超音波検査技術
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42 巻, 5 号
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症例報告
  • 森 貞浩, 福澤 ちえみ, 矢島 麻里絵, 町田 直子, 井上 知彦, 中川 潤一, 山本 公一
    2017 年 42 巻 5 号 p. 497-505
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代女性.主訴は上腹部痛,既往歴は子宮筋腫摘除術,関節リウマチ,慢性腎臓病,脂質異常症である.現病歴:受診当日の朝食摂取中に上腹部痛が出現し,昼になっても改善しないため正午頃来院した.触診では圧迫により上腹部痛の軽度増強を認めた.原因精査目的で腹部超音波検査(US)が施行された.USではイレウス状態であったため,腸管を追跡したところ,ループ形成を伴う収束部を同定しえた.索状物による絞扼が疑われ,パルスドプラにてループ側の浮腫性肥厚部の壁血流をFFT解析したところ,細動脈の拡張期血流の消失がみられた.静脈絞扼期と推察し,緊急手術を提案した.CTは腎機能を考慮し非造影下で施行されたものの,形態的にはUSと同様の結論に達し,手術の方針となった.しかし,当日は当院での緊急手術が対応不可能な状況であったため近医に紹介の上,同日手術施行となった.イレウス解除の際,一部腸管壊死が疑われたため小腸の部分切除が行われた.

    USによる絞扼性イレウスの術前診断は必ずしも容易でないが,絞扼部分が同定できる場合には診断的所見となりえ,確診に近づく.これまでの報告のように腸管虚血の判定は造影超音波が望まれるものの,保険適応外で施行条件は限られる.カラードプラが有用なケースも散見されるが,シグナルの有無が虚血を必ずしも反映しない.今回,FFT解析により早期の小腸絞扼状態と判断しえた症例を経験した.また,若干数の検討であるが,癒着性イレウスとヘルニア嵌頓例とも比較し,手術の要否においてもある程度層別できる可能性があり併せて報告する.

  • 久木野 津恵子, 松元 香緒里, 氏原 亜紀, 赤星 佑喜, 山門 静子, 田中 智, 上川 健太郎, 工藤 康一, 今村 治男, 神尾 多 ...
    2017 年 42 巻 5 号 p. 506-512
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー

    症例は70代女性.C型慢性肝炎で経過観察中に肝腫瘍を指摘された.腹部超音波検査で肝S4/8に18 mm大の楕円形で境界一部不明瞭,内部均一な低エコー腫瘤を認めた.腹部造影超音波検査では,血管相で早期濃染を示したがwash outはなく,後血管相では染影欠損像を示さなかった.Kupffer細胞の存在が示唆され,限局性結節性過形成を疑った.しかし,他の画像診断では肝細胞癌を否定できず,約2年間経過観察となった.その後,増大傾向を示したので,超音波ガイド下の経皮的肝腫瘍生検が施行された.その結果,中分化型肝細胞癌と診断され,肝S4/8部分切除術が施行された.病理学的には中分化型肝細胞癌であったが,門脈域が多く残存しており,CD68陽性のKupffer細胞が多数確認された.通常,中分化型肝細胞癌では,Kupffer細胞の減少を反映し,造影超音波検査の後血管相で欠損像を呈する.自験例は,豊富なKupffer細胞の存在により欠損像を呈さないまれな中分化型肝細胞癌と考えられた.

  • 西依 愛子, 高尾 壽美惠, 大久保 洋平, 倉重 康彦, 古賀 久士, 有田 武史
    2017 年 42 巻 5 号 p. 513-517
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は77歳女性.呼吸苦・吐き気を訴え肺塞栓疑いで当院に搬送された.既往歴に脳梗塞,心房細動があった.来院時経胸壁心エコー図検査では,右心系拡大があり,右室と左室下壁基部に壁運動異常を認めた.また,右冠動脈入口部に接して12×9 mmの等-高エコー腫瘤を認めた.胸部造影CTでは,バルサルバ洞から右冠動脈に陥入する低吸収域と,左心耳内に血栓と思われる低吸収域を認めた.

    右冠動脈入口部の腫瘤の鑑別疾患として腫瘍・疣贅・血栓が挙げられたが,左心耳内血栓があったため,血栓の可能性が高いと考え,血栓溶解療法施行となった.また造影CT上明らかな肺塞栓は認めなかった.経過観察時の心エコー図検査では,第10病日目に腫瘤は完全に消失し,右室と左室下壁基部の壁運動は若干改善傾向であった.後日再検した胸部造影CTでも,バルサルバ洞付近から右冠動脈に陥入する低吸収域の消失を認めた.これより,バルサルバ洞から右冠動脈に陥入する腫瘤は血栓であり,血栓塞栓症による急性心筋梗塞であると診断された.

    本症例のようにバルサルバ洞から右冠動脈に陥入する特異的な形態を呈した血栓を画像としてとらえられた症例は非常に稀であり,診断および経過観察に心エコー図が有用であったため報告する.

  • 星野 沙也加, 吉住 聖子, 岡庭 裕貴, 荒関 朋美, 岩﨑 美穂香, 小林 康之, 戸出 浩之, 山下 英治
    2017 年 42 巻 5 号 p. 518-524
    発行日: 2017/10/01
    公開日: 2017/10/27
    ジャーナル フリー

    症例は,80代女性.肺動脈弁狭窄兼閉鎖不全症および肺動脈瘤の診断で経過観察中.心エコー図検査では,主肺動脈の著明な拡張(53 mm)を認め,右室駆出血流速度は3.0 m/sと上昇していた.弁形態の詳細観察を行うため,高位肋間からアプローチし肺動脈弁(P弁)短軸像の描出を試みたところ,4枚の弁尖が観察された.各弁尖は軽度肥厚するものの,交連部の癒合なく十分に開放していた.一方,拡張期に完全に閉鎖せず,有意な肺動脈弁逆流を生じていた.右室および右房は軽度拡大し,三尖弁逆流から推定される右室収縮期圧は46 mmHgと上昇していたが,右室壁の肥厚なく壁運動も良好であった.CT検査においても同様に,主肺動脈の著明な拡張と4尖のP弁が観察され,肺動脈四尖弁(QPV)と診断された.

    先天性の半月弁数異常の中でもQPVの報告は極めてまれである.これは,QPVの多くが臨床症状に乏しいことに加え,P弁が高位心基部に位置するため,解剖学的にP弁短軸像の描出が困難なためと考えられる.今回我々が経過観察中の症例に対し,QPVを検出し得たのは,本症例に生じた経時的な主肺動脈の拡張によりP弁が前方へと偏位し,高位肋間からアプローチすることによってプローブ直下にP弁を捉えることが可能となったためと考えられた.

    肺動脈の拡張や機能異常を認めた際には,P弁ならびに弁周囲の形態観察のため,通常の描出方法に加え,高位肋間からアプローチすることが診断精度の向上に有用である.

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