超音波検査技術
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48 巻, 2 号
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研究
  • 笹木 優賢, 石川 卓哉, 大野 栄三郎, 川嶋 啓揮
    2023 年 48 巻 2 号 p. 141-150
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/08
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル フリー

    目的:体外式超音波検査における転移性膵腫瘍の特徴的な所見について,明らかにすること.

    対象と方法:超音波検査施行後,病理組織所見で転移性膵腫瘍と診断された32例.超音波所見について全例および原発巣別に後方視的に検討を行った.

    結果と考察:描出可能であった27例から得られた超音波所見としては輪郭が整と粗造を合わせ明瞭であったものが22例(81%),腫瘤内部均一が23例(85%),腫瘤内部低輝度が18例(67%)の症例で認めた.辺縁低エコー帯,腫瘤内囊胞成分,腫瘤内血流,腫瘤内高エコースポットは半数程度で認めたが,これらは他の膵充実性病変の特徴と類似しており,これだけでは鑑別が困難と考えられる.一方,腎細胞癌転移症例(12例)に限定すると,辺縁低エコー帯を11例(92%),腫瘤内部血流シグナルを10例(83%)と高頻度で認めており,これらの所見は腎細胞癌転移症例に特徴的な所見と考えられた.

    結論:転移性膵腫瘍全例での検討では原発巣が様々で,症例数も少なく,特異的な所見の特定は困難であった.しかし,腎細胞癌転移例では辺縁低エコー帯と腫瘤内血流シグナルが高頻度で認められ,特徴的な所見と考えられた.

症例報告
  • 小池 よう子, 高野 夕子, 藤江 朋子, 伊藤 八千代, 萩原 千秋, 望月 純二, 二階堂 暁, 橋本 克史, 幡 芳樹
    2023 年 48 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/08
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル フリー

    症例は70代男性,他院で高脂血症,高尿酸血症に対し経過観察中であったが,労作時の息切れを主訴に当院受診となった.来院時経胸壁心エコー図検査において,右心系の拡大やMcConnell’s signなど肺塞栓症を疑う所見は明らかではなかったが,右房内のキアリ網に付着した可動性を有する血栓を認めた.同日施行した造影CT検査で,両側の肺血栓塞栓症および下肢深部静脈血栓症の診断に至り,即日入院加療となった.入院5日目の経胸壁心エコー図検査で,右房内血栓の消失を確認し,入院7日目には経過良好で退院となった.

    今回,下肢深部静脈血栓症を契機に肺血栓塞栓症を発症し,右房内のキアリ網に血栓が捕捉されたことで重症化を防いだと考えられる症例を経験した.文献学的考察を含め,報告する.

  • 齊藤 由衣香, 西田 睦, 岩井 孝仁, 表原 里実, 菊池 桃佳, 坂野 稜典, 工藤 悠輔, 加藤 扶美, 押野 智博, 高橋 將人, ...
    2023 年 48 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/08
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル フリー

    症例は60代女性.主訴は右乳房腫瘤の自覚.関節リウマチに対し4年前の11月よりメトトレキサート,3年前の3月よりウパダシチニブを内服継続していた.202X年8月主訴に対し超音波検査施行.右A区域皮下に22×17×12 mmの部分的に境界不明瞭な楕円形の腫瘤を認めた.辺縁は極低エコーで内部の大部分は高エコー,カラードプラ法で辺縁の極低エコー部分に点状の血流信号を認めた.乳腺外であり脂肪壊死を鑑別とした.2か月後24×19×14 mmと軽度増大,辺縁の極低エコー部分の範囲も増大し,極低エコー部分の血流信号は明らかに増加した.造影超音波検査では動脈相で辺縁に豊富な造影効果を認め,中心部の高エコー部分の造影効果は不良.静脈相で辺縁の造影効果は減弱した.孤立乳腺組織に発生し中心部が壊死した浸潤癌や粘液癌,脂肪壊死に感染を伴った病変,または内服歴から関節リウマチ治療中に発生するリンパ増殖性疾患を鑑別とした.MRIでは右A区域皮下に楕円形腫瘤を認めた.拡散強調像で辺縁は高信号,拡散係数は低値.造影早期から辺縁は濃染,中心部の造影効果はみられず一部にwash outを認めた.針生検ではリンパ増殖性疾患として矛盾せず,リンパ腫様肉芽腫症を疑う病理組織所見であった.メトトレキサート,ウパダシチニブ休薬後に病変は著明に縮小した.我々が検索した範囲で乳房皮下に発症した関節リウマチ治療中に発生するリンパ増殖性疾患に対し造影超音波検査を施行した報告はなく,初めての症例であると考える.関節リウマチで免疫抑制薬投与例における軟部組織の不均一な低エコー腫瘤は,リンパ増殖性疾患の可能性を考慮して精査を進める必要がある.

  • 森下 真由美, 阿部 幸雄, 松村 嘉起, 渡辺 理瑠, 福田 夏未, 蛭子 知香, 森田 智宏, 奥村 真弓, 榊原 弘光, 松下 容子, ...
    2023 年 48 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/08
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル フリー

    当院において20年間で5例の心臓悪性リンパ腫を経験した.全例がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma: DLBCL)であった.発見の契機は全例で胸部CT検査であり,孤立性の心臓腫瘍は2例であった.腫瘍の存在部位は心室中隔が1例,4例は右房自由壁側で,そのうち1例では右房から右室にわたる自由壁側に存在し,三尖弁輪後尖を巻き込むように認められた.心臓悪性リンパ腫の診断は,右篩骨洞腫瘍の生検で診断された1例を除いて,2例は経胸壁心エコー図(transthoracic echocardiography: TTE)ガイド下生検,1例は心腔内エコー図(intracardiac echocardiography: ICE)ガイド下生検,1例ではTTEやICE下で腫瘤を採取できなかったため開胸生検にて診断された.全例において化学療法によって心臓腫瘍が縮小する過程をTTEで観察することができ,4例は7か月から5年8か月(平均2年10か月)で死亡したが,1例では10年経過した時点で生存している.心臓悪性リンパ腫は化学療法で著明に縮小して長期の生命予後が望めることもあり,その発見および治療後の経過観察にTTEが有用であると思われる.また,治療を開始するための確定診断には腫瘤生検が必要であり,そのガイドにTTEやICEが有用である.

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