超音波検査技術
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43 巻, 5 号
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学術賞―研究
  • 阿部 記代士, 湯田 聡, 安井 謙司, 大場 騰, 大久保 亜友美, 小林 千紘, 柳原 希美, 寺本 篤史, 名越 智, 山下 敏彦, ...
    2018 年 43 巻 5 号 p. 555-563
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    目的:術前の最大ひらめ静脈(SV)径は,人工関節置換術後の新規深部静脈血栓症(DVT)発生を予測するうえで有用か,またその閾値が術部位により差異があるか否かを検討した.

    対象および方法:2014年8月から2016年11月で人工関節置換術前,術後に下肢静脈エコー検査を施行した連続212例(平均年齢67±13歳,人工股関節全置換術(THA)157例,人工膝関節置換術(TKA)55例)を対象とした.ベッド横に下腿を下垂させてSVを観察し,左右SVの最大短軸径を計測した.

    結果:55例(26%)に新規DVTの発生を認めた.DVT群は,非DVT群に比べ,有意にSV径(p<0.01)は拡大し,高齢(p<0.05)で,女性(p<0.05)とTKA(p<0.05)は高頻度であり,術後の血栓予防薬投与(p<0.05)は低頻度であった.多変量解析では,SV径の拡大(p<0.001),術後の血栓予防薬の非投与(p<0.01)と女性(p=0.02)が新規DVT発生予測の独立規定因子であった.術部位別の検討において,DVT群のSV径は,THA(8.6±2.6 vs. 7.1±2.1 mm, p<0.01),TKA(8.5±2.7 vs. 6.7±2.0 mm, p<0.01)ともに,非DVT群に比べ有意に拡大していた.多変量解析において,THAでは術後の血栓予防薬の非投与(p<0.05)とSV径の拡大(p=0.002)が,TKAではSV径の拡大(p=0.03)が新規DVT発生予測の独立規定因子であった.ROC曲線から求めたSV径の閾値は,THAで8.5 mm, TKAで8.4 mmと差は認めなかった.

    結論:術前SV径は,人工関節置換術後の新規DVT発生予測に有用であり,その予測のための閾値は術部位で差異を認めなかった.

若手研究奨励賞―研究
  • 冨田 沙希, 種村 正, 佐々木 伸子, 由井 恵美, 堤 由美子, 片岡 容子, 渡邊 伸吾
    2018 年 43 巻 5 号 p. 564-572
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    目的:心内膜自動トレースによる自動計測法が実用化され,精度,再現性が高い方法として注目されている.しかし,装置間の差については検討されておらず,異なる装置間では左室駆出率(LVEF)に差があることが実感されるため,その精度について検討した.

    対象と方法:洞調律で描出良好な74例(58±12歳,男67例,LVEF平均52±14%,LVEF≤50% 29例)を対象とした.超音波診断装置はA社製,B社製を用いた.それぞれの装置の自動計測法を用いて,左室収縮末期および拡張末期容量(ESVおよびEDV)とLVEFを計測した.さらに,手動で補正を加えて上記指標を再計測した.また,スタンダードとして上記指標を用手法(Biplane disk summation法)で計測した.各計測法より得られた計測値を単回帰分析およびBland–Altman解析を用いて統計学的に解析した.

    結果:自動計測法で求められたESV, EDVおよびLVEFは用手法の計測値と相関関係が認められたものの,計測の系統誤差や手動補正の影響に装置間の差を認めた.A社製装置では,左室容量が増加するにつれEDV, ESVが過小評価されたが(誤差:(EDV)−11.7 ml; (ESV) −9.1 ml),EFは正確であった(誤差:1.2%).手動補正を行うと,EDV, ESVは正確になり(誤差:(EDV)2.5 ml; (ESV) 1.1 ml),EF計測に影響はなかった(誤差:0.7%).一方,B社製装置では,ESVの過小評価(誤差:−13.1%)により,EFは減少するにつれ過大評価した(誤差:7.4%).同様の手動補正を行ったとしても,誤差は解消されることはなかった(誤差:7.5%).

    結論:左室容量やEFの計測,手動補正の効果に装置間の差がある.

研究
  • 松野 寛子, 渡邉 恒夫, 中山 純里, 高田 彩永, 篠田 貢一, 野久 謙, 伊藤 弘康, 水谷 陽子, 清島 真理子
    2018 年 43 巻 5 号 p. 573-579
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    目的:超音波検査(Ultrasonography: US)は簡便で非浸襲的な検査であり,表在病変の有無や性状,サイズ,深達度について評価できることから皮膚科領域においても大変有用な検査法である.しかしながら,乳腺や甲状腺などの表在腫瘤に比べてその診断能に関する報告は少ない.本研究では,皮膚・皮下腫瘤におけるUS所見と病理組織学的所見を比較し,USの診断能について検討した.

    対象と方法:2016年1月から6月までの6か月間に,当院皮膚科外来に皮膚・皮下腫瘤を主訴に受診しUSを実施した患者のうち,病理組織結果が確認できた93例について後ろ向きに検討した.検者による主観的な良性あるいは悪性の評価に加え,日本超音波医学会の甲状腺結節超音波診断基準を基に腫瘤の性状を0~2にスコア化しReceiver Operating Characteristic curve(ROC)解析による客観的評価を行った.

    結果:病理組織結果は,良性74例,悪性19例であった.USの主観的評価による良性・悪性の判別離は,感度94.7%(18/19),特異度90.5%(67/74)であった.一方,ROC解析による客観的評価では,良性・悪性のカットオフ値が6(Area under the curve=0.739, p<0.001)のとき,感度84.2%,特異度64.9%であった.

