日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
30 巻, 1 号
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  • 白坂 憲章
    2022 年 30 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    きのこに含まれる機能性成分に関する食品科学・生化学的な研究を行い,以下の成果を得た. 1. エノキタケ,マイタケ,シイタケのGABA生成に関する酵素について検討し,諸性質について明らかにした. 2. トキイロヒラタケの赤色色素タンパク質の性質を明らかにした. 3. トキイロヒラタケ,タモギタケに含まれる黄色色素が水溶性メラニン用物質であることを明らかにした. 4. 食用きのこに含まれる機能性成分としてトレハロース,シリンガ酸に着目し,その機能性を明らかにした. 5. 食用きのこ子実体のプロテアーゼを利用した高アミノ酸発酵液の調製法について明らかに
  • 金野 尚武
    2022 年 30 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    糖質加水分解酵素(Glycoside hydrolase, GH)は糖鎖分子内のグリコシド結合を加水分解する酵素群であり,セルラーゼやヘミセルラーゼといった植物多糖への分解酵素や,β-1,3/1,6-グルカナーゼやキチナーゼといった自身の細胞壁多糖への分解酵素など,きのこ類の生活環において必須の酵素群である.本総説において主に述べるシイタケでは,現在のところ15種程度のGHが同定・特性解析されているが,そのゲノム情報からは250種にも及ぶGHの存在が示唆されている.著者らは,木材分解中のペクチン分解に寄与するポリガラクツロナーゼや,子実体や菌糸の自己消化に関与するβ-1,3/1,6-グルカナーゼなどをシイタケから単離し,その特性を明らかにしてきた.これら酵素群はシイタケ菌床にも存在しており,その機能と役割を解析することは,新たなシイタケ品種の育種や,きのこ栽培の理解に繋がる.
  • 張 偉彤, 万 佳寧, 早乙女 梢, 霜村 典宏, 山口 武視, 会見 忠則
    2022 年 30 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    次世代シークエンス解析により,二極性担子菌<i>Rhizopogon reseolus</i>の交配型遺伝子および交配型関連遺伝子24個を同定した.このうち,2個のホメオドメインタンパク質遺伝子,4個のフェロモン受容体遺伝子,きのこのA交配型遺伝子座周辺に保存されている18個の遺伝子を含んでいた.24個の遺伝子は3種類のノード(組み立てたコンティグの核酸配列)にクラスタ化した. フェロモン受容体遺伝子であるRcb1とRcb2の2つはNode8230上でHox遺伝子と密接に連鎖し,A2-Rcb1とA2-hox2間の距離はわずか875 bpであった. 他の2つのRcb遺伝子(A2-Rcb3および A2-Rcb4)はNode11781に位置していた.他のきのこにおいても,A交配型遺伝子座周辺にされている6つの遺伝子は,ノード 880に見いだされた.一塩基多型解析による連鎖解析の結果,3つのノードに位置する24の遺伝子は遺伝的に連鎖しており,3つのノードは1つの染色体の塩基配列の一部を構成していることが明らかになった.我々は,A交配型遺伝子座が位置する染色体は,この二極性きのこの古代種において,A交配型遺伝子群とフェロモンおよびフェロモン受容体遺伝子群の間で組換え現象が起こった可能性があると仮定した.
  • 美藤 友博, 谷岡 由梨, 實藤 昂弥, 尾崎 佑磨, 霜村 典宏, Fumio WATANABE
    2022 年 30 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    カンゾウ茸 <i>Fistulina hepatica</i>子実体の熱水抽出物から可溶性食物繊維を調製し,その薬理活性を評価した. カンゾウ茸子実体には,約7%(乾燥ベース)の可溶性食物繊維が含まれており,高速液体クロマトグラフィーにより調製した可溶性食物繊維の分子量は12.5 ± 0.8 kDaであった.インビトロのグルコース拡散試験において 0.25%(w / v)可溶性食物繊維溶液がグルコースの拡散を約50%まで減少させた.さらに,可溶性食物繊維は高い胆汁酸結合能を有していた.これらの結果は,ヒトがカンゾウ茸の可溶性食物繊維を摂取すると血糖値の急激な上昇を防ぎ,血清コレステロール値を低下させる効果を有する可能性が示唆された.
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