DSCによる高温熱容量の測定を,測定温度が前後のサイクルとかなりの部分重なり合う, 新しい昇温パターンを用いて行い,重回帰分析の手法によって高温熱容量の値を求めた。測定精度はα-Al
2O
3とMn
2O
3の熱容量を室温から850Kまで測定し,文献値と比較することによって調べた。その確度は相対誤差で±2.5%以内であった。
次にこの手法を用いて,熱力学的データの報告されていない不定比化合物,(BaSm
2Mn
2)
1-xO
7(
x=0.000,0.031)の熱容量を測定した。その結果,相転移に起因する熱異常を定比の試料について観測し,転移温度と相転移に伴うエンタルピー変化はそれぞれ520Kと1.65kJ・mol
-1であった。また,840Kでの2つの相の熱容量の差はおよそ8J・mol
-1・K
-1であり,一方,化学式からDulong Putitの法則によって予測される2つの相の熱容量の差はおよそ4J・mol
-1・K
-1であった。したがって,熱容量の値は不定比性の増加とともに僅かに減少する傾向があると考えられる。
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