熱測定
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31 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 強相関電子系の熱力学
    寺崎 一郎
    2004 年 31 巻 4 号 p. 164-171
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    強相関電子系とは,電子間の強いクーロン斥力のために一電子描像が破綻した固体のことである。そのため,バンド計算の予測を凌駕する機能が発現する可能性があり,様々な分野で精力的な研究が行われている。最近,ある種の遷移金属酸化物(典型的な強相関電子系)が良い熱電変換材料であることが報じられ,強相関電子系の熱電効果が注目されている。本稿では,熱起電力から見た遷移金属酸化物の熱力学的特徴について平易な解説を試みる。また,いくつかの遷移金属酸化物の熱電効果の実験結果と解析を紹介する。
  • 橋本 拓也
    2004 年 31 巻 4 号 p. 172-178
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    各種熱分析および特殊条件下X線回折により,高機能を持つペロブスカイト系酸化物について従来報告されていない相を発見した。Ba2In2O5は910℃でブラウンミラライト型から立方晶ペロブスカイトに相転移すると報告されていたが,910~1070℃以上では歪んだペロブスカイト構造であること,および1070℃で二次相転移があり,より歪みの小さいペロブスカイト相に転移することを発見した。固体酸化物イオン伝導体としては1070℃以上の相が高いポテンシャルをもつことを明らかにした。BaBiO3は130℃,470℃で構造相転移を起こし,単斜晶から菱面体晶,立方晶へ変化すると言われていたが,高感度熱分析を実施したところ,160,520,620℃で相転移が観測され,四つの相があることを明らかにした。また520~620℃では長周期構造が存在することを明らかにした。LaCrO3は1気圧,~240℃で斜方晶から菱面体晶ペロブスカイトに,吸熱および体積収縮を伴って構造相転移することが知られている。クラペイロンの式を適用すると,高圧力下では室温でも菱面体晶が安定となることが予想された。高圧力下でのX線回折測定を実施したところ,室温,5.4GPaでLaCrO3は菱面体晶に相転移することが確認された。
  • 上田 洋一, 岡本 昌彦, 大神 泰孝, 中井 清
    2004 年 31 巻 4 号 p. 179-185
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    医薬品の安定性試験は,医薬品開発の中で最も長期間を要する試験の一つである。より良い医薬品を早期に上市するためには,その予備安定性試験を効率化し,より多くの精確な情報を基に保存条件を設定することが必要である。しかし,長期間の保存中に起こる各種分解を試験前の短期間で正確に把握し,安定性を確保するには技術的に難しい問題が多い。
    我々は,その解決策として熱分析による新しい安定性予測法を開発した。本法は,分解から計算までの解析に要する期間が約2週間であり,迅速ある。操作は,主に熱分析とクロマトグラフ分析であり,簡便である。1測定当たり最少1mgで行え,安定性を予測するまでに要する試料量は約20mgである。微量で解析できるため,製造量が少ない開発初期からでも適用することができる。さらに従来6箇月間を要した予備試験と同等以上の正確さ・精度で予測することができる。本法は医薬中間体,原料,農薬および防疫薬にも適用できる高い汎用性を有する。
  • 月向 邦彦
    2004 年 31 巻 4 号 p. 186-193
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    タンパク質の水和や構造が,体積や圧縮率とどのように関わっているかについて解説した。タンパク質の部分体積や部分圧縮率は,巨視的な熱力学量であるにもかかわらず,溶液中のタンパク質の構造を敏感に反映している。これは,分子表面の水和と分子内キャビティーが相殺するかたちで寄与しているからである。体積や圧縮率は,高圧下でのタンパク質の挙動を理解するためだけでなく,天然状態における立体構造のゆらぎや,非天然状態のコンホメーションについても重要な情報を提供する。温度と圧力の両軸をとおしてタンパク質を眺めることで,タンパク質の新たな描像が見えてくる。
  • 小澤 丈夫
    2004 年 31 巻 4 号 p. 194-199
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    複数の素過程が関与する様々な過程の非定温速度論ついて考察した。最初に,核が発生しそれが成長する過程の非定温速度論の基本式を導き,定温条件の速度式と比較した。定速の加熱あるいは冷却の場合速度論解析が可能である。並進反応や続発反応についても同様に考察した。並進反応については不充分ではあるが解析に利用できる簡単な関係が見出される。続発反応については,特定の場合に限り基本式が書けるが,有用ではない。温度振動の可逆的過程の速度論解析への応用についても解説し,合わせて非可逆反応への適用についても考察した。
  • 2004 年 31 巻 4 号 p. 200
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
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