北関東医学
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43 巻, 1 号
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  • 田村 遵一
    1993 年 43 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    カルモデュリン (CaM) 依存性蛋白脱リン酸酵素であるカルシニューリン (CN) の, CaM結合部位の決定を試みた.マウス脳由来のCNα-subunitをコードするcDNAを鋳型として, PCR法により12種類の系統的な欠失変異DNAを作製し, 発現vector pUC18と連結して細菌内に移入し, recombinant protein (rProtein) を発現させた (ordered deletion).これにより12種類のアミノ末端, またはカルボキシル末端より, 連続的に欠失したrProteinを得た.Western blot法によりそれぞれのビオチン化CaMと, 抗CN (牛脳より純化) 抗体との結合性を検討した.さらに, CaM-Sepahrose を用いた, アフィニティークロマトグラフィーにより純化したrecombinant proteinの, 溶液中での反応性をDansyl-CaM法を用いて検討した.これらの成績より, Kincaidらが推定したCaM結合部位を含む, 64アミノ酸よりなるポリペプチドが, CaMとの結合に必要かつ充分であることが確認された.
  • 正常脳での局在と加齢および脳破壊による変化
    瓦林 毅
    1993 年 43 巻 1 号 p. 11-26
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    アミロイドβ蛋白前駆体 (APP) の各部位に対する抗体を作成し, 正常マウスおよびラット神経系におけるAPPの分布を免疫細胞化学的に検討した.さらに加齢およびカイニン酸破壊によるAPPの変化をラット脳で検討した.APPは正常の中枢神経系および末梢神経系でほとんどすべての神経細胞および一部の神経膠細胞に局在した.加齢により, APP陽性の腫大神経突起が主に大脳白質の長索線維に広範に出現した.破壊モデルの検討では, 3時間後から刺入部周囲脳組織にAPP陽性腫大神経突起が出現し, 6時間後から刺入部周辺の大脳皮質神経細胞でKunitz型蛋白分解酵素阻害剤挿入部 (KPI domain) をもたないAPPの免疫反応が充進し, 3日後から反応性星形膠細胞でKPI domainを有するAPPの発現を認めた.APPは神経系で広汎に神経細胞や神経膠細胞によって産生され, 脳の加齢や障害によって, その局在を変化させる蛋白であることが示された.
  • 滝野 豊
    1993 年 43 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    糖尿病妊婦の合併症として, その新生児に心筋症の発生することが知られている.著者は, ストレプトゾトシンによる糖尿病ラットを妊娠させ, その新生仔ラットの心形態の変化と自然経過を観察した.また, その成因として高インスリン血症の役割を明らかにするため, ラットにインスリンを投与し, 高インスリン血症を持続させた際の心の形態変化を検討した.糖尿病妊娠ラットの仔ラット心は非対称性中隔肥大を呈したが, この肥大は4週後には消失した.一方, 正常ラットにインスリンを負荷すると全周性の対称性心肥大が生じた.電顕観察では, 糖尿病妊娠ラットの仔ラットの心の介在板は正常仔ラット心に比し未熟な結合形態である側側結合や端側結合を示すものが多く観察された.以上の結果から, 糖尿病妊娠ラットの仔ラット心は成熟過程にある胎児心にインスリンあるいはカテコラミンが作用して可逆的な非対称性中隔肥大を来したものであろうと推定した.
  • 臨床成績と flare up予防法について
    中沢 康夫, 今井 強一
    1993 年 43 巻 1 号 p. 39-54
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ポリDL乳酸を用いて徐放化したluteinizing hormone-releasing hormone agonist (LH-RHA) 製剤の前立腺癌治療に対する有用性と, LH-RHA製剤に特徴的な副作用であるflare up予防法について検討した.未治療前立腺癌症例105例に徐放性LH-RHA製剤による治療を行った結果, 近接効果, 長期予後ともに従来の内分泌療法に匹敵し, 副作用は軽微で投与中断を必要としたのは1例のみであった.Flare upは4例に認められた.Flare up予防法としてはLH-RHA投与前後における短期diethylstilbestrol diphosphate (DES-P) (5例) およびchlormadinone acetate (CMA) (4例) の併用療法を検討した. 両群ともflare upはみられなかったが, CMA併用群ではLH-RHA投与後に1例で一過性の血清prostatic acid phosphatase上昇が認められた.テストステロンサージは両群とも抑制されたが, DES-P併用群でより顕著であり, また血清テストステロン濃度の去勢レベルへの低下はDES-P併用群が最も早かった.以上より短期DES-P併用療法はLH-RHAの欠点であるflare upと治療効果発現の遅れを克服する方法であると考えられた.
