釜房湖から単離された、検鏡では判別のつかない9株のPhormidium tenue (P. tenue)につい
て16S-rDNA塩基配列に基づく分類を試みた。塩基配列の相同性及び系統樹の作成結果から、P. tenue
は3つのグループに大別できた。第Iグループは名古屋城のお堀から単離された株と同じグループに分
類された藍色で2—メチルイソボルネオール(2-MIB)産生の3株であり、第Ⅱグループは釜房湖のみ
でしか単離されていない冬季発生株を含む藍色で2-MIB産生の3株であり、第Ⅲグループは琵琶湖で
単離された株と同じグループに分類された褐色で2-MIB非産生の2株であった。残りの1株はどのグ
ループにも該当しない藍色の2-MIB非産生株であり、これはPhormidium sp. であると分類された。16S
-rDNA塩基配列に基づく分類結果はこれまで環境変化や突然変異によって藍色から褐色に変化したり、
2-MIB産生株が非産生株に変化したり、夏季に発臭する株が冬季の発臭にも関係するとされた考察を
否定する結果を示した。また、P. tenue のかび臭産生の有無や色の違いをよく反映した16S-rDNAに基
づく分類結果は、P. tenue の多様性を示すと同時に、形態的分類法の限界を示した。さらに、16S-rDNA
塩基配列の情報を基に、特定したP. tenueに特異的な部位を用いたドット・ハイブリダイゼーシ
ョンを行いP. tenue のみを検出することができた。
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