本論文では、従来の細菌再増殖能測定法(BRP法)を改善し、その手法を用いて栄蓑源制限に
よる細菌再増殖の抑制効果及び浄水処理工程の評価を行った。従来のBRP測定法には、植種及び除菌
方法が誤差を含みやすいものであることや、全菌数測定法に時間と労力を要するなどの欠点があった。
遠心膜分離による植種液の濃縮、フローサイトメトリーによる全菌数測定、0,2μmの膜による除菌処
理、超音波分散処理及び固定処理などにより従来の方法を改善し、確実性と汎用性を備えたBRP測定
手法を確立した。この手法を用いて細菌再増殖能を抑制するための栄蓑制限濃度を評価したところ、グ
ルコース、酢酸塩、フミン酸は1.0mgC/L、アンモニアは0.1mgN/L、亜硝酸は0,2 mgN/L、硝酸は0,5
mgN/L、そして、リン酸は5μgP/Lが制限濃度としてそれぞれ得られた。この制限濃度以下の栄養源
では細菌再増殖能の抑制が可能であった。また、得られた制限濃度に基づいて、金町浄水場の処理工程
によるBRP除去能を評価した。処理工程全体でのTOCの除去率はおおむね55%以上で、処理水の
TOC濃度は0.5-1.3mgC/Lであった。このことから、金町浄水場のBRPは有機炭素が制限になってい
ることを分かった。オゾン処理単独ではBRPが低減せず、活性炭処理と組み合わせることによって効
果が見られた。また、凝集沈澱処理においてリンが除去されるが、制限濃度である5μgP/L以下に抑
えることは難しいという結果が得られた。また、BRP法は有機物と無機物のどちらが制限になっている
試料に対しても十分に機能することが示された。
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