超音波検査技術
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47 巻, 6 号
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症例報告
  • 斧研 洋幸, 岡村 隆徳, 久保木 想太, 島田 直樹, 山﨑 哲, 藤川 あつ子
    2022 年 47 巻 6 号 p. 575-583
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/11/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    患者は40代,女性.近医にて施行した超音波検査(以下US)で肝腫瘍を指摘され,当院紹介受診.USで肝S3に約23×22 mmの腫瘍を認めた.類円形,境界比較的明瞭,輪郭整で明らかな被膜を疑う所見は認めず,内部は高エコーと等エコーが混在していた.血流信号は腫瘍内部に拍動性血流が僅かに観察された.8年の経過で腫瘍は緩徐に増大し,約41×40 mmとなった.経過および画像所見より肝細胞癌(以下HCC)の否定が困難であった.造影ソナゾイドUS動脈相で早期濃染,門脈相以降で洗い出し,後血管相で不完全な欠損を認め,HCCを疑った.ダイナミック造影CTの動脈相で早期強濃染,門脈相以降で洗い出しを認め,HCCを疑った.MRI拡散強調像で拡散低下,ADCmapは低信号,EOBで造影欠損を認め,HCCを疑った.FDG-PETで肝腫瘍以外の領域に異常集積は認められなかった.患者の諸事情で8年の経過となっていたが,生検で肝原発神経内分泌腫瘍(以下PHNET)と診断され,手術が施行された.診断はPHNET(G2)であった.PHNETはまれな腫瘍であり,鑑別困難となる場合が多い.自験例は長期経過から発育速度が非常に緩徐な腫瘍であった.また,サイズは増大したが内部エコーに関しては著変なくPHNETの特徴的所見の可能性があり,鑑別の一助になる可能性がある.

  • 森本 泰子, 清水 さおり, 本田 純子, 成瀬 桂史
    2022 年 47 巻 6 号 p. 584-589
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/11/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    患者は20代女性,妊婦検診を当院で行っていた.妊娠18週時に,右乳房CD区域に5 cm程度の腫瘤を自覚した.初回乳腺超音波(Ultrasonography: US)では右乳房CD区域の硬結部に一致して低エコー域を認めたが明らかな悪性所見は認めず経過観察となった.3か月後,妊娠30週に再度超音波検査を施行し乳管拡張と境界明瞭な類円形の低エコー腫瘤の集簇,腫瘤内部に豊富な血流シグナルを認め,非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ: DCIS)の可能性が疑われた.精査目的に穿刺吸引細胞診が施行され線維腺腫や葉状腫瘍が疑われ確定診断目的に吸引式針生検が施行された.病理組織診断の結果は肉芽腫病変が主体であり腺房も保たれていることから猫ひっかき病による腫瘤形成と診断された.乳腺内に低エコー域が出現した場合,非浸潤性乳管癌が疑われるが,今回猫ひっかき病による乳腺内に肉芽腫形成を呈する腫瘤性病変を認めた症例を経験したので報告する.

  • 山口 夏美, 西尾 進, 門田 宗之, 森田 沙瑛, 湯浅 麻美, 松本 力三, 平田 有紀奈, 山尾 雅美, 楠瀬 賢也, 山田 博胤, ...
    2022 年 47 巻 6 号 p. 590-596
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/11/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    症例は,60代女性.幼少期に心雑音を指摘され,21歳時に当院で膜様部型心室中隔欠損症と診断されていたが,その後は医療機関を受診していなかった.今回,発熱および咳嗽を主訴に近医を受診し,血液検査で細菌感染が疑われ,抗生剤が処方された.心拡大とNT-proBNPが高値であったことから精査のため前医を紹介受診したところ,経胸壁心エコー図検査で肺動脈弁に長径30 mm程度の可動性を有する心筋と等輝度の異常構造物を認め,重症の肺動脈弁逆流を呈していた.感染性心内膜炎の診断で同日に前医に入院し,抗生剤が開始された.その後,外科的治療検討のため当院へ紹介となった.同日施行された経胸壁心エコー図検査では肺動脈弁に付着する巨大な疣腫と重症の肺動脈弁逆流を認めた.また,心室中隔膜様部に既知の心室中隔欠損を認めた.さらに右室内に異常筋束を認め,右室二腔症と診断された.前医の血液培養からStaphylococcus warneriが検出された.血行動態は安定しており,明らかな塞栓症は起こしていなかったため抗生剤による加療が優先された.その後,待機的に肺動脈弁置換術,心室中隔欠損閉鎖術,右室流出路心筋切除術が施行された.右心系の感染性心内膜炎の割合は感染性心内膜炎全体の5~10%程度とされており,左心系に比べ少ない.今回,先天性心疾患に合併した肺動脈弁位感染性心内膜炎の1例を経験したので報告する.

