超音波検査技術
Online ISSN : 1881-4514
Print ISSN : 1881-4506
ISSN-L : 1881-4506
41 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
学術賞-原著
  • 吉住 聖子, 戸出 浩之, 岡庭 裕貴, 星野 沙也加, 荒関 朋美, 岩崎 美穂香, 小林 康之, 山下 英治
    2016 年 41 巻 6 号 p. 625-633
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2017/02/05
    ジャーナル フリー

    目的:僧帽弁輪部断面積(CSAMV)の計測には,心尖部四腔,二腔像の弁輪径を用いる4CV/2CV法よりも,長軸像の弁輪径(DLAX),交連部–交連部の径(DCC)を用いるLAX/CC法の方が正確であるとの報告がある.本研究の目的は,4CV/2CV法とLAX/CC法で計測したCSAMVから左室流入血流量(QLVIT)を算出し,その計測精度を比較すること,DCCおよびDLAX計測の最適断面を検討することである.

    対象と方法:対象は,明らかな弁膜症がなく心機能良好とした30例(M/F: 22/8, 48.7±18.6歳).4CV/2CV法に加え,LAX/CC法は心尖部アプローチおよび傍胸骨アプローチでDCC, DLAXを計測し,その組み合わせから4種類の方法で各CSAMVを求めた.4CV/2CV法とLAX/CC法によるQLVITを算出し,左室駆出血流量(QLVOT)を対照に計測精度を比較した.

    結果と考察:4CV/2CV法で認めた計測誤差は,LAX/CC法で改善した.特にDCC, DLAXともに傍胸骨アプローチで計測した方法が,QLVOTと最も良く相関し(r=0.925, p<0.01),計測誤差が小さくなった.傍胸骨アプローチでは,DLAXを超音波ビームに対し垂直に描出できること,DCCの計測に短軸断面を用いることで交連の位置を正確に把握できたことが測定精度の改善につながったと考えられた.

    結論:LAX/CC法によるCSAMVの計測は,QLVITの測定精度を改善させる.その際,DLAX, DCCともに計測断面の描出は傍胸骨アプローチが有用である.

原著
  • 椎名 亮揮, 中島 英樹, 石津 智子, 清水 彩音, 根崎 里美, 飯田 典子, 上牧 隆, 南木 融, 瀬尾 由広, 川上 康
    2016 年 41 巻 6 号 p. 634-641
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2017/02/05
    ジャーナル フリー

    はじめに:ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群MELASは軽症の成人例では診断は困難である.心筋はミトコンドリア遺伝子異常の影響を受けやすく,心エコーによる早期診断が期待されるが,その心エコー図所見の詳細は未だ十分に検討されていない.本研究の目的はMELAS成人例における心エコー図の特徴を明らかにすることである.

    対象と方法:MELAS成人8症例において臨床症状,血液検査所見および心エコー図の特徴的所見について検討した.

    結果と考察:臨床所見では神経筋症状6例,糖尿病6例,難聴全例,低身長4例を認めた.乳酸値は7例,乳酸・ピルビン酸比は全例,BNPは6例で異常高値を認めた.心電図では左室高電位を4例に認め,低電位は認めなかった.全例左室駆出率は保たれ,求心性左室肥大を6例,拡張早期僧帽弁輪速度e′低下を5例,左室長軸方向ストレイン値低下を6例に認めた.また,肥大心筋のエコー性状として糖原病やアミロイドーシスなど蓄積性心筋症類似の細かな高輝度エコー像を5例に認めた.このような心エコー所見を認める症例において,神経筋症状,糖尿病,難聴,低身長を伴っている場合,積極的にMELASを念頭に置き,ミトコンドリアDNA遺伝子変異を含めた特異的検査を行うことが早期診断の一助となると考えられた.

    結論:MELASの心エコー図所見としては輝度の高い細かな異常エコーを伴う求心性左室肥大,左室弛緩遅延,左室長軸方向機能障害が特徴的であった.

学術賞-研究
  • 春原 麻衣, 武山 茂, 瀬戸 茂誉, 大久保 奈央, 奥井 悠友, 神 ツギノ, 佐藤 紀之, 前島 基志, 上條 敏夫, 髙橋 純
    2016 年 41 巻 6 号 p. 642-650
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2017/02/05
    ジャーナル フリー

    はじめに:妊婦の急性虫垂炎の診断は,超音波検査(以下US)が第一選択とされている.しかし,妊娠週数が進むにつれ子宮拡大に伴う回盲部の解剖学的位置が変化することにより,虫垂の位置も変化していく.このため,虫垂の同定には妊娠時期の虫垂の位置的変化を考慮しなければならない.今回我々は,妊婦虫垂炎の11例について検討したので報告する.

    対象および方法:期間は2010年1月より2014年8月まで,USにて妊娠中に虫垂炎を診断できた11例につき臨床所見およびUS所見の評価について後ろ向きに検討した.

