有機分子結晶の相転移を観察する手法として,フーリエ変換型温度波熱分析法を提案する。本法は,温度波の高次高調波の解析を行うことで,熱拡散率を温度と周波数の関数として同時に測定可能とした。本研究では,結晶性高分子等のモデル物質として広く研究されてきた
n-アルカンをはじめとし,1-直鎖アルコール,1-直鎖脂肪酸およびそのエステルについて,相転移を含む広い温度範囲において熱拡散率を測定し,相転移に伴う変化の様子を観察した。いずれも相転移温度域において,熱拡散率は急激に低下し,熱拡散率の温度依存性および熱拡散率変化から決定した固相-固相転移温度には
n-アルカンの炭素数偶奇効果があった。固相-固相転移が明確な
n-アルカンや一部の1-直鎖アルコールについてのみ融解直前には,熱拡散率に周波数依存性が現れることを見出した。さらに,末端極性基の固相・液相での熱拡散率に対する影響や,炭素数との関係について考察を行った。
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