マイコトキシン
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52 巻, 2 号
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原著
  • 田中 敏嗣, 米田 篤司, 杉浦 義紹, 井上 成人, 滝埜 昌彦, 田中 明子, 篠田 晶子, 鈴木 廣志, 穐山 浩, 豊田 正武
    原稿種別: 原著
    2002 年 52 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    アフラトキシンは種実類,香辛料,穀類からしばしば汚染が報告されている.アフラトキシン中毒症のヒトへの危険性を評価する上で,暴露実態を正しく評価しうる確実な定量および確認分析法が求められる.TLC,LCによる方法が汎用されているが,近年,液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)がマイコトキシン分析に適用され,有効な分析機器であることが知られてきている.しかし,ルーチン分析で用いるには定量限界,定量範囲等検討する必要がある.本研究ではエレクトロスプレーイオン化LCMSを用い,選択イオン検出法によるアフラトキシン類の定量分析の可能性を検討した.まず,アフラトキシンB1,B2,G1,G2標準溶液を用いて再現性,定量限界および直線性を検討した.いずれのアフラトキシンにおいても0.5-10 ng/mlで直線性を示し,この濃度範囲で定量可能であった.また,アフラトキシン(10 ng/ml)の繰り返し注入による測定値は4.34%(RSD)以内の再現性を示した.市販のピーナッツ,ピスタチオ,アーモンド,トウモロコシ,ナツメッグ,レッドペッパーの6種食品にアフラトキシンを添加し,多機能カラムで精製した試料溶液を本法のLCMS分析に適用した結果,アフラトキシンB1,B2,G1,G2が1 ng/g以上の濃度で検出することが可能であった.
  • 陰地 義樹, 岡山 明子, 安村 浩平, 玉置 守人
    原稿種別: 原著
    2002 年 52 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    香辛料等,夾雑物が多く分析が困難な食品を対象としたアフラトキシンの2次元HPLCによる確認試験方法を開発した.プレカラムにDIOL,メインカラムにはODSを使用した.サンプルを25 μl 注入してプレカラム中でアフラトキシン4成分(B1,B2,G1,G2)を一度にハートカットすると,トキシン前後の夾雑物が除去されてメインカラムでの測定が可能となった.次に,アフラトキシンB1だけをハートカットするとB1以外のピークがほば完全に除去されて信頼性の高い結果を得ることができた.試料中での定量下限はG1が10 μg/kg,その他は5 μg/kgであった.さらに,本法では250 μl 注入も可能であり検出下限を10倍改善することも可能であった.また,単成分ピークの出現確率からトキシン同定の確からしさの評価手法も検討した.
  • 後藤 哲久, マリニ・アーマド・ マリスク, モハメッド・ジャファー・ ダウド, 押部 明徳, 中村 久美子, 長嶋 等
    原稿種別: 原著
    2002 年 52 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    油ヤシは食用油生産のために重要な植物である.油を抽出するために果実の成っている枝を収穫する前に,その枝よりも下側の葉はすべて刈り落とされる.この刈り落とした葉の部分を牛の飼料とするための研究が行われてきた.しかしマイコトキシン特にアフラトキシンによる汚染が懸念された.そこで著者らは,乾燥した油ヤシ葉(OPF)およびOFPを含む配合飼料中のアフラトキシン分析法を検討した.アフラトキシンは80%アセトニトリルで抽出し,多機能カラム(MycoSep #228)を通して精製し,TLC又はHPLCにより分析した.アフラトキシンを5~20 μg/kg(アフラトキシンB1,B2,G1,G2を各々)添加した試料での回収率は75%以上で,RSDは10%以下であった.TLCによるOPF中のアフラトキシンB1の検出限界は5 μg/kgであった.10点の100% OPF試料を分析したがアフラトキシン汚染は確認されなかったが,強いアフラトキシン産生能を有する菌をOPFに接種したところアフラトキシンの産生が確認された.
