超音波検査技術
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48 巻, 4 号
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学術研究助成論文-原著
  • 齊藤 央, 豊島 勝昭, 池田 さやか, 芝田 梨恵, 白木 沙紀, 雪吉 祥恵, 小野 晋, 柳 貞光, 上田 秀明
    2023 年 48 巻 4 号 p. 371-383
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/11
    [早期公開] 公開日: 2023/06/15
    ジャーナル 認証あり

    目的:Fontan手術後における房室弁逆流は重要な予後規定因子である.しかし房室弁逆流の発生機序は不明確である.本研究の目的は,Fontan手術後における房室弁逆流と房室弁輪形態の関連性を評価することである.

    対象と方法:経胸壁心エコー図検査で房室弁の三次元ボリュームデータを取得できた102例のFontan手術後患者を後向きに評価した.房室弁輪指標として,弁輪面積,弁輪の高さ,bending angleを三次元的に計測した.房室弁形態を共通房室弁,単一三尖弁,単一僧帽弁,二弁口房室弁の三尖弁,二弁口房室弁の僧帽弁に分類し,その5群で房室弁輪指標を比較した.またvena contracta幅で評価した逆流の重症度と房室弁輪指標との関連性を評価した.

    結果と考察:対象102例の内,共通房室弁は33例,単一三尖弁は22例,単一僧帽弁は32例,二弁口房室弁は15例であった.共通房室弁および単一三尖弁では,他の房室弁形態と比較して,弁輪面積およびbending angleが大きく,弁輪の高さが低かった.中等度以上の房室弁逆流を認めた症例は共通房室弁および単一三尖弁で頻度が多かった.共通房室弁および単一三尖弁において,逆流の重症度は弁輪面積と機能的単心室サイズと相関していた.また弁輪面積は機能的単心室サイズで調整後も逆流の重症度と関連していた.

    結論:Fontan手術後患者では共通房室弁および単一三尖弁を有する症例において有意に中等度以上の逆流の頻度が高かった.その逆流発生の機序として,弁輪面積や機能的単心室サイズが重要な因子であることが示唆された.

学術研究助成論文-研究
  • 村山 迪史, 加賀 早苗, 小野田 愛梨, 岡田 一範, 中鉢 雅大, 横山 しのぶ, 西野 久雄, 青柳 裕之, 玉置 陽生, 本居 昂, ...
    2023 年 48 巻 4 号 p. 384-397
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/11
    [早期公開] 公開日: 2023/06/15
    ジャーナル 認証あり

    目的:アメリカ心エコー図学会のガイドラインには,下大静脈計測に基づく右房圧推定の精度を補完するものとして,拘束型の右室流入血流速波形,拡張早期の右室流入血流速度と三尖弁輪運動速度との比,肝静脈血流速波形のsystolic filling fractionが示されている.本研究では,これらの副次的指標が右房圧上昇の予測能を改善させるかを明らかにするとともに,右房面積計測の付加的価値を検討する.

    対象と方法:心疾患患者128例において右心カテーテル検査で平均右房圧を計測し,≧8 mmHgを上昇とした.下大静脈の径とsniffによる虚脱率から,推定右房圧を3, 8,15 mmHgに分類した(モデル1).右室流入血流速波形の拘束型パターン,拡張早期の右室流入血流速度と三尖弁輪運動速度との比,systolic filling fractionを評価に加えて,推定右房圧の再分類を行った(モデル2).右房の最小と最大面積および容積を計測し,それぞれのexpansion indexを算出した.

    結果:右房圧の上昇を29例に認めた.ロジスティック回帰分析で,モデル1における推定右房圧とsystolic filling fractionは,平均右房圧上昇と有意に関連した(ともにp<0.05).拘束型パターンを呈した例はなく,拡張早期の右室流入血流速度と三尖弁輪運動速度との比は右房圧上昇と関連しなかった.右房の形態・機能指標は,いずれも右房圧上昇と関連し(すべてp<0.05),最小右房面積が最も強く関連した(右室面積変化率で補正後のオッズ比:10.64, p<0.01).尤度比検定では,モデル2の右房圧上昇の予測能はモデル1と同等であったが,systolic filling fractionと最小右房面積を用いた新しいモデルは,モデル1より良好に右房圧上昇を予測できた.

    結論:従来の副次的指標を用いた再分類により右房圧上昇の予測能は改善しなかった.肝静脈血流速波形のsystolic filling fractionと最小右房面積を右房圧の評価に加えると,右房圧上昇の予測能は改善した.

症例報告
  • 長山 亜由美, 隈部 力, 黒松 亮子, 中野 聖士, 中村 徹, 水島 靖子, 川野 祐幸, 秋葉 純, 草野 弘宣, 大島 孝一, 中島 ...
    2023 年 48 巻 4 号 p. 398-405
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/11
    [早期公開] 公開日: 2023/06/15
    ジャーナル 認証あり

    症例は70代,男性.検診にて肝機能異常を指摘され近医を受診した.C型慢性肝炎と診断され,肝腫瘤性病変が疑われたため精査目的で当院へ紹介となった.血液検査所見ではAST, ALT, γ-GTの軽度上昇を認め,AFP, PIVKAII, CA19-9はいずれも基準値内で,CEAの軽度上昇を認めた.腹部超音波検査のBモード像では肝S4に18×13 mm大の低エコー腫瘤を認めた.カラードプラや高感度カラードプラ法では明らかな血流シグナルは認めなかった.造影CTでは動脈相で軽度の造影効果を認め平衡相ではwashoutを認めた.MRIでは拡散強調像は高信号でGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相で低信号を呈した.これらは肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma:以下HCC)として矛盾しない所見であった.Sonazoid®造影超音波検査(Contrast enhanced ultrasonography:以下CEUS)では血管相で背景肝とほぼ同等の造影効果を認め,後血管相で欠損像を呈した.CT・MRIの所見からはHCCが疑われたが,20 mm以下の結節型HCCは血管相で肝実質と同等もしくは低下して造影され,後血管相では背景肝に比して軽度低下もしくは低下することから典型的なHCCの造影パターンとは若干の矛盾があった.以上の所見から確定診断を目的に肝腫瘍生検を施行した.病理組織検査で腫瘤部は小型~中型の異型リンパ球集蔟を認め,濾胞様構造を呈し免疫染色所見も含め濾胞性悪性リンパ腫と診断された.本症例ではHCCとしては非典型的なCEUS所見を認めたことが診断の契機となった.慢性肝疾患おける多血性の小腫瘤の鑑別診断にはCT・MRIに加え感度・分解能に優れるCEUSの併用が望まれる.

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