凌大
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_703-I_708
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年,河川堤防の決壊によって堤内地に甚大な被害をもたらす事例が報告されている.こうした被害を軽減するためには,越流時,表面流がどのように堤防を流下し,侵食していくかについて理解を深め,対策を検討することが必要である.本研究では,堤体材料を変化させ,基礎地盤を有する堤防侵食実験を行い,決壊プロセスについて考察するとともに,表面流と浸透流を同時に予測できる流れの3次元モデルと平衡流砂モデルを用いて再現解析を行った.その結果,浮遊砂の影響を考慮する場合としない場合で,裏法尻近傍の侵食特性や堤体形状の変化に違いが見られることを示した.

  • 安達 幹治, 大本 照憲
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_709-I_714
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,二次元円柱粗度を有する開水路流れにおいて高濃度土砂が流れの抵抗,流速場および大規模渦構造に与える影響を実験的に検討した.さらに、高粘性流体の開水路粗面流れにおける主流速の空間分布について理論的に検討した.実験結果から,高濃度土砂流では粘性係数の増大はレイノルズ応力,大規模渦の強度を弱め,粗度頂部の剥離渦の発生を抑制することが認められた.さらに,高粘性流体の開水路粗面流れにおける主流速の鉛直分布の理論式は,流れを層流と仮定したPower-law Modelによって実測値を良好に再現出来た.

  • 松本 知将, 岡本 隆明, 赤堀 良介, 山上 路生
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_715-I_720
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     洪水流による河道内の植生群落における浮遊砂堆積は河積の減少や植生群落の拡大を招くほか,生態系へ影響を及ぼすことも指摘されている.このような植生群落周辺における浮遊砂の輸送・堆積過程を解明し,植生動態を予測することが河川管理上重要である.そこで,本研究では植生周辺の流れ場の特性を左右するパラメータとして植生高さに注目し,実験水路において植生高さを変化させた4通りの植生群落模型内外の流れ場に対してPIV流速計測および浮遊砂堆積実験を実施した.また,流速計測結果と堆積状況との比較を行い,植生高さの変化が群落内部および後流域における乱流構造や浮遊砂堆積に及ぼす影響について検討した.その結果,植生高さによる平均流・乱流構造の変化が植生群落内部および後流域における浮遊砂堆積状況を特徴付けることが確認された.

  • 山口 里実, 久加 朋子, 南 郁慧, 清水 康行, 岩崎 理樹
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_721-I_726
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     急流河川に繁茂する根の浅いヤナギのような樹木が流路変動や河道平面形状に与える影響を明らかにするために,根の短いbentgrassを用いた移動床実験を実施した.実験では,蛇行流が維持される流路変動過程や湾曲した河岸線が維持されるような河道平面形状が再現された.この時,比較的深くなりやすい湾曲した河道の水衝部付近では植生による侵食抑制効果は小さく,湾曲下流側の河床が浅くなる箇所では植生による侵食抑制効果が大きく現れることが示された.本実験結果は,河岸高さや流路の深さに応じて植生が河岸侵食を抑制する度合いが異なり,このことが流路変動や河道特性に影響することを示すものである.

  • Kattia Rubi ARNEZ FERREL, Yasuyuki SHIMIZU
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_727-I_732
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     In 1997, two artificial cutoffs were performed in the Ichilo River in order to save the usability of a port from the menace of a natural cutoff. In here, we want to analyze the implications of those two artificial cutoffs in the planform of the Ichilo River using 2D numerical simulations. The numerical model used for the simulations is a modified version of the model of Asahi et al. where we expanded a module for the treatment of neck cutoffs in large scale rivers of the Bolivian Amazon such as the Ichilo. We tested the capabilities of the numerical model to simulate large-scale meanders in the short to medium term. The initial planform shape corresponded to 12 meander bends based on the planform shape of the Ichilo river in 1994, with different geometric characteristics, variable channel width and variable discharge. We observed that the model is sensitive to smoothing techniques of the planform, which is a common technique to obtain stable numerical simulations but results in unrealistic planform shapes. The numerical simulations present us the planform evolution of the Ichilo River without the two artificial cutoffs performed in 1997. The results showed that the development of the natural cutoff would have left the port located in an oxbow lake. The migration trends also indicate that the river would have moved toward the northeastern side of the city of Puerto Villarroel.

