DSCを用いて医薬品の分子状態の評価を行った。粉砕および噴霧乾燥処理により得られた非晶質ClarithromicinのDSC測定を行ったところ,結晶化に伴う発熱ピークの形状が異なっており,30分粉砕物はブロードおよびシャープな二つのピークが認められるが,噴霧乾燥物ではブロードなピークのみが観察された。Cefditoren pivoxil非晶質の安定性について検討するため,ガラス転移およびエンタルピー緩和に関して温度変調DSCを用いた測定を行った。Cefditoren pivoxilの噴霧乾燥物および30分粉砕物をそれぞれガラス転移温度以下で等温保存した時,噴霧乾燥物では保持時間や保存温度を変化させても,
Tgおよびエンタルピー緩和量はほとんど変化しなかったが,30分粉砕物では,保存温度と保持時間を変化させることにより
Tgおよびエンタルピー緩和量は変動した。噴霧乾燥物の安定性は30分粉砕物に比べ高いことが認められており,30分粉砕物は等温保存中に安定化したと推察された。メソポーラスシリカFSM-16(Do)とSalicylamideを混合したときの熱挙動を検討した。DSC測定によりSalicylamideの三つの状態,すなわち,Salicylamide結晶,融点よりも低温側にブロードな吸熱ピークを示す結晶格子に乱れを生じた状態,DSC曲線上で熱の出入りが検知されない非晶質もしくは表面に吸着した状態を区別することが可能であった。
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