    結果と考察:平均年齢30.7±5.6歳(mean±S.D.).平均妊娠週数19.8±5.9週(mean±S.D.).臨床所見においては全例が腹痛を主訴とし,6例が右下腹部痛,3例が心窩部痛,1例が右側腹部痛,右季肋部痛であった.6例に反跳痛を認めたが,筋性防御を示した例はなかった.白血球数は6,700~16,100/µL. CRP値は<0.1~8.8 mg/dL.手術に至った症例は4例であった.US所見では回盲部の位置は5例が右下腹部,4例が右側腹部,2例が右季肋部であった.虫垂方向は6時,5時,3時方向が各3例,2時方向が2例であった.虫垂平均径は8.3±2.8 mm(mean±S.D.).炎症の程度は5例が回盲部壁肥厚を認め,9例が周囲脂肪織上昇を認めた.妊娠中は非妊娠時に比べ腹壁が弛緩しており,腹膜刺激症状も出現しにくいため,典型的な理学的所見を呈さず診断の遅れを生じる可能性がある.このため,USでは直接所見である腫大した虫垂,層構造,粘膜層の肥厚,間接所見である回盲部の変化,上行結腸の軽度拡張・肥厚,回腸末端の浮腫性肥厚,腸間膜リンパ節腫大を注意深く観察し,さらに子宮壁との距離や炎症の程度に注意することが重要であると考えられた.

    結語:妊婦虫垂炎においては,妊娠週数による多角的な所見を加味し,回盲部の位置的把握と虫垂の方向,炎症の程度を把握し,早期発見・早期診断することが重要であると考えられた.

研究
  • 丸山 勝, 森 貴子, 三枝 義信, 小田 福美, 中林 智保子, 小林 照明, 久次米 公誠, 橋本 直明, 野曽原 由香, 鈴木 浩之, ...
    2016 年 41 巻 6 号 p. 651-658
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2017/02/05
    ジャーナル フリー

    はじめに:超音波検査時の検者への身体負荷は大きく,筋骨格系障害を訴える検者が多い.前報では静的な筋負担を計測することで,体位変換が腹部超音波検査時の身体負荷軽減に効果がある可能性を示した.今回は動的な筋負担を測定し,より実際の検査に近い身体負荷について検討した.

    対象と方法:対象は,20代の学生8名とした.方法は,指定したプロトコルで被検者の体位(仰臥位,側臥位,斜位)を変えて代表的な3種類の模擬腹部超音波走査をしてもらい,その時の筋電図測定による客観的な筋負担評価と主観的な疲労感の評価を行った.筋電図の測定筋は,肩部,上腕部,前腕部,腰部の計8筋とした.疲労感の評価は肩,腰,前腕について測定した.

    結果:①右肋弓下走査:筋負担は上腕二頭筋において,左側臥位より仰臥位(p: 0.031)および左斜位(p: 0.023)で小さかった.疲労感は,肩が左側臥位より仰臥位(p: 0.049)および左斜位(p: 0.017)で小さかった.②右側腹部走査:筋負担は右僧帽筋において,仰臥位より左側臥位(p: 0.034)および左斜位(p: 0.017)で小さく,橈側手根屈筋において仰臥位よりも左斜位(p: 0.037)で小さかった.疲労感は腰において左側臥位より左斜位(p: 0.011)で小さく,肩では仰臥位より左斜位(p: 0.017)で小さかった.③左側腹部走査:筋負担は右僧帽筋において,仰臥位よりも左側臥位(p: 0.019)で小さかった.上腕三頭筋の筋負担が,左側臥位で最も大きく,仰臥位で最も小さかった(仰臥位vs右側臥位p<0.001,仰臥位vs右斜位p: 0.048,右側臥位vs右斜位p: 0.009).

    結語:同じ走査でも被検者の体位により検者の筋負担は異なるので,検者は描出能が同じなら被検者の体位変換を行い,身体負荷が小さい走査方法を選ぶべきと考えられる.

症例報告
  • 藤井 麻衣, 隈部 力, 川野 祐幸, 黒松 亮子, 相園 多美子, 福島 奈央, 森下 麻子, 橋本 好司, 鳥村 拓司, 中島 収
    2016 年 41 巻 6 号 p. 659-665
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2017/02/05
    ジャーナル フリー

    症例は20歳代の男性.主訴は心窩部痛と発熱.ALTとCRPの軽度上昇と高脂血症,USで肝腫瘤を認め精査となる.Bモードでは脂肪肝とS3区域に約20×14 mmの境界不明瞭な低エコー腫瘤を認めた.さらに,腫瘤の中心部には約14×10 mmの明瞭な低エコー域を認めた.造影超音波検査の血管相ではBモードで認めた中心部の低エコー域が濃染され造影効果は持続した.辺縁部と肝被膜側の肝実質が楔状に不均一に造影された.後血管相では中心部は欠損像を呈し,辺縁部と肝被膜側の肝実質の楔状の領域は周囲肝実質と同エコーレベルであった.ダイナミックCTとEOB造影MRIでは,造影早期相で腫瘤の中心部に濃染を認め,後期相では遷延性に造影され,EOB造影MRI肝細胞相は低信号であった.T2強調像は強高信号,ADC-mapは視覚的に等~高値域を呈した.辺縁部はMRIの位相差法で脂肪肝の取り残し域であることが確認された.これらの画像所見より,背景肝は脂肪肝,腫瘤の中心部低エコー域は高血流血管腫,辺縁部はperitumoral fat-spared areaと診断された.本例では造影超音波検査の血管相で血管腫から肝被膜側へと拡大する造影効果がリアルタイムに確認され,A–P shuntと考えられた.血管腫の周囲へ経類洞性に多量の動脈血液が流出し,その還流領域の脂肪化が回避されためにperitumoral fat-spared areaが生じたと考えられる.造影超音波検査は血流動態と病態の評価の一助として有用であった.

技術講座
特別企画
地方会抄録
feedback
Top