日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
16 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 水本 裕子, 大野木 宏, 水谷 滋利, 榎 竜嗣, 浅田 起代蔵, 杉元 康志, 加藤 郁之進
    原稿種別: 本文
    2008 年 16 巻 4 号 p. 143-148
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    ブナシメジに特有なポリテルペンHypsiziprenol A_9の抗腫瘍作用を解明するためにアポトーシス誘導作用について検討した.Hypsiziprenol A_9はHL-60細胞にアポトーシスを誘導し,その増殖を濃度依存的に強く抑制した.Hypsiziprenol A_9によるHL-60細胞の増殖抑制作用はカスパーゼ阻害剤により緩和されたことから,Hypsiziprenol A_9のアポトーシス誘導はカスパーゼ依存的であることが示された.Hypsizi-prenol A_9によるHL60細胞の増殖抑制と核の断片化はcAMPの誘導体であるDBcAMPによって濃度依存的に強く抑制された.細胞内cAMPレベルを高めるForskolinとIBMXの処理によってもHypsiziprenol A_9の細胞増殖抑制作用は強く打ち消された.以上から,Hypsiziprenol A_9は細胞内cAMP経路の抑制とカスパーゼを介してHL-60細胞にアポトーシスを誘導することが解明された.
  • 高畠 幸司
    原稿種別: 本文
    2008 年 16 巻 4 号 p. 149-154
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    ヤマブシタケ菌床栽培におけるマイタケ廃菌床の培地基材としての利用性を検討した.ブナオガコあるいはナラオガコの代替材としてマイタケ廃菌床を用いたところ,代替率の増加に伴って子実体収量は増加した.100%代替したマイタケ廃菌床培地ではブナオガコあるいはナラオガコ培地に対して3-4割増加した.マイタケ廃菌床を培地基材に用いた場合の栄養材の適切な混合割合は40-50%となった.マイタケ廃菌床を15,25℃で28-56日間,35℃で14-28日間堆積処理することにより,子実体収量は新鮮なマイタケ廃菌床を用いた場合に比べて1-2割増加した.これらのことから,マイタケ廃菌床はヤマブシタケ菌床栽培の培地基材として有用であることが明らかになった.
  • 太田 千奈, 田口 貴一, 高橋 信, 大塚 一弘, 枝 克昌, 鮎沢 澄夫, 馬替 由美
    原稿種別: 本文
    2008 年 16 巻 4 号 p. 155-158
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    シイタケ菌床栽培の現場で不良症状の見られる17菌床を収集した.異常17菌床は症状ごとに大別すると「菌床表面の褐変化不良」4株,「菌床表面の白色菌糸被膜化」8株,「菌床表面隆起型異常菌糸塊」5株となった.調査にはこれら不良症状の認められた菌床から分離した17菌株及び保存している正常29菌株を合わせた46菌株を用いた.菌糸をリン酸緩衝液中で破砕したのち,PEG8000とNaClを添加してウイルス粒子を沈殿させた.得られたウイルス粒子から2本鎖RNAをフェノール抽出し,アガロースゲル電気泳動を行った.その結果46菌株のうち2菌株から2本鎖RNAが検出された.ひとつは正常菌株であり,もうひとつは「菌床表面の褐変化不良」の症状の見られる不良菌株であった.
  • 田畑 麻里子, 福田 祥子, 大杉 匡弘, 佐藤 美次, 山川 友宏, 波多野 健二, 野池 利彰, 松井 徳光
    原稿種別: 本文
    2008 年 16 巻 4 号 p. 159-163
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    担子菌で豆乳を発酵させることによって,うまみ成分に富み,高い生理活性を示す新規な機能性発酵豆乳の開発を試みた.担子菌はスエヒロタケ(Schizophyllum commune)を用いた.豆乳タンパク質の分解についてSDS-PAGEで観察したところ,培養1週間目には豆乳のタンパク質バンドは消失し,新たなバンドが現れた.遊離アミノ酸濃度を測定したところ,最も高いアミノ酸濃度を示したのは培養3週間目であったが,全遊離アミノ酸に対するうまみ系アミノ酸の割合が最も高いのは培養4週間目であった.シュウ酸,リンゴ酸,コハク酸,ピログルタミン酸などの有機酸の濃度は低く,発酵中に変化し,一定ではなかった.抗酸化活性,抗トロンビン活性はスエヒロタケで発酵させることで増加し,また発酵時間の経過とともに強くなった.
  • 本間 裕人, 代 万里子, 徳田 宏晴, 中西 載慶
    原稿種別: 本文
    2008 年 16 巻 4 号 p. 165-168
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    発生量が多く季節変動の少ない非作物草本について,担子菌の培地として使用可能性であるかを明らかにするため,13種の非作物草本を用いて作製した固体培地に,32株の担子菌を接種して菌糸体成長を調べた.その結果,イネ科のネズミムギ(Lolium multiflorum)培地では29株中10株の菌で28日後に菌糸体が100mm以上成長し,その他3種のイネ科草本においても菌糸体成長は比較的速かった.また,タモギタケ(Pleurotus cornucopiae var. citrinopileatus)やヒラタケ(P. ostreatus)等のヒラタケ科,およびマンネンタケ(Ganoderma lucidum),ヤマブシタケ(Hericium ennaceum)等のヒダナシタケ目の木材腐朽菌の菌株の生育が13種の草本の大部分で速かった.
  • 藤本 治宏, Babla Shingha BARUA, 大矢 貴大, 鈴木 彰
    原稿種別: 本文
    2008 年 16 巻 4 号 p. 169-175
    発行日: 2008/12/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    当研究室保存の多数のかびときのこにつき抗酸化活性を指標にスクリーニングを行った.寒天斜面培地培養の174種(228菌株)のかびと1種(1菌株)の酵母の酢酸エチルーメタノール抽出物と日本各地採集及び栽培の83種のきのこのメタノール抽出物の検体につき.1,1-ジフェニル-21ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性の有無を,順相と逆相のTLCでの挙動から判定したところ,かび(子嚢菌)の23種(25菌株)ときのこ(担子菌)の23種の各抽出物が明白なDPPHラジカル消去活性を示した.DPPHラジカル消去活性を示した23種(25菌株)のかび中,11種(12菌株)はEurotium属の菌であった.今回のスクリーニングでは,検体の種の数に対する明白な活性を示した種の数の比率は,きのこの場合(27.7%)の方がかびの場合(13.2%)よりも高かった.
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