心臓原発性悪性リンパ腫(PCL)は心臓原発腫瘍の約1%とまれでその予後は不良とされている.今回PCLが寛解するまでの経時的変化を,経胸壁心エコー図検査(TTE)で観察することができたので報告する.
症例は60代女性.1か月前より労作時の息切れを自覚し,近医循環器内科を受診した.TTEで心臓腫瘤を認め当院に紹介となった.TTEで右房右室にかけて112×64 mmの辺縁不整,内部エコー不均一な腫瘤を認めた.腫瘤は三尖弁を巻き込み,弁尖の可動性は制限され,三尖弁狭窄の状態を呈していた.また右心系だけではなく,大動脈周囲,左心系房室間溝,左房後壁側にも充実性のエコー像を認めており,広範囲で巨大な腫瘤であった.心臓腫瘤生検で,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断され,R-CHOP療法が開始された.治療開始後,巨大な腫瘤は著明に縮小し,全6サイクル後のTTEでは27×12 mmの右房内腫瘤のみ残存していた.しかし,PET-CTでは心臓に異常集積を認めず,血液検査,他の画像検査とあわせ総合的に判断し完全寛解と診断された.TTEのみで認める右房内腫瘤が残存腫瘍もしくは瘢痕化した腫瘤かの明確な鑑別法がなく,再増大がないか外来で引き続き経過観察となった.治療終了1年2か月後のTTEで右房内の腫瘤を認めず残存腫瘍の消失と判断した.今回我々は心臓原発腫瘍の中でもまれなPCLを経験し,他の画像検査では認められなかった残存病変を疑う所見をTTEのみで検出することができた.