日本の野生きのこ食習慣に関する一般論について,民俗学者によって得られた情報を統計学的に分析した.東北日本と西南日本のそれぞれにおいて利用されるきのこの種数の分布は互いに大きく重複したが,両地域間で有意な差があった.2つの要因,利用種数および保存のために塩蔵される種数と乾燥される種数との差,を用いた散布図において両地域は互いに異なるクラスターを形成した.これらの結果から,日本の野生きのこ食習慣を分析するための,利用種数および保存方法からなる簡単なモデルを提唱した.このモデルを用いた中部日本における事例分析において,東北日本から西南日本に至る食習慣の推移が保存方法の差異によって明瞭に示された.さらに,三重県は多様なきのこを利用し保存する東北日本および収穫物を乾燥保存する西南日本の接触地帯として注目された.
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