  • 窪 修平, 三輪 浩, 藤田 岳, 和田 孝志
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_733-I_738
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     ダム下流の河川では河床の粗粒化や流路の固定化が進行し,種々の河川機能の低下の要因となる例が見られる.一方,これまでの研究から礫層に砂が含まれると礫の摩擦角の減少により,礫は砂が含まれない場合よりも移動しやすくなることが知られている.本研究では礫河床への覆砂に着目し,低水路を有する粗粒化河床への覆砂による砂供給が礫の移動と流路変動に及ぼす影響について検討した.その結果,礫層への覆砂は礫移動の活性化を促進することが確認されるとともに,覆砂層厚(覆砂量)が大きくなると礫移動の効率は低下することが示された.また,低水路幅は覆砂量の増加に伴って増加傾向を示すが,低水路深さは覆砂層厚によって変化することが示された.

  • 泉 典洋, 岩瀬 晴夫, 野村 圭司
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_739-I_744
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河川の中には,洪水疎通能力を向上させるために拡幅工事を行なったものの,その後の細砂の堆積によって河道断面が減少してしまう河川が少なからず観察される.このような細砂の再堆積による河道閉塞は,洪水を安全に流下させるという河川の重要な機能を維持管理する上で深刻な問題である.本研究では,泉・Parker3)が提案した,河床を礫,河岸を細砂で構成された自律形成河道に関する理論を,前述したような細砂の堆積によって河道が閉塞するプロセスに適用することで,礫河床上への細砂の堆積による自律形成河道の平衡横断面形状について,理論的な観点から説明を試みたものである.

  • サムナー 圭希 , 井上 卓也, 清水 康行
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_745-I_750
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     山地河川では,基盤面の下刻や側刻による蛇行の発達が顕著にみられる.岩盤の侵食要因は,主に砂礫の衝突磨耗によるものが支配的であるが,岩盤面が乾湿や凍結融解などの機械的な作用により風化することでも発生する.本研究では,数値計算モデルを用い,岩盤床を有する河道湾曲部における乾湿風化の影響について解明を試みた.数値計算モデルは,流下方向の砂礫移動量と河岸の横勾配から横方向の岩盤侵食を考慮し,数値実験では供給土砂量に変化を与え計算を行った.数値実験の結果,河道横断面内において,二次流の影響による内岸の固定砂州の形成,砂礫と岩盤の境界における局所洗掘および風化による側刻がみられた.摩耗侵食による河床低下が進行すると,風化は低水路全体に影響を及ぼした.また,土砂供給が少ない場合,河道が全体的に露岩するため湾曲部の内岸側において風化が進行することが明らかとなった.

  • 重枝 未玲, 秋山 壽一郎, 伊藤 翔吾
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_751-I_756
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,水面形の経時変化に基づく流量・粗度係数・河床位・流砂量の時空間推定法について,小規模河床形態の遷移を伴う河床変動実験結果の再現精度を検証するとともに,河床を固定床とした解析結果との差異について検討したものである.本研究で用いた推定法は,1次元浅水流方程式と流砂の連続の式に基づき,粗度係数と河床位の収束計算を行いながら,流量・粗度係数・河床位・流砂量の時空間分布を推定する手法である.同推定法の検証は,小規模河床形態が遷移河床,平坦河床,砂堆IIとする条件下での実験結果に基づき行った.本研究から,(1)本推定法が,小規模河床形態の遷移時の河床位・流量・粗度係数・流砂量を十分な精度で再現できること,(2)河床を固定床で取り扱った場合,出水後の河床を用いた推定結果が流量の再現性が最も高いこと,などが確認された.

  • 森本 有祐, 竹村 吉晴, 福岡 捷二, 立松 明憲
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_757-I_762
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,石礫を含んだ広い粒度分布の河床材料からなる安倍川網状流路において,洪水流の三次元性に伴う掃流砂,浮遊砂の非平衡土砂移動機構及び洪水中の澪筋の移動等を明らかにすることを目的としている.流れの解析は非静水圧分布を考慮した準三次元解析であるQ3D-FEBS法,掃流砂の運動には,修正長田・福岡モデル,浮遊砂の運動には後藤・福岡モデルを用いた新しい河床変動解析法を適用し,網状流路の河床の変形について実測値と比較している.その結果,本解析法が網状河川安倍川の洪水流河床変動解析に有効な手段を与えることを示している.

