これまで使用されていた温度目盛(IPTS-68,EPT-76,IPTS-48,およびITS-27)と最新の国際温度目盛(ITS-90)との温度差,およびその温度微係数を一覧表の形で示した。また,温度差(
T90-
T68)とその温度微係数を再現しうる解析関数の形も与えた。これらの表は従来の熱力学データに,IPS-90に基づく変換を行なう上で必要欠くべからざるものである。これまでの正確な熱力学データは,まずその表示温度をIPS-90に変換し,次にデータをこの目盛に基づいて修正するのが望ましい。以前にDouglasはエンタルピーのテーラー展開を使った変換式を報告している{
J. Res. Natl. Bur. Stand. A73, 451-470 (1969)}.これらの式は,二つの温度目盛の差が小さい時には著しく簡略化される。IPTS-68からITS-90へ,IPTS-48からITS-90への変更に伴なう熱力学諸性質への影響度を調べるため,ND
4ReO
4(固),BaSnF
4(固),Al
2O
3(固),BeO・Al
2O
3(固),BeO・3Al
2O
3(固),Mo(固)について,既存の熱容量,エンタルピー,エントロピーのデータをDouglas式で変換した。計算結果を表の形で示したが,温度目盛の変更に伴なう既存熱力学データへの影響を知る上で有効である。その結果,最も正確な熱力学データのみが温度目盛の変更に伴なう修正の考慮の対象となることが明らかになった。
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