超音波検査技術
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48 巻, 3 号
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研究
  • 加藤 明徳, 浜田 実
    2023 年 48 巻 3 号 p. 263-271
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    [早期公開] 公開日: 2023/04/21
    ジャーナル 認証あり

    目的:大腸憩室炎例での超音波所見をGrade分類し,炎症の程度や重症度を推察できるか検討した.

    対象と方法:対象は当院にて大腸憩室炎と診断された98例.方法は,超音波所見より三つのGradeに分類し,性別,年齢,部位について検討した.次にWBC/CRPとの関係性,CT所見との一致率,治療方針についてGradeと比較検討した.

    結果と考察:分類はGrade 1から順に29例,60例,9例であった.性別,年齢,部位では有意差は認めなかった.WBCとCRPの平均値は,WBCはGrade 1から順に8,907/µL, 11,205/µL, 13,122/µL. CRPはGrade 1から順に3.2 mg/dL, 5.9 mg/dL, 11.0 mg/dLであった.有意差検定ではWBC: p=0.0001, CRP: p=0.00004と有意差を認めた.Grade 3で指摘した膿瘍形成を疑う液体貯留,後腹膜内ガス像,憩室壁の連続性の評価について,kappa係数を用いたCT所見との一致率はそれぞれ0.25, 0.55, 0.00であった.治療方針はGrade 1(外来治療24例,入院治療5例),Grade 2(28例,32例),Grade 3(0例,9例)であった.

    結語:大腸憩室炎における超音波検査所見をGrade分類することは炎症程度や重症化リスクを推察することができ有用性があると思われた.

  • 佐々木 有沙, 藤崎 純, 金子 南紀子, 来住野 雅, 高橋 奎太, 大山 貴衣, 宇都宮 誠, 中村 正人, 前谷 容
    2023 年 48 巻 3 号 p. 272-282
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    [早期公開] 公開日: 2023/04/21
    ジャーナル 認証あり

    目的:下肢動脈の血行動態的指標として有用性を報告してきたR–P時間比を足関節/上腕血圧比(Ankle Brachial Index: ABI)と比較検討した.

    対象:2019年6月~2020年12月までに下肢動脈エコーとABIを同時期に施行し,不整脈や弁膜症を伴うもの,大動脈や腸骨動脈に病変を認めた症例,計測部位で狭窄や閉塞,逆流している症例は除外した456例中,足関節部まで病変を認めなかった59例を対照群,総大腿動脈~足関節部の前脛骨動脈もしくは後脛骨動脈の間に病変を認めた397例を病変群とした.

    方法:総大腿動脈,前脛骨動脈および後脛骨動脈にてR–P時間を計測し,前脛骨動脈/総大腿動脈R–P時間比,後脛骨動脈/総大腿動脈R–P時間比を算出し,病変の存在部位別に対照群と病変群の有意差およびROC曲線下面積を求め,最適カットオフ値を算出しABIとR–P時間比で比較検討した.

    結果:全病変存在部位別にて病変群は対照群と比較し,ABIは有意に低値,R–P時間比では有意に高値を示し,負の相関を認めた.カットオフ値をABIで0.90, R–P時間比はROC曲線より算出された1.32前後とした場合,膝下および膝上+膝下の複合病変群でR–P時間比はABIより感度が高かった.

    考察:ABIは膝下病変を含む病変群に関しては,必ずしも評価したい血行路の血流を反映していない可能性が考えられるが,RPRは鼠径部から足関節部までの総大腿動脈~前脛骨動脈,総大腿動脈~後脛骨動脈それぞれの血行動態を評価することができる優れた指標であると考えられる.

    結語:下肢動脈の血行動態的評価として,膝下病変が含まれる場合,ABIよりR–P時間比は鋭敏に評価できる可能性が示唆された.

その他
  • 片山 知子, 林 重孝, 土屋 まさみ, 前田 恵里, 戸塚 愛実, 堺澤 恵子, 朴 瑞希, 成瀬 亘
    2023 年 48 巻 3 号 p. 283-290
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    [早期公開] 公開日: 2023/04/21
    ジャーナル 認証あり

    僧帽弁形成術中に経食道心エコーが有用であった2症例を経験した.

    症例1は50代,男性.腸炎での入院時心電図で陳旧性心筋梗塞が疑われ,経胸壁心エコー検査を施行した.左室駆出率59%,左室下壁は無収縮で菲薄化を呈し,僧帽弁後尖のtetheringによる僧帽弁逆流は中等度で左房後壁側に偏位していた.経食道心エコーで僧帽弁後尖は短小でtetheringにより前尖との接合不全を認めた.僧帽弁形成術を施行するも,形成後の術中経食道心エコーで基準以上の残存僧帽弁逆流を認めたため術中再形成術となった.

    症例2は70代,女性.心房細動,うっ血性心不全で紹介され,来院時に経胸壁心エコー検査を施行した.左室駆出率65%,左房は著明に拡大し,hamstringing現象により左房後壁側に偏位した重度の心房性機能性僧帽弁逆流に対し僧帽弁輪形成術が施行された.弁輪形成後の残存僧帽弁逆流の評価中に,経食道心エコーで上行大動脈にflapを疑い術野からの経大動脈壁エコーで解離を確認した.大動脈遮断部からの急性大動脈解離Stanford A型と診断し上行大動脈置換術が追加となった.

    僧帽弁形成術前の経胸壁および経食道心エコーと術中経食道心エコーを担う技師として,術前の詳細な観察と評価は重要であり,僧帽弁形成術中の経食道心エコーでは,限られた時間の中で術式の変更および追加手術へも対応できる迅速かつ正確な評価が必要となる.

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