日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
27 巻, 4 号
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  • 増野 和彦
    2019 年 27 巻 4 号 p. 122-127
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    里山地域のきのこ生産に寄与するため,多くの人々が手軽に参加できるきのこの栽培および増殖技術の確立,および栽培品種の開発を図り,以下の研究成果を得た. 1.「わりばし」および「つまようじ」に菌を培養した種菌による原木きのこ栽培の簡易接種法を考案して,クリタケについて実用性を実証し「きのこの接種法」として特許を取得した. 2.クリタケ自然集団内におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)の高い変異性を明らかにした. 3.クリタケは菌糸束や根状菌糸束を形成して土壌中の木質の基質を介してテリトリーを広げていく生態を有しており,また,これらクリタケの基礎的な知見を基に,殺菌原木栽培・培養菌床の埋設によるクリタケの自然増殖誘導技術を開発し実証した. 4.ナメコ,ヌメリスギタケ,ヤマブシタケ,クリタケ等のきのこ遺伝資源を収集し,これらを活用することで品種開発を果たした.
  • リファニー リニー, 和田 崇志, 陳 富嘉, 霜村 典宏, 山口 武視, 會見 忠則
    2019 年 27 巻 4 号 p. 128-133
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/05
    ジャーナル フリー
    ブナハリタケMycoleptodonoides aitchisoniiは食用木材腐朽性のきのこである.このきのこの一部の担子胞子分離株は,完全な子実体と真のクランプ細胞を形成できることが以前に報告された.真のクランプ細胞が観察された頻度を,ダイカリオンとモノカリオンの間で比較すると,ダイカリオンでの頻度は,モノカリオンでの頻度よりもはるかに高かった. TUFC50004株からの担子胞子分離株である二核株TUFC50004(F1)およびTUFC50004-7×TUFC50004-18(F2)からの担子胞子分離株間で交配不和合性グループを調べた.両方の交配不和合性グループは2グループに分割されたため,ブナハリタケは二極性きのこであった.さらに,減数分裂後には,交配型に関する組換え体が分離できなかっため,ブナハリタケの交配型遺伝子座はサブユニット構造を持たない単一遺伝子座である可能性が示唆された.クランプ細胞形成可能なモノカリオンの表現型とその交配型との間に遺伝的連鎖は観察されなかった.したがって,モノカリオンがクランプ細胞を形成能力は,交配型遺伝子座に連鎖していないと考えられる.
  • Sawithree PRAMOJ NA AYUDHYA, Rini RIFFIANI, 尾崎 佑磨, 音田 由紀子, 仲野 翔太, 會見 忠 ...
    2019 年 27 巻 4 号 p. 134-139
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    ショウロは食用の外生菌根菌である.菌根共生を促進する細菌がしばしば根圏から分離される.一方,ショウロ子実体から細菌が分離され,その分離細菌が宿主菌糸体の生育を促進する能力を有することを近年見出した.本研究では,ショウロ子実体から様々な細菌を分離し,ショウロ菌糸体生育に及ぼす効果について二員培養を用いて調査した.ショウロ子実体から分離した19細菌系統の内,6系統が特異的にショウロ菌糸体の生育を促進した.ブラスト検索をした結果,これらの細菌は,Paraburkholderia, Caballeronia, Janthinobacterium, Novosphingobium および Rhodobacter属に属すると推定できた.さらに,主要な3細菌系統の微細構造を走査型電子顕微鏡観察で明らかにした.以上の結果から,ショウロ子実体形成に特定の細菌系統が特異的に関与している可能性が考えられた.
  • 的崎 利規, 服部 力, 桑原 知弘, Sophon BOONLUE, 前川 二太郎, 中桐 昭, 遠藤 直樹, 早乙女 梢
    2019 年 27 巻 4 号 p. 140-147
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道産Polyporus属種(Polyporales,Basidiomycota)を形態学的,及び系統学的に検討し,日本新産種としてP. ciliatus(新称:エゾノアミスギタケ)と同定した.これらのnrLSU領域の塩基配列は中国産およびデンマーク産本種と同一で,系統樹上では,これらはと同じクレードを形成し,さらに,本種はP. longiporusと最も近縁であった.本種の培養性状を調査した結果,P. ciliatusは培地上に類球形~紡錘形,希に棍棒形の厚壁胞子を形成した.日本産標本に基づき新種記載されたP. saitoiの基準標本を再検討した結果,基準標本の傘肉はコルク質で,傘表面は赤褐色,また孔口はP. ciliatusと比較して大型 [(3-) 4-5 pores/mm] であった.P. saitoiは,従来P. ciliatusの異名として扱われてきたが,両者は形態学的に明らかに異なっていた.P. saitoiの基準標本からは骨格結合菌糸以外に種判別に重要な担子胞子等が確認できないこと, 新種記載以降P. saitoiの報告例が無いことから,本種を疑問名と判断した.
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