  • 瀬良 章, 松谷 勇人, 鈴木 眞子, 坂井 優, 竹原 真帆, 馬場 萌, 桑野 和代, 松下 陽子, 嶋田 昌司
    2022 年 47 巻 6 号 p. 597-602
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/11/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー

    症例は80代女性.前医で左房内腫瘤を指摘され,心臓腫瘤摘出術目的で当院に紹介受診された.初診時の経胸壁心臓超音波検査(TTE)で左房の心房中隔側に23×11 mmの比較的広基性で可動性に乏しい腫瘤を認め,左房粘液腫が疑われた.同月に左房内腫瘤摘出術が施行され,腫瘤は病理診断で粘液腫と診断された.経過良好のため術後21日目で退院となった.術後4か月のTTEで,右房の自由壁側に25×15 mmのなだらかに隆起する可動性のない腫瘤を認めた.腫瘤は無茎性で,表面は高輝度,内部のエコー性状は不均一,カラードプラ法でわずかに血流信号を認めた.造影CTとMRIでも,同部位に腫瘤病変を認め,右房腫瘤の大きさは28×16×52 mm,右房自由壁から背側に広がる形態であった.腫瘤の位置は左房粘液腫摘出術の右房切開痕に相当する部位であり,右房壁内または心囊内の血腫が最も疑われた.血行動態への影響は認めず,外来で経過観察の方針となった.腫瘤は術後6か月目のTTEで14×10 mm,術後11か月目のTTEで10×6 mmと徐々に退縮傾向であり,TTEによる腫瘤の経時的な変化からも心房壁内血腫と考えられた.左房粘液腫摘出術後に右房腫瘤を認めた1例を経験した.心臓腫瘤の鑑別は治療方針に大きく影響するため,形態,大きさ,内部の性状の経時的な変化を追うことが重要であり,非侵襲的なTTEは腫瘤病変の経時的変化の評価に有用であった.

  • 水元 綾香, 柳 善樹, 出村 豊, 城 好人, 橋本 修治, 天野 雅史
    2022 年 47 巻 6 号 p. 603-610
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/11/22
    [早期公開] 公開日: 2022/10/13
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は20代女性.数年前に下腿浮腫で近医受診し下肢深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症,精査で抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断された.抗凝固療法を開始し軽快するも,再度肺高血圧症増悪し当院へ紹介となった.肺動脈血栓内膜摘除術,バルーン肺動脈形成術を行い,抗凝固療法は継続で退院,今回1年後の検査入院となった.経胸壁心エコー図検査で肺高血圧症はなく,右室拡大や壁運動異常も認めなかった.右室中部の肉柱発達部位に12×14 mmの球状の腫瘤を認め,辺縁は比較的整,心筋組織と比較して等輝度で軽度可動性を有した.APSは血栓形成し易いため血栓を疑ったが,抗凝固療法下で右室に構造的異常もないため,腫瘍も否定できず他の画像検査を施行した.経食道心エコー図検査では腫瘤は肉柱部に広基性に付着し,MRI,造影CT検査でも腫瘍は否定的で,血栓を疑い抗凝固療法を強化した.経過の経胸壁心エコー図検査では腫瘤は縮小し,1年後には消失した.APSは抗リン脂質抗体により血液凝固能が亢進し,動・静脈血栓症を繰り返す疾患である.本例は,右室の構造的・機能的異常がなく,適切な抗凝固療法下で右室内血栓を認めた.APSのような血液凝固能が亢進する疾患では,より注意深く心腔内を観察し,特に複雑な形態の右室では多断面からの観察が重要である.今回,右室内血栓を認めたAPSの1例を経験し,その検出,経過観察に心エコー図検査が有用であった.

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