北海道産
Polyporus属種(Polyporales,Basidiomycota)を形態学的,及び系統学的に検討し,日本新産種として
P. ciliatus(新称:エゾノアミスギタケ)と同定した.これらのnrLSU領域の塩基配列は中国産およびデンマーク産本種と同一で,系統樹上では,これらはと同じクレードを形成し,さらに,本種は
P. longiporusと最も近縁であった.本種の培養性状を調査した結果,
P. ciliatusは培地上に類球形~紡錘形,希に棍棒形の厚壁胞子を形成した.日本産標本に基づき新種記載された
P. saitoiの基準標本を再検討した結果,基準標本の傘肉はコルク質で,傘表面は赤褐色,また孔口は
P. ciliatusと比較して大型 [(3-) 4-5 pores/mm] であった.
P. saitoiは,従来
P. ciliatusの異名として扱われてきたが,両者は形態学的に明らかに異なっていた.
P. saitoiの基準標本からは骨格結合菌糸以外に種判別に重要な担子胞子等が確認できないこと, 新種記載以降
P. saitoiの報告例が無いことから,本種を疑問名と判断した.
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