  • 石本 一也
    1993 年 43 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ラット顆粒膜培養細胞においてactivinは単独でinhibin分泌を促進した (control17.2±4.4ng/mlに対してactivin500ng/ml添加時81.2±5.06ng/ml, P<0.01).ラットFSH (FSH) も単独でinhibin分泌を促進したが, FSH500ng/ml添加時のinhibin濃度は36.8±16.5ng/ml (P<0.05) で, activin添加時に比較して分泌促進作用は弱かった.さらに, このinhibin分泌促進作用はactivinとFSHの同時添加によって相乗的に促進された.inhibin分泌の最大濃度は, FSH30ng/ml, activin100ng/ml同時添加時の261.5±40.3ng/ml (P<0.01) とFSH300ng/ml, activin31.3ng/ml同時添加時の329.8±49.5ng/ml (P<0.01) であった.hCGとactivinの同時添加ではactivinの単独投与時と比較して有意な変化は認められなかった.activinとFSHによって増強されたinhibin分泌はEGF添加により抑制された.activinにより分泌促進されたinhibinは下垂体培養細胞に対して明かな生物活性を持つ事が証明された.
  • 大和田 進, 中村 正治, 棚橋 美文, 川島 吉之, 綿貫 文夫, 竹吉 泉, 宮本 幸男, 森下 靖雄
    1993 年 43 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    著者らは, 膵頭十二指腸切除後の消化管再建法として, 術後の消化吸収などを考慮し今永法 (Billroth I) を行なっている.今永法は食物の通過が生理的である反面, 縫合不全や膵液瘻は消化液が活性化されるためより重篤な合併症の危険がある.そこで, 著者らは膵管拡張のない柔らかい膵臓にも膵管空腸吻合が行える工夫をし, 良好な結果を得たので, その手術手技と成績について述べる.
    その要点はatraumatic needle吸収性Polyglyconateによる膵管膵実質と空腸粘膜の連続縫合 (膵管空腸粘膜吻合) と非吸収性モノフィラメント糸による膵実質と空腸漿膜筋層の結節縫合 (膵空腸漿膜筋層吻合) の2列縫合, 及び膵空腸漿膜筋層吻合部のフィブリン糊接着縫合と細目の膵管チューブによる膵液の不完全体外誘導である.
    6例の膵頭十二指腸切除後の今永法再建に, この膵管空腸吻合を行った.膵管径2.0mm以下の2例を含め膵液瘻の合併を1例も経験せず, 有効な膵管空腸吻合法であると考える.
  • 田村 雄次, 本間 学
    1993 年 43 巻 1 号 p. 69-87
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    組織学的および免疫組織学的に再検索の可能であった75剖検例を用いて, 終末期非ホジキンリンパ腫の病態を, 死亡原因を中心に検討した.症例は, Bリンパ腫47例63%, Tリンパ腫28例37%で, 明らかな成人T細胞性白血病/リンパ腫はみとめなかった.腫瘍死は38例51%にみられた.いずれも形態の比較的保たれた腫瘍細胞の残存が著しく, とくに心臓, 肺, 脳等重要臓器への浸潤が死因に強くかかわっていた.非腫瘍死は37例49%にみられた.頻度順に感染症26, 間質性肺炎6, 薬剤性心筋障害2, 出血傾向2, 不明1例であった.感染症は, 起炎菌からみると真菌, 細菌, ウィルス, 結核菌の順にみられ, 多くは日和見感染症であった.間質性肺炎は, 新旧の病変がみられたが, 特に急性型では, 感染の関与が強く疑われた例が多かった.今後, 非ホジキンリンパ腫に対しては, 宿主の条件をふまえたより強力な治療法の開発とともに, 種々の合併症の出現を予測した支持療法の重要性が示された.
