超音波検査技術
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48 巻, 5 号
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症例報告
  • 中釜 美乃里, 宮﨑 明信, 原田 美里, 日野出 勇次, 梅橋 功征, 渡辺 秀明, 馬場 善政, 西方 菜穂子
    2023 年 48 巻 5 号 p. 489-498
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/09/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/11
    ジャーナル 認証あり

    症例はBentall術後の50代男性.労作時の息切れやふらつきが出現し,血圧も低下傾向であったため当院を受診した.経胸壁心エコー図検査にて大動脈弁位人工弁や弁上(大動脈弁側)・弁下(左室流出路側)が不明瞭で評価困難であったが,カラードプラ法では左室流出路にモザイクシグナルを認めた.連続波ドプラ法による大動脈弁位人工弁通過血流速度(以下,人工弁通過血流速度)3.6 m/sと加速血流を認めるもドプラ波形のピークが不明瞭で再現性は得られなかった.そこで,連続波ドプラ法による僧帽弁逆流血流速度を用いて左室-左房間圧較差を推定した.僧帽弁逆流血流速度6.0 m/s, 最大圧較差144 mmHgより推定収縮期左室圧は144 mmHg+左房圧となり,検査時に上腕で測定した末梢収縮期体血圧は95 mmHgと乖離を認め,左室-大動脈間に狭窄病変の存在が示唆された.経食道心エコー図検査でも同様の結果であった.1年前と比較し,人工弁通過血流速度は上昇しており,血栓弁の可能性も否定できなかったためワーファリンの服薬量を増量したが,1か月後の経胸壁心エコー図検査でも明らかな改善を認めなかった.血栓弁は否定的となりパンヌス形成による大動脈弁位人工弁や弁上・弁下の狭窄が考えられ,息切れや血圧低下の症状も改善されなかったことから再手術の方針となった.手術にて弁下の人工血管基部逢着部フェルトに沿ってパンヌス形成を認め,弁口面積は半分ほどになっていた.人工弁を外し,可及的にパンヌスを切除した後,大動脈弁置換術(St. Jude Medical regent19, ニ葉弁)が施行された.今回,人工弁通過血流速度が不明瞭でドプラ法やBモード法での評価が困難な大動脈弁位人工弁機能不全症例を経験した.連続波ドプラ法による僧帽弁逆流血流速度を用いて左室圧,左室-大動脈間圧較差を推定することは大動脈弁位人工弁機能不全の診断に有用である.

  • 松本 力三, 西尾 進, 平田 有紀奈, 森田 沙瑛, 湯浅 麻美, 山尾 雅美, 柿本 拓海, 齋藤 裕, 楠瀬 賢也, 山田 博胤, 上 ...
    2023 年 48 巻 5 号 p. 499-508
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/09/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/11
    ジャーナル 認証あり

    症例は70代,男性.近医の定期的な血液検査で胆道系酵素の上昇を認めたため,腹部超音波検査を施行したところ,肝左葉内側区に腫瘤を認めた.当院消化器外科に紹介となり,肝内側区切除術が施行され,肝細胞癌と診断された.術後7か月,当院で経過観察目的に施行した造影CT検査で肝左葉外側区に新たに腫瘤を認め,再度精査となった.血液検査では,γ-GTPの軽度上昇を認めるのみで,腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.術前の精査目的に施行した腹部超音波検査では,肝左葉外側区(S2)に18×16 mm大の腫瘤を認めた.境界明瞭,輪郭は後面が整,前面がやや不整.内部エコーは等輝度で不均質であった.辺縁に比較的厚い低エコー帯を伴っていた.心拍動の影響で血流シグナルの評価は困難であった.腹部造影CT検査では,肝左葉外側区(S2)に2 cm大の腫瘤を認め,早期濃染および洗い出しが確認された.本症例は,術前の超音波検査で,肝細胞癌としては非典型的な像を呈していたが,他の画像所見および既往歴から肝細胞癌の再発が否定できず,肝部分切除術が施行され,肝炎症性偽腫瘍と診断された.本症例のように肝細胞癌のリスクが高い症例においても,新規に腫瘤を認めた際には,超音波検査でその特徴を注意深く観察し,典型像と異なる場合には肝炎症性偽腫瘍も鑑別疾患の一つとして考慮した方がよいと考える.

  • 山崎 正之, 溝口 和博, 田村 仁香, 原口 律香, 堀家 由貴, 兼田 幸希, 髙塚 慶子, 田外 大輝, 馬渡 未来, 藤田 淳子, ...
    2023 年 48 巻 5 号 p. 509-514
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/09/27
    [早期公開] 公開日: 2023/08/11
    ジャーナル 認証あり

    症例は60代の女性.左下腿腫脹が3か月前から出現し,徐々に増悪したため近医を受診した.近医で施行された下肢静脈超音波検査では深部静脈血栓症は否定され,精査目的で当院に紹介された.血液生化学検査では凝固能異常は認めなかったが,CT検査で左総大腿静脈に接する腫瘤あるいは限局性病変を疑う像が観察され,静脈還流障害の原因となる可能性が指摘された.当院での下肢静脈超音波検査においても明らかな血栓像は認めなかったが,左総大腿静脈に23×13×6 mm大の腫瘤性病変像が確認された.腫瘤内部は大部分が無エコーで隔壁様構造物を認め,探触子の圧迫により腫瘤の変形はなく,積極的に血栓は疑わなかった.MRI検査では,左総大腿静脈にT2強調像で高信号,T1強調像で低信号の多房性囊胞構造が認められ,リンパ管奇形や外膜囊腫などの良性病変が疑われた.以上より,左総大腿静脈外膜囊腫による静脈狭窄と診断され,心臓血管外科で摘出術を施行.摘出標本では,静脈の外膜に多房性囊胞の形成を認め,外膜囊腫と診断された.外膜囊腫は比較的まれな疾患であり膝窩動脈外膜囊腫などが知られるが,静脈での外膜囊腫はさらに稀であり,外膜囊腫全体の5%程度であるとされている.今回我々は,左下肢腫脹の原因検索に超音波検査が有用であった症例を経験したので報告する.

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