BEDT-TTFラジカル塩の相転移機構について,構造解析・物性測定により検討した。(BEDT-TTF)
3(ClO
4)
2では対アニオンの回転運動が171Kにおけるこの塩の金属-絶縁体二次相転移に重要な役割を果たしている。対イオン間の水素結合によりアニオンの回転を抑制した同型物質の(BEDT-TTF)
3(HSO
4)
2では構造相転移が抑えられ,126KでMott型の一次相転移が生じる。溶媒分子を含む系である(BEDT-TTF)
2X・TCE
0.5(X=ClO
4,BF
4;TCE=1,1,2-トリクロロエタン)では,25K(ClO
4塩)もしくは60K(BF
4塩)において相転移が発現するか否かは150~200Kの領域の冷却速度に依存するが,これは超格子構造が発達する温度でもある。BF
4塩について低温構造解析を行ったところ,ドナー分子末端のジヒドロジチイン環の配座の乱れの部分的秩序化が見出された。
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