    結論:今回の検討において,皮膚科領域におけるUSについては,画像のみによる客観的評価には限界があることが示唆された.より正確な診断をするためには,US画像のみの評価ではなく,触診や視診などの情報,組織学的特徴を理解しておく必要があると考える.

症例報告
  • 入江 里奈, 高野 真澄, 佐藤 由美子, 坂本 由佳, 加藤 剛, 高田 剛史, 柘植 俊介, 國友 隆二, 高橋 和郎, 柴 信行
    2018 年 43 巻 5 号 p. 580-585
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    今回我々は,大動脈弁狭窄症に対する精査時に偶然発見された高齢三心房心の1例を経験したので報告する.症例:70歳代男性.既往歴:前立腺癌,慢性硬膜下血腫,発作性心房細動.現病歴:近医にて心雑音を指摘され当院紹介となる.外来受診時,Erb領域に最強点をもつ収縮期駆出性雑音を聴取した.心電図は洞調律で左室肥大所見あり,胸部レントゲンにて軽度心拡大を認めた.経胸壁心エコー図検査では求心性左室肥大と下壁から後壁基部の壁運動低下を認めた.大動脈弁は三尖ともに高度石灰化を認め,大動脈弁位最高血流速4.4 m/s,左室–大動脈平均圧較差41.7 mmHg,大動脈弁弁口面積0.6 cm2(連続の式)であり,重症大動脈弁狭窄症と診断した.また,左房内に左心耳–左上肺静脈間から連続する異常隔壁を認め,三心房心と診断した.心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄なく,肺動脈楔入圧18 mmHgと軽度上昇していた.心臓MRIにて左房内に異常隔壁を認め,術中経食道心エコー図検査では直径3.2 mmの卵円孔開存を認めた.以上より,重症大動脈弁狭窄症,三心房心,発作性心房細動,卵円孔開存の診断となり,大動脈弁置換術,異常隔壁切除術,両側肺静脈隔離術および卵円孔開存閉鎖術を施行した.本症例は,真腔(固有左房)と副腔間の交通孔が大きく,卵円孔開存による短絡血流量が少なかったことから,高齢まで無症状で経過したと考えられた.

  • 診断・経過観察における超音波検査の有用性
    松元 春奈, 西浦 哲哉, 丹生谷 稔, 小田 繁樹, 内藤 愼二
    2018 年 43 巻 5 号 p. 586-592
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    症例1は70代女性.近医で血清アミラーゼ値上昇を指摘され,当院に紹介,入院となった.腹部超音波検査では膵頭部に径18×12 mmの低エコー腫瘤が認められ,膵体尾部はびまん性に腫大し,膵実質のエコー輝度は著明に低下し,実質内には高エコースポットが散在性に認められた.症例2は70代男性.1週間前より両側顎下部の腫脹を認め,精査目的のため当院紹介となった.顎下腺精査により顎下腺腫瘍が疑われ,病理検査にてIgG4関連疾患のミクリッツ病と診断された.IgG4関連疾患精査のため,腹部超音波検査を行い,膵体尾部のびまん性腫大を認め,エコー輝度の著明な低下,内部に高エコースポットの散在を認めた.症例3は50代男性.繰り返す腹部疼痛の精査目的のため当院紹介となった.膵頭部から体部にかけて軽度腫大し,膵実質のエコー輝度は著明に低下していた.また,実質内部は不均一で,高エコースポットが散在していた.

    IgG4関連自己免疫性膵炎(type I autoimmune pancreatitis: 1型AIP)は,本邦から世界に発信された疾患概念で,中高年の男性に多く,腹痛や黄疸などの症状が認められる.膵癌や胆管癌などとの鑑別が重要となるが,その診断には画像所見,血清学的所見,病理所見,膵外病変の有無など総合的な評価が必要である.超音波検査は,空間分解能に優れ,診断や経過観察に有用であるが,今回我々は超音波検査が有用であった1型AIPを経験し,それぞれの超音波検査所見を中心に若干の文献的考察を加え報告する.

  • 田中 直樹, 相澤 有香, 吉田 真理奈, 本多 飛鳥, 出野 由美子, 矢澤 信之, 小川 幸宏, 渡邊 雄介, 中村 淳
    2018 年 43 巻 5 号 p. 593-601
    発行日: 2018/10/01
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー

    症例は40代女性.2015年12月より労作時動悸,息切れ,胸痛を自覚したため近医を受診し精査目的にて当院紹介となった.心エコー図検査とCT検査で右房内に腫瘍病変を指摘.さらに精査のため経食道心エコー図検査を施行したところ心房中隔原発性心臓腫瘍が疑われた.原発巣摘出ならびに組織診断を目的として初診から8日後胸骨正中切開にて腫瘍摘出となった.術中所見は心房中隔心筋発生であり迅速組織診断で悪性と診断.切除後ウシ心膜にて再建を行った.病理所見は血管肉腫であった.術後16日目に退院し抗がん剤治療を考慮し他院へ紹介となった.術後5か月後CT検査にて肝臓への転移を認め,抗がん剤治療を開始したものの術後1年1か月後に永眠された.原発性心臓腫瘍は剖検例のわずか0.0017~0.033%で発見されるまれな疾患である.悪性腫瘍はその約25%といわれ,これらの中で血管肉腫が最も多く約30%を占めるとされる1)好発部位は右房が約70%と最多で心膜,右室,左房などの報告もある2)が心房中隔原発は本邦での報告はない.今回の経験に文献的考察を加えて報告する.

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