  • 井上 隆, 倉上 由貴, 佐名川 太亮, 二瓶 泰雄
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_763-I_768
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年の極端豪雨の頻発化に伴う大規模洪水氾濫により,河川橋梁被害も甚大化している.その要因の多くは橋脚周りの局所洗掘であり,今後の橋脚の維持管理や適切な洗掘対策が大きな課題である.本研究では,一般的な河川橋脚に施工される各種洗掘対策工(ブロック工,袋状捨て石工,シートパイル工)を用いて小型模型実験を行い,橋脚周辺の洗掘抑制効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする.実験結果より,「透過型」である袋状捨て石工がシートパイル工やブロック工よりも洗掘深や洗掘面積を大幅に抑制できていることが明らかとなった.また,洗掘が顕著となる橋脚上流側の洗掘対策に関しては,洗掘対策工を橋脚上流側に施工するだけで十分な効果を発揮することが分かった.

  • Obaidullah SAFIE, Mizuki ITO, Akihiro TOMINAGA
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_769-I_774
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     Pile-groups are one of the hydraulic structures used for riverbank protection. Controlling the local scour around a pile-group is a desirable attempt for the structural stability. In this study, bed deformations around different pile-groups were investigated experimentally. This research was aimed to depict the effects of pile-group layout parameters on the bed characteristics. The maximum scour depth was well expressed by the modified blockage ratio with an identical trend in all the cases. Increasing the modified blockage ratio resulted in a larger scour and smaller deposition around all types of the pile-groups. Total scour volume in the channel was shown to be almost proportional to the maximum scour depth in all the cases.

  • 渡邊 康玄, 高杉 優人, 片山 小裕美
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_775-I_780
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     砂防ダムは,土砂災害防止の観点から極めて有効な構造物であるが,河床縦断形や土砂輸送の不連続を生じさせ,河川環境の観点からはこれらへの対策が必要となっている.近年,既設の砂防ダムにスリットを入れ,大規模出水時には土砂を捕捉し,小規模出水時には土砂を流下させる機能を持たせて,河川環境の改善を図る例が多くなっている.河床縦断形や土砂輸送の観点からの知見は増えてきているものの,河床材料の質や河床形態の変化という点では,いまだ十分に明らかにされていない.本研究では,知床半島に位置するイワウベツ川の砂防ダムを基にした水理模型実験を実施し,小規模出水時に排出される土砂によるダム上下流の河道の応答と,その後の大規模出水時の河道の応答について検討を行った.その結果,ダムのスリット化により,河床高の連続性が回復するとともに,小規模出水では,ダムが存在しない状態及びスリット化以前の交互砂州形状を維持するものの,その後の大規模出水時には交互砂州の波長,波高とも増大することが把握された.

  • 平松 裕基, 山口 里実, 岩崎 理樹
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_781-I_786
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年,総合土砂管理などの観点から置き土をはじめとした土砂還元の対策がなされている.本研究の目的は,置き土材料が河道内に広く供給されるような敷設位置を明らかにすることである.実験では砂州が形成された河床を対象とし,その砂州と置き土の相対的な位置関係を異なる条件に設定した.この検討を通じ,置き土材料に用いた着色砂の広がり方,ならびに置き土設置が砂州波長に与える影響を調べた.その結果,砂州前縁線の下流側の洗掘部から河床が上昇してくるような位置に置き土を設置する条件が最も河道内に土砂が供給されやすいことがわかった.また,置き土を設置した砂州は局所的な土砂供給量の増大により波長が長くなり,逆に直上流の砂州では時間遅れを伴って波長の短くなる傾向が示された.

