広い温度範囲にわたって巨大な誘電率を示し,応用面でも注目されている鉛含有ペロブスカイト酸化物リラクサーにおける強誘電ナノ領域形成について,その機構解明を目的として,熱容量測定を中心とした熱力学的研究を行った。典型的な鉛含有リラクサーPb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3およびPb(Mg
1/3Ta
2/3)O
3において強誘電ナノ領域の形成に伴うと考えられる過剰な熱容量を見出し,それに対応するエントロピー変化を決定した。強誘電ナノ領域形成には秩序無秩序相転移機構が関係しているものの,その強誘電ナノ領域形成は結晶全体には進行せず,相転移が阻害されていると考えられることを示した。さらに極低温では,多くの無秩序性を残したままガラス的に凍結していることを明らかにした。
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