日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
21 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 荒瀬 榮, 近藤 雄祐, Roxana Yanira PARADA JACO, 尾谷 浩, 上野 誠, 木原 淳一
    原稿種別: 本文
    2013 年 21 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    ハタケシメジ(Lyophyllum decastes)の廃菌床のオートクレーブ水抽出液(AWESMS)のイネいもち病に対する発病抑制効果を検討した.イネ品種コシヒカリに抽出液を前処理しておくと蒸留水やハタケシメジの未接種菌床抽出液(AWEMS)の前処理に比べて葉いもちの発生が著しく抑制された.発病の抑制効果は廃菌床抽出液の処理2日後から認められ,14日後まで持続した.AWESMSとAWEMSは共にいもち病菌の胞子発芽や付着器形成は阻害しなかった.また,葉身の一部をアルミ箔で覆ったイネ株にAWESMSを噴霧後,いもち病菌を接種し,アルミ箔で被覆していない処理部における病斑形成抑制効果がアルミ箔で被覆した非処理部にも及んでいるか否かを調査した.その結果,非処理部の病斑形成率も処理部ほどではないが,抑制された.以上のことは,AWESMSによる発病抑制は全身的誘導抵抗性によるものであり,AWESMSが新規な抵抗性誘導剤の有用な資材になることが示された.また我々の結果は,きのこ栽培後にゴミとして出てくる廃菌床の再利用法についての新しい情報になると考える.
  • 牛島 秀爾, 霜村 典宏, 前川 二太郎
    原稿種別: 本文
    2013 年 21 巻 2 号 p. 84-87
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    ヌメリツバタケモドキは日本において食用きのことして認識されている.本研究では,本種の担子胞子発芽,その後のコロニー形成と二核菌糸体の形成などの培養特性について検討した.また木粉培地で栽培した子実体の肉眼的特徴についても調査した.本きのこの担子胞子は,25℃の条件で培地上に落下後約4時間で発芽し,約22時間後には殆どの担子胞子が発芽した.異なる担子胞子由来一核菌糸体を交配したところ,5日後には接触部の菌糸の隔壁においてクランプ結合が認められ,二核化が確認できた.交配によって得られた二核菌糸体を木粉培地で30日間培養後,15℃,湿度85%の環境下に移した.その後30日以内に子実体が形成された.交配によって得られた二核菌糸体の子実体は親株を単独で培養したときよりも大型で肉質であった.これらの結果により,これまで互いに別種として取り扱われていた形質の異なる子実体由来一核菌糸体を利用することで,有用な二核菌糸体を育成することが可能であると思われた.
  • 春口 佐知, 中島 清美, 増田 健太, 松永 洋平, モンコンタナーラク ウィヤダ, 金田 依子, 北村 直樹, 一柳 剛, 河野 強, ...
    原稿種別: 本文
    2013 年 21 巻 2 号 p. 88-91
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    毒きのこツキヨタケ(Omphalotus guepiniformis)は,嘔吐と下痢の徴候を引き起こすとされている.ツキヨタケ子実体中に検出されるilludin Sがその原因物質であると考えられているが,その作用については不明な点が多い.本研究では,ツキヨタケ自身の生存におけるilludin S産生の意義を考察する目的で,illudin Sの細菌,真菌,線虫に対する作用を検討した.抗線虫活性は,抗細菌活性と同様に検出できたが,真菌の増殖には全く影響しなかった.これらの成績は,illudin Sが抗線虫活性を持つことを記した初めての報告である.
  • 新田 剛, 目黒 貞利
    原稿種別: 本文
    2013 年 21 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    新燃岳噴火に伴う火山灰が培地木粉に混入した場合の,シイタケ菌床栽培に与える影響について検討した.木粉のpHは灰の混合割合の増加とともに低下したが,米ぬかとふすまを栄養体として添加し含水率64%に調整した培地においては,pH及びECともに大きな変化は認められなかった.火山灰を混合した培地でのシイタケ菌糸成長は標準培地に対して抑制されたが,その差はわずかであり,火山灰の木粉への混入は培地表面でのシイタケ菌糸成長にあまり影響しないと考えられた.しかし,シイタケ子実体の総収量及び発生数は火山灰の混合割合の増加に伴って大きく減少することが明らかとなった.この原因の一つは,火山灰混入による培地の三相分布等の構造変化,すなわち,液相率の増加に伴う気相率の低下により培地内部への通気が妨げられたためと考えられた.
  • 一柳 剛, 増田 健太, 春口 佐知, 金田 依子, 霜村 典宏, 前川 二太郎, 北村 直樹, 會見 忠則
    原稿種別: 本文
    2013 年 21 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー
    自然界から採集した野生のツキヨタケ子実体,NBRCより分譲された保存菌株およびそれを栽培して得た子実体中のilludin Sの定量を試みた.その結果,野生のツキヨタケ子実体の場合,採集した場所や時期でilludin Sの含量に違いがみられ,中には,全く含まれないものも存在し,illudin Sなどの二次代謝産物の生産は,自然界では,生育環境に大きく影響されることが示唆された.一方,保存菌株を栽培した子実体からは,安定的にilludin Sが検出できた.一方で,菌糸体培養した場合は,illudin Sは液体培地中に分泌され,木粉培地で栽培した場合,子実体発生後の培地及び菌糸体には,illudin Sは,検出されなかった.以上のことから,ツキヨタケ子実体に蓄積されるilludin Sは,子実体で生産されるのではなく,菌糸体で生産され,それが,子実体発生の際に水分等と一緒に子実体に吸い上げられるのではないかということが示唆された.
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