  • 宇根 拓孝, 大本 照憲, 蔵永 一輝
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_787-I_792
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,開口部を有する斜め堰の開口部深さを系統的に変化させ,堰上流の堆積した土砂の排砂機能および堰下流の河床変動について検討した.開口部を有する斜め堰は,堰上流に堆積した土砂の流動性を高め,河床を低下させた.本研究では堰開口部が河床形状に与える影響を明らかにするために,漸変流区間および局所流区間に分けて検討を行った.実験結果は,漸変流区間において,水位および河床の低下量は開口部深さが増大するにつれて直線的に増加し,斜め堰の河床低下量は,直角堰よりも高いことを示した.局所流区間における下流の洗堀孔は,代表的長さスケールで無次元化することで相似形であることが認められ,開口部深さが代表的長さスケールに与える影響を明らかにした.

  • 津田 将行, 尾島 勝, 仲嶋 一, 中越 信和
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_793-I_798
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本論文では,砂床河川である芦田川下流での樹木伐開と河道修整後の砂州上の河床変動や植生の遷移状況を把握するためにUAVによる調査解析,および数値解析を行った.その結果,砂州を横断的にみると,流心部に近い所に砂,中央部に礫,右岸植生(葦)との境界付近は砂と礫から構成されている.砂州の特徴として,平瀬から早瀬へと蛇行し変化する箇所に,湾曲部の外側には砂が堆積して,新たな州が形成される.また中州と水面の境から比高差が1.5m以上の場所では植生が繁茂し,1.5m以下の砂州の場所では植生の繁茂はあまり顕著ではなく,砂州と水面との境目付近には水分補給により草本類が繁茂している.河床変動解析を行った結果,流量が70m3/s以下の小規模出水においても粒径が2.3mmよりも小さい砂礫が,流水とともに砂州上を移動することで河床形状に影響を及ぼしていることがわかった.

  • 竹村 吉晴, 福岡 捷二
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_799-I_804
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     洪水時に河岸際の洗掘,河岸崩落の発生,川底に堆積した崩落土砂の流送を繰り返しながら,自然堆積河岸の侵食は進行する.河岸侵食は,河川の安全性と密接に関係しているにもかかわらず,洪水時の河川断面形の変化は十分考慮されていない.これは,適切な河岸侵食の解析法がないためである.本論文では,河岸がサクションにより自立している高さを考慮し,崩落土砂が川底に堆積するまでの過程を連続体の運動方程式に基づき解析する.そして,堆積した崩落土砂が河岸近傍の三次元流れと石礫の非平衡運動によって流送される過程を解析する.これを繰り返すことで河岸の侵食量を見積もる.この算定法により,常願寺川現地実験における石礫河岸の侵食プロセスを説明出来ることを示した.

  • 岡本 彩果, 荒尾 慎司, 広瀬 望, 楠田 哲也, 小田 耕平
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_805-I_810
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     著者らは,十字路交差点において流入管3本と流出管が接続する4方向接合円形マンホールにおけるエネルギー損失係数の算定式を考案してきた.その際最初に,2本の対向する横流入管の流量を同一にした条件下で定式化を行い,次に,全ての流入管の流量が異なる場合でもエネルギー損失係数を求めることができる計算式を考案した.本論文では,片方の横流入管に落差を伴う4方向接合円形マンホールのエネルギー損失特性を実験的に明らかにし,従来の計算式に加えて横流入管の落差の影響を算出できる計算式を開発した.この式では,1本の横流入管にのみ落差を有するときのエネルギー損失係数を求めることが可能であり,本実験条件の範囲内では計算値が実測値をほぼ再現できた.

  • 松原 圭佑, 永瀬 敦史, 佐藤 隆宏, 米澤 宏一, 下田 賢文, 野口 尚史, 平田 勝哉
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_811-I_816
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     水道弁として設計されたリンクスリーブ弁をダム放流設備に適用するため,キャビテーション抑制を目的として給気した場合の流量係数,弁下流側の圧力分布と流れの状態,吸込み空気流量の特性,弁内圧力分布及び弁内に負圧が生じない許容流速を明らかにする目的で実験を行った.その結果から,空気流量については水-空気系のジェットポンプとの類推に基づき,噴流による連行係数と下流管内の逆圧力勾配による帰還流係数を実験的に求めた.また,弁内圧力分布を計測し,弁内圧力水頭と上流側速度水頭が比例関係にあることを確認した.このことから,実用上,弁下流の圧力は負圧であるものの,大気圧に近い状態が保たれ,流量増加は有効水頭の増加により生じるため,弁内に負圧が生じることはないと予想され,流速の許容値は設けなくとも良いと考えられる.

