自然界から採集した野生のツキヨタケ子実体,NBRCより分譲された保存菌株およびそれを栽培して得た子実体中のilludin Sの定量を試みた.その結果,野生のツキヨタケ子実体の場合,採集した場所や時期でilludin Sの含量に違いがみられ,中には,全く含まれないものも存在し,illudin Sなどの二次代謝産物の生産は,自然界では,生育環境に大きく影響されることが示唆された.一方,保存菌株を栽培した子実体からは,安定的にilludin Sが検出できた.一方で,菌糸体培養した場合は,illudin Sは液体培地中に分泌され,木粉培地で栽培した場合,子実体発生後の培地及び菌糸体には,illudin Sは,検出されなかった.以上のことから,ツキヨタケ子実体に蓄積されるilludin Sは,子実体で生産されるのではなく,菌糸体で生産され,それが,子実体発生の際に水分等と一緒に子実体に吸い上げられるのではないかということが示唆された.
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