  • COBE2991血球処理装置による骨髄造血幹細胞分離
    設楽 利二, 由上 伸一郎, 外松 学, 井嶋 裕子, 岡田 恭典, 渡部 登志雄, 黒梅 恭芳, 藤井 佐司
    1993 年 43 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    ABO式血液型不適合移植に際し, blood cell processorを用いて, 採取骨髄液より骨髄造血幹細胞を分離し移植を行った.症例は12歳, 男児, AMMoLの再発例である.Major ABO不適合のある13歳の姉から骨髄移植を施行. COBE2991血球処理装置を使用し, 赤血球除去濃縮骨髄幹細胞層を得た.さらにFicoll-Conray液を除去するために骨髄細胞の洗浄を行い患者に輸注した.処理後の骨髄細胞のコロニー形成能は処理前と同等であり十分な量の造血幹細胞が回収されていた.移植後26日で生着を確認し, 移植後約8週後まで患児本人と同じB型のCMV陰性白血球除去洗浄赤血球輸血を行ったが, その後は特に貧血も進行せず経過良好である.循環血液量の少ない小児においては赤血球除去法は血漿交換や免疫吸着法などよりも遙かに安全な方法と思われる.
  • 根本 雅明, 小暮 公孝, 石崎 政利, 鈴木 一也, 笹本 肇, 大沢 清孝, 内田 信之
    1993 年 43 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    54歳, 女性の胆嚢腺筋腫症の1切除例を報告した.肝機能異常と高血圧を主訴に来院し超音波診断で胆嚢底部に腫瘤を発見された.胆嚢腺筋腫症と疑われたが癌の合併を否定できないためリンパ節郭清 (R2) と肝床切除を含む胆嚢摘出術を行なった.胆嚢底部に限局する硬い腫瘍で肝への浸潤はなく, 割面では小さい嚢胞が散在していた.組織学的にはRokitansky Ashoff Sinusの過形成, 増殖を主体とし筋層の肥厚を伴った胆嚢腺筋腫症と診断されたが癌の合併は認められなかった.胆嚢腺筋腫症には1 generalized (diffuse) type, 2 segmental (annular) type, 3 localized (fundal) typeの3型が認められているが自験例はlocalized (fundal) typeに属するものであった.術後, 2年, 健在で社会復帰している.胆嚢腺筋腫症に関し若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 心タンポナーデに対する緊急手術例
    村上 淳, 石川 進, 高橋 徹, 大滝 章男, 坂田 一宏, 大谷 嘉己, 市川 秀昭, 相崎 雅弘, 佐藤 泰史, 森下 靖雄
    1993 年 43 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は腹部大動脈瘤の手術を目的に入院した79歳の男性で, 心電図上2枝ブロックを認めたため, 手術に備えて経静脈性カテーテル電極を留置した.留置30分後に右室穿孔による心タンポナーデを生じた.心嚢穿刺で一時的に血圧は上昇したが, 再度血圧の低下をみたため開胸手術を行ない救命した.ペースメーカーのカテーテル電極挿入直後の心室穿孔は稀であり, 術中所見より右室心尖部組織の脆弱性に起因したと思われた.心タンポナーデに対する早期診断と早急な処置の重要性を強調したい.
  • 杉原 志朗, 小川 晃, 清水 幸夫, 本間 学, 中里 洋一
    1993 年 43 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 1993/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    悪性胸膜中皮腫は稀な腫瘍で, 診断も困難で, 特にび漫性の症例は予後が悪い.生前の胸水細胞診で診断に苦慮した1剖検例を経験したので, 細胞学的, 病理組織学的, 免疫組織化学的, 電顕的所見を併せ報告する.
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