  • 久末 信幸, 竹原 幸生
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_817-I_822
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     近年,既設水力発電所の有効活用の取組みの一つとして低水位運用が行われている.低水位運用では,これまでの貯水池の水位よりも低い水位で運用を行うことから,取水管の被り水深(管中心から水面までの距離)が不足し空気吸込渦の発生が懸念される.本研究では水力発電所の水平取水設備に着目し,被り水深の空気吸込渦に及ぼす影響を明らかにするために,模型実験において,流量,水深を一定に保ち,水平管の内径を一定として被り水深を変化させた場合の流れ場の変化について検討した.その結果,水平管の内径が大きい場合については,水平管上端が取水路水深の半分を超えると,被り水深よりも水平管上端から水面までの距離の方が,渦の発生規模や発生回数の増加の要因になることなどが明らかになった.

  • 山上 路生, 角 哲也, 小柴 孝太, 髙田 翔也, 岡本 隆明, 長坂 香織
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_823-I_828
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河床や湖底の沈木によるダムの常用吐きの閉塞事故が報告されている.一方で,沈木の発生メカニズムや掃流特性についてはほとんど解明されていない.そこで本研究では,水路実験による沈木の限界掃流力に関する定量評価を試みた。実験では沈木模型のサイズ,密度,初期設置角度を系統変化させて,これらと限界掃流力の関係を整理した。また移動床実験も行い,沈木の初期埋没深さが限界掃流力に及ぼす影響を調べた.さらに,レイノルズ数と補正関数を用いて,計測した無次元限界掃流力を普遍表示することができた.最後に掃流沈木の停止条件を水路実験によって考察し,裾花ダムの湖底で観測された沈木群の分布特性を説明した.

  • 梶川 勇樹, 阿波根 慧
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_829-I_834
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,局所洗掘現象の進行に伴う護床工の破壊過程を予測・評価できる実用的な数値解析モデルの開発を目的とし,Euler型の鉛直二次元流れ・河床変動解析モデルに,DEMによる護床ブロックの移動解析を導入した数値モデルを開発した.護床ブロックの導入方法として,河床面および護床ブロック表面にのみ個別粒子を配置し,ブロックを表現する粒子は形状を保つよう移動計算毎に座標修正を施した.ただし,ブロックに作用する流体力は考慮していない.開発した数値モデルを,床止め下流における護床工の有無による移動床実験に適用した.結果,護床工無しの再現計算では,その洗掘孔形状を良好に再現できた.また,護床工有りの再現計算では,護床ブロックの流出個数が実験に比べ少ないものの,局所洗掘の進行に伴う護床ブロックの流出の様子を再現できた.

  • 佐藤 柳言, 高橋 正行, 大津 岩夫
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_835-I_840
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     階段状水路に形成されるnonaerated skimming flowを対象に,与えられた水路傾斜角度において相対ステップ高さの影響を考慮した局所摩擦抵抗係数の実験式を提案した.また,nonaerated skimming flowのエッジ断面における流速分布と局所摩擦抵抗係数とが関係づけられた.さらに,広範囲な相対ステップ高さに対して,乱流境界層の発達を考慮した水深と乱流境界層厚が解析的に求められ,水深と乱流境界層厚が一致する断面までの流下距離を解析的に求めることが可能となった.

  • 冨山 遼, 内田 龍彦, 小林 大祐, 鳩野 美佐子, 横嶋 哲
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_841-I_846
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河道内の植生や構造物等に作用する流体力を評価することは河川管理を行う上で重要である.本研究では流体力は抵抗体が周辺の圧力の分布を変化させることにより発生することに着目し,抵抗体が存在する前後での水面形と圧力場の変化を調べ,流体力を抵抗体が存在する前の流れ場から考察した.また,開水路流中の非水没抵抗体に作用する流体力が流れ方向への浮力,一様流中で発生する流体力,水面変化による流体力,および圧力勾配によって発生する流体力で構成されることを導き,その評価法を提案した.そしてこれを用いた水面形の解析により,本評価法の妥当性を検討した.

