日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
29 巻, 1 号
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  • 高畠 幸司
    2021 年 29 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    食用きのこ菌床栽培において菌床培地を構成する培地基材,栄養材の種類と組成割合が子実体の収量と品質に影響することを明らかにした.特に産業廃棄物や未利用バイオマス資源が菌床培地に利活用でき,有用であることを示した.大豆加工食品製造過程で大量に廃棄されているオカラは,米ぬか,フスマと混合すると,栄養環境の相補作用により,米ぬか,フスマを単独で使用した場合に比べて子実体収量は増加した.同様に小豆加工食品製造過程で生じる餡殻を栄養材としてヒラタケ菌床栽培に試みたが,不適であった.しかし,培地基材である針葉樹オガ粉を餡殻で置換して栽培すると,子実体収量は増加した.エノキタケ栽培では,子実体成分にも影響し,遊離アミノ酸のアラニン,グリシン含有量が増加して甘味の強いエノキタケの栽培が可能となり,餡殻は培地基材として有用であることを明らかにした.ヤマブシタケは培地基材の選択性が広いことに着目し,ヤマブシタケ菌床栽培への数種きのこ栽培廃菌床の利用性を検討した.シイタケ,マイタケ,ナメコ,ブナシメジの各廃菌床はブナオガ粉の代替材として利用でき,ブナオガ粉よりも増収すること,また廃菌床を堆積処理することで増収効果がより一層増すことを見出した.廃菌床を使用した培地では培地中に遊離グルコース,低分子a-グルカン,低分子b-グルカンの含有量が増加していることを見出した.そこで,廃菌床に替わって多糖分解酵素を培地調製時に添加してヤマブシタケを栽培すると,子実体収量が増加することを明らかにした.これらのことに基づいて多糖分解酵素を用いる新たな栽培方法を明示した.放置竹林が社会問題として顕在化しているが,竹材の用途開発の一助としてヒラタケ菌床栽培における栽培資材としての利用を検討し,新鮮な竹材オガ粉では広葉樹オガ粉培地と同程度以上の収量を示した.また,竹材オガ粉を堆積処理することにより子実体収量が増収し,竹材がヒラタケ菌床栽培に利用可能であることを提示した.
  • 早乙女 梢
    2021 年 29 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    きのこ類の中で,子実層托が管孔状の子実体を形成するものは多孔菌類と総称される.多孔菌類は森林生態系の維持に重要な役割を演じている一方,人類の経済活動においても重要な菌類であるが,アジア地域における本菌類の分類学的研究は遅れている.本稿では,キクラゲ目とタマチョレイタケ目に属する多孔菌類を対象とした分類学的研究の概要について紹介した.研究の成果として,キクラゲ目に所属するElmerina属が多系統群であることを明らかにし,Apropium属とProtodaedalea属を独立属と認め,Apropium属の新種1種,Apropium属とProtodaedalea属の新組み合わせ2種を提唱した.Melanoderma属(タマチョレイタケ目)の1新種を記載するとともに,シスチジオールが本属種の判別形質として重要であることを明らかにした.Polyporus属Polyporellusグループ種(タマチョレイタケ目)の分類学的検討の結果,新種1種および日本新産種1種を記載した.また,日本産Apropium属とその近縁属,およびMelanoderma属の詳細と種リストを示した.
  • 前澤 憲雄
    2021 年 29 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    きのこの普及振興の要諦は,きのこの正しい知識を身に着けた適正な人材を通して発信するトータルシステムの確立である. (1) きのこに特化した資格認定事業の確立は,きのこの消費普及を図る上で不可欠な要素となった.今後,公的な後ろ盾をさらに確立し社会的信用のある資格認定事業に進化する基礎づくりができた. (2) きのこの普及振興にとって,きのこのファンづくり,マイナーなきのこの存在を様々な角度で多くの国民に身近に感じてもらうことが重要である.そのため,「季刊きのこ」というきのこ専門総合雑誌の発行を協会設立以来10年続けてきた.唯一無二のきのこ発信媒体編集発行は,きのこ普及振興の媒体として役割を果たしていると確信している. (3) きのこ産業は近年巨額な投資産業である.小規模でも家族労作型でも経営ができないことはないが,後継者を育てる持続型産業とするには,一定のスケールが必要である.この産業を地方で振興し,そのコミュニティ全体が豊かになることこそきのこ産業が持つ使命である.この理念を発信し続けることが日本きのこマイスター協会の本望である. (4) きのこを食べ,きのこの魅力に学び,きのこを生活習慣の糧にする文化を定着することが,国民の健康増進と医療費の効果的な活用になることを目標に伝道師きのこマイスターの日常活動は続けられる.
  • 上田 光宏, 森本 和樹, 楠田 瑞穂, 亀井 健吾, 中澤 昌美, 阪本 龍司, 坂口 実, 小林 仁, 大内 謙二, 稲冨 聡
    2021 年 29 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル オープンアクセス
    コナサナギタケPaecilomyces farinosusの培養上清からプロテアーゼを部分精製した.精製したプロテアーゼの活性はセリンプロテアーゼ阻害剤である PMSF, SBTI, aprotininや leupeptinによって阻害された.本酵素の分子質量はSDS-PAGE から33 kDaであることが分かった.最適 pHと最適温度はそれぞれ pH 8.0と45℃であった.N-末端アミノ酸配列解析から,本酵素はAspergillus nidulansDrosophila erecta由来のpeptidase S1 familyに属する トリプシン様セリンエンドペプチダーゼと相同性が見られた.これより,P. farinosus由来の酵素はトリプシン様セリンエンドペプチダーゼであることが明ら
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