霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
選択された号の論文の417件中351~400を表示しています
ポスター発表
  • 天池 庸介, 浦口 宏二, 増田 隆一
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-191
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     キタキツネ Vulpes vulpes schrenckiは北海道全域に広く分布するイヌ科の食肉哺乳類である.これまでのミトコンドリア DNA分子系統研究では,キタキツネ集団には3つの系統が分布すること (Inoue et al. 2007),核 DNAのマイクロサテライトによる集団遺伝的解析では,道南集団はその他の地域集団と比べて大きく遺伝的に異なること (Oishi et al. 2010)などが報告されている.一方,キタキツネ集団内の形態的特徴に関する研究例はない.
     そこで本研究では,2005年から 2006年に北海道各地から収集された 224個体分のキタキツネ頭骨を対象にして,その部位 25箇所と歯の 24箇所をノギスを用いて計測した.各部位毎の計測値について,Aspin-Welchの t検定と Bayesian Principal Component Analysis (BPCA)を行い,道東,道央,道北,道南の各地域間で地理的変異を解析した.
     その結果,雌雄ともに,道東集団の頭幅が道南集団よりも有意に大きかったこと,加えてそれらの中間に位置する道北 ‐道央集団間では各形質に有意差は見られず,道東および道南集団との相違が明瞭ではないことが示唆された.特に,道東集団の中でも東側に位置する中標津・根室集団の頭幅は顕著に大きいことも判明した.さらに,雄の犬歯について,道南集団が道東集団よりも発達していたが,道北 ‐道央集団間では歯のどの形質にも有意差は見られなかった.
     以上の結果は,キタキツネの道東集団と道南集団の間で,頭骨と歯の形態的分化が進んでいることを示している.これは従来のマイクロサテライトの集団遺伝学的解析 (Oishi et al. 2010)によって明らかとなった地理的分化と矛盾しない.以上の形態的地域変異の要因として,生息環境への適応や形態形成に関与する遺伝子群の遺伝的分化などが考えられる.この要因の解明は今後の課題である.
  • 木下 豪太, 佐藤 淳, 細田 徹治, 鈴木 仁
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-192
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     クロテン(Martes zibellina)はユーラシア大陸北部に広く分布する森林性の小型食肉類であり,第四紀の環境変動に伴った植生変化に大きな影響を受けたと推測される.また,毛色など形態の多様性が高く,地域集団の分類も課題とされている.本研究では,ウラルから極東に及ぶ分布の広域から収集した全 279個体を対象に,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の ND2遺伝子の配列(976 bp)を解読し,集団史の推定を行った.合わせて,極東の島嶼と大陸集団における毛色関連遺伝子 Mc1r全長(909 bp)の配列を解読し,その多型と毛色との対応,及びハプロタイプの地理的