  • 渡辺 勝利, 野中 樹, 宇根 拓孝, 朝位 孝二
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_847-I_852
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     直線開水路の側壁部に作られた長方形キャビティ内の流れの構造を流速計測法と流れの可視化法を用いて検討した.キャビティ内は相対的に低速となり,鉛直方向を軸とする互いに反対方向の大規模な循環流と小規模な循環流が形成される.キャビティと開水路の境界には,水平方向レイノルズ応力(-uw)が大きい領域が形成される.本実験の条件下では,その最大値は水面下に存在し,その大きさは開水路側壁付近のそれに比べて3倍の値となる.開水路とキャビティの境界領域には,上流の側壁上に形成された縦渦構造群が安定して流下する.この縦渦構造群は流下に伴なって発達し,その流体運動によってキャビティ内の循環流や開水路との境界における高レイノルズ応力領域の形成に重要な役割を果たす.

  • 渡辺 勝利, 手山 堅心, 宇根 拓孝, 朝位 孝二
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_853-I_858
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     高水敷に切り欠き部(キャビティ領域)を有する複断面開水路の流れ構造の特徴を,流速計測と流れの可視化を用いて検討した.流速計測にはPTV(Particle Tracking Velocimetry)を使用した.流れの可視化には蛍光染料注入法を用いた.高水敷切り欠き部は比較的低速領域となり,鉛直方向を軸とする大,小規模の循環流が形成される.キャビティ領域と低水路の境界には水平方向レイノルズ応力(-uw)の大きい領域が形成される.また,キャビティ領域と高水敷上面の境界は鉛直方向レイノルズ応力(-uv)の大きい領域が形成される.キャビティ内には上流の高水敷先端部,上面部に形成された縦渦構造が安定して流下し,それらは剥離せん断層による渦運動によって,レイノルズ応力の生成に寄与している.

  • 田中 貴幸, 原田 龍希, 大本 照憲
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_859-I_864
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河道内における橋脚の存在は局所的な流れを発生させるため,局所的河床洗堀による橋脚の安定性の低下や流木堆積といった災害発生の要因となる恐れがある.また,黄河のような高含砂河川や泥流,豪雨時における微細土砂を多く含む流れの発生等を考慮し,橋脚を有する高濃度流の流動機構を明らかにする必要がある.そこで本研究では,小判型の橋脚を有する開水路流れにおいて,ポリアクリル酸ナトリウム(PSA)水溶液を用いて粘性を変化させたときの平均流特性や運動量輸送特性について検討した.これにより,粘性が高くなるにつれて橋脚先端付近の迂回流や橋脚下流付近の水路中央に向かう流れが抑えられることを明らかにした.また,運動量輸送特性については,粘性が高まることで移流に比べ乱れによる運動量輸送量が極端に抑えられることを明らかにした.

  • Fikry Purwa LUGINA, Tatsuhiko UCHIDA, Misako HATONO
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_865-I_870
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     Understanding flow resistance is crucial for river engineers to determine the discharge capacity and to control bank erosion and the distribution of shear stress around the boundary. Flow resistance of a channel is well known to increase with the bend, or meander, due to the development of secondary flow. Although the effects of secondary flow on flow resistance are widely recognized, the characteristics of the effect itself are not yet clear. In this study, the effects of secondary flow on flow resistance were investigated quantittively by comparing various numerical calculation methods with the experimental datasets of water surface profiles in straight and meandering channels. The results show that the applied numerical calculation method is effective to evaluate the effect of secondary flow on increasing channel resistance.

  • 八木 潤平, 村田 祥之, 吉村 英人, 藤田 一郎, 中山 恵介
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_871-I_876
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     落差工の下流部にトレンチ部を取り付けたとき, トレンチ形状や水理条件によっては非常に規則的な振動跳水が発生することが知られている.ただ,その発生条件に関する検討は十分とは言えないため,様々な条件下で可視化画像解析による基礎実験を行い,振動現象の周波数特性を実験的に明らかにした.高速度カメラを用いて得た連続画像を画像解析することで,従来よりも詳細な内部流況の時空間変動を把握した.並行して,URANSに基づく数値解析による検討も行ったが,乱流モデルによっては振動を再現できないことがわかった.周期振動を計算できたのは高レイノルズ数型の SST 𝑘-𝜔モデルで,内部流況を含めた実験結果をある程度再現することができた.

  • 濵田 拓也, 吉村 英人, 藤田 一郎, 中山 恵介
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_877-I_882
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     我が国における河川洪水流量はこれまで浮子法により計測されてきたが,近年では画像解析による表面流速分布を利用する手法が注目されて始めている.STIVがその代表的な手法であるが,表面流速分布から流量を推定する際には,それを鉛直平均流速に換算する表面流速係数αを用いなければならない.αの値に関しては標準値として0.85が使われることが多いが,これは一様な河道流れで鉛直流速分布を仮定して得られた値である.しかしながら,実河川においては浮子観測の第1,第2断面でも横断河床形状が同じであることはなく,途中に砂州などが発達していたら河床勾配も局所的に変化せざるを得ない.従来の開水路研究はいわゆる等流状態を想定したものが大半であったが,不等流状態における流速分布の縦断変化に関しては十分な知見がないのが現状である.そこで,本研究では可視化実験と数値解析により,河床の途中に緩やかなマウンドがある流れにおいて表面流速係数の縦断変化に関する検討を行った.その結果,表面流速係数はマウンド形状に対して非対称に変化し,マウンドの下流側区間では負の加速度の影響により大きく減少することを明らかにした.また,数値解析においても同様の特性が確認された.

  • 神尾 光一郎, 鶴見 悠太郎, 阪本 啓志, 三品 裕史, 増田 憲和, 中田 聡史, 二瓶 泰範
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_883-I_888
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,四胴型自動航行船を北海道火散布沼での水質観測に適用するとともに,定点で水質計の連続観測を行った.火散布沼は平均水深0.7mと浅く,ほとんどの観測点でアマモ類が繁茂しており,自動航行船のプロペラにアマモが絡みつき航行に大きな障害をきたした.そこでプロペラガードを開発し,アマモ等の植生が繁茂している浅海域での自動航行船技術に有効であることを示した.次いで,自動航行船による広域観測と定点での水質の同時観測により詳細な水質分布を取得した.沼奥では日射による海面との熱交換や淡水供給による影響を受け,低塩分水が長期にわたり分布していることが確認された.一方,沼口では外海由来の低水温・高塩分水の流入流出の影響を受け,特に降雨後は,沼口から沼中央の塩分が大きく変動していることが示唆された.

  • 古川 仁志, 桒原 昭夫, 奥村 裕史, 朝岡 良浩, 長林 久夫
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_889-I_894
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     河川の土砂動態調査を目的として採水分析とフローセル型超音波減衰スペクトル計による連続測定を組み合わせて浮遊砂観測を行った.測定装置の較正のため1ℓの試料を2本採取して土砂濃度と粒度分布を測定した.これまでの伊南川の観測では採水分析結果とフローセル型超音波減衰スペクトル計の測定結果には砂粒子が見られなかったが,出水によって砂が移動して河道に砂洲が形成されていることを確認した.試料の採取方法と試験方法が適切ではないと考えて,本研究では試料の採取量を増量し,試料を0.075mmふるいで砂粒子とシルト・粘土に分けて濃度と粒度分布を測定した.砂粒子が超音波振動子の測定範囲内を通過するように超音波減衰スペクトル計のフローセルを改良する必要がある.

  • 中谷 祐介, 懸樋 洸大
    2021 年 77 巻 2 号 p. I_895-I_900
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

     都市感潮河川で発生するスカムの早期検知および挙動把握のためには,定点カメラを用いた連続モニタリングが有効である.既往研究によりU-Netを用いたスカム検出技術が開発されているが,学習に必要なラベル画像の作成に多大な労力と時間を必要とすることが,複数地点への適用を困難にしている.本研究では,ダミー画像を用いた新たな学習方法を開発し,適合率,再現率,F値およびmIoUを評価指標として,従来手法との比較により有用性を評価した.その結果,従来手法に比べてラベル画像の作成労力を大幅に削減するとともに,より高い精度でスカムを検出することに成功した.この手法を用いることで広範なスカムの時空間挙動の把握が可能となり,またスカム以外の浮遊物にも適用することで,河川ごみの連続モニタリング技術として汎用的な利用が期待される.

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