目的:超音波診断用造影剤Sonazoid®のペルフルブタンマイクロバブル(Perflubutane; PFB)は,圧力を加えることで容易に減少することが知られている.本研究では,PFBが造影効果を維持できる許容圧力を定量的に検討し,PFBの数・サイズを評価することで,造影剤投与時の明確な基準の確立を目的とする.
対象と方法:PFBを充填したシリンジをシリンジポンプに接続し,一定の速度で作動させることで500–1,000 mmHgの加圧を行った.加圧をしていないものをControlとして,加圧の差異による残存PFB数量・サイズを評価した.さらに,疑似ファントムを作製し,加圧後のPFB使用による造影効果を検討した.
結果と考察:Controlと比較し,500–800 mmHgで加圧することで20%程度のPFBが減少した.900 mmHg以上の加圧では減少率が約60%であり,特に造影効果に重要な役割を示す2–3 µmのサイズのPFB数が減少した.加えて,900 mmHg以上の加圧では疑似ファントムの造影剤投与部で低エコー領域を認めた.
結論:PFBは,加圧に比例して減少するわけではなく900 mmHg以上の加圧で有意に減少し,特に造影超音波検査に重要な役割を果たす2–3 µmのサイズのPFBが失われることで,造影効果が低下することを示した.
目的:若年健常者における拡張期左室内渦流の特徴をvector flow mapping(VFM)を用いて検討した.
対象と方法:健常成人28人(男性16人,平均年齢22±1歳)を対象とし,心尖部左室長軸像にてVFM解析用画像を記録した.渦流の定性および定量はCirculation(m2/s)を用いた.拡張期を早期,中期,心房収縮期に分け,左室内渦流の出現部位と出現率を観察し,Circulationと心エコー図検査の各計測値との関連を検討した.
結果と考察:拡張期における渦流は,拡張早期の僧帽弁前尖側で28人,後尖側で23人,拡張中期では左室中央に一つの渦流が19人に認められ,心房収縮期の前尖側に19人,後尖側で1人のみに検出された.拡張早期のCirculationは前尖側が後尖側に比べ有意に高値であった(p<0.001).また,拡張早期前尖側のCirculationはE波速度,E/A, e′と,後尖側はE波速度,E/A, e′と有意な相関を示した.一方,拡張中期および心房収縮期前尖側はいずれの項目とも有意な相関を認めなかった.若年健常者において拡張期左室内渦流の出現率は時相によって異なり,拡張早期の渦強度は左室弛緩能と関連していた.
結論:VFMで可視化した若年健常者の拡張期左室内渦流は特徴的であり,新たな左室弛緩能評価に応用できる可能性が示唆された.
好酸球性胃腸炎はまれな疾患である.本疾患は発症年齢が幼児から成人までさまざまである.また,多くの症例では粘膜・粘膜下層の肥厚が主となるが,発生部位も全消化管が対象となるため超音波検査では診断が難しいと思われる.
患者は6歳未満幼児女性.腹痛,下痢,血便で当院入院.超音波検査で下行結腸から直腸にかけて粘膜下層を中心とする壁肥厚を認め,増悪時には潰瘍を疑う壁内のstrong echoを認めた.血中好酸球の増加,便中好酸球の出現,血清IgEの増加を認めたため,好酸球性胃腸炎疑いでプレドニゾロン(PSL)の投与を開始した.その後確定診断のため他院で下部内視鏡を行い,採取された組織から好酸球性胃腸炎と診断された.超音波検査は小児腹痛患者には被曝線量の観点からもファーストスクリーニングにおいては重要な位置づけとなる.決して確定診断には至らないが本疾患を疑う場合には好酸球の値に注意しながら経過を追うことが超音波検査の重要な役割と考える.