第52回学術講演会要約
特別講演
  • 上村 尚
    原稿種別: 第52回学術講演会要約
    2002 年 52 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    覚せい剤をはじめとする種々の薬物が乱用され大きな社会問題となっている.乱用される薬物の種類も,覚せい剤をはじめとして,シンナー等の有機溶剤,大麻類,麻薬類など多岐にわたっており,近年ではこれら複数を組み合わせて使用するケースも増加している.一方,都内の繁華街や雑誌広告及びインターネット上には服用すれば多幸感や快感が得られるということで「合法ドラッグ」と称する薬物が多数見受けられ,一般人がこれらの薬物を簡単に手に入れることができる状況となっている.これらの薬物は,その所持や使用が「麻薬及び向精神薬取締法」や「覚せい剤取締法」あるいは「大麻取締法」等の法律に抵触しないことから「合法」と称され,安易に流通している.しかし,実際には医薬品にしか使用できない成分を含有することで無承認無許可医薬品として薬事法に違反するものや,毒物及び劇物取締法に違反するものなどが散見されている.
シンポジウム
  • 藤井 勲, 渡辺 彰, 多田 英倫, 小野 裕也, 森 雄一郎, 梶本 さやか, 安岡 良訓, 海老塚 豊, 三川 潮
    原稿種別: シンポジウム
    2002 年 52 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    糸状菌の生産するポリケタイド化合物の基本炭素骨格形成に与るポリケタイド合成酵素(PKS)は,アシル基とマロニル伸長単位の縮合の繰り返しと生成したポリケトメチレン鎖の閉環などを触媒する.これまで遺伝子がクローニングされ,機能が確認されている糸状菌PKSは数多くはないが,興味深いことにいずれも一つのポリペプチド上に縮合反応の活性中心KSやアシル基転移反応の活性中心ATなど各反応の活性部位がリニアに存在するいわゆるタイプI型のPKSタンパクであり,しかも,バクテリアのモジュール型とは異なり,同一の活性中心が縮合反応ごとに関与して炭素鎖の伸長を触媒する繰り返し型(iterative type)であることが大きな特徴である.我々は,糸状菌PKSが如何に反応を制御し,特異的な炭素鎖長,閉環様式をもつ生成物を与えるのか,その機構解明を目標に糸状菌PKSの遺伝子クローニング,発現,反応解析を行ってきたので紹介する.
  • 矢部 希見子
    原稿種別: シンポジウム
    2002 年 52 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    アフラトキシンはAspergillus flavusA. parasiticusA. nomiusA. tamarii に属する一部のカビが生産する毒性及び発癌性を有する二次代謝産物である.アフラトキシンの生合成経路はアセチルCoA から18以上の酵素反応によって構成されている.生合成に関するたくさんの酵素遺伝子が単離されてきているが,それらはゲノム上巨大な遺伝子クラスターを成している.さらに,生合成遺伝子産物であるAflR タンパク質はこれらの酵素遺伝子の発現を制御している.この総説は,アフラトキシン生合成経路の酵素反応をまとめ,この経路の特徴とアフラトキシン生産制御機構について紹介する.
  • 作田 庄平
    原稿種別: シンポジウム
    2002 年 52 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/01/08
    ジャーナル フリー
    アフラスタチンA (1)は Aspergillus parasiticus のアフラトキシン生産を特異的に阻害する化合物として見出されたが,Colletotrichum lagenarium のメラニン生産等カビの他のポリケタイド化合物の生産も阻害する.本研究では1のアフラトキシンおよびメラニン生産阻害機構に関する検討を行った.1はアフラトキシン生合成中間体であるノルソロン酸の生産を阻害した.1の添加によりアフラトキシン生合成酵素をコードする遺伝子(pksAverlomtA)の転写が抑制され,またそれら遺伝子の発現を抑制する aflR 遺伝子の転写も抑制されることが RT-PCR および TaqMan-PCR により示された.さらに1の添加により A. parasiticus のグルコース消費の促進およびエタノールの蓄積が起こることが判明した.一方,1は C. lagenarium のメラニン生合成中間体であるシトロンの生産を阻害したが,1とシトロンの同時添加でメラニン生産が回復した.メラニン生合成酵素の転写を RT-PCR により調べたところ,メラニン生合成の第一段階であるポリケタイド合成酵素をコードする遺伝子(pks1)の転写が特異的に抑制されることが示された.以上より,アフラスタチンのアフラトキシンあるいはメラニン生産阻害における作用点は一次代謝と二次代謝の間にある未知の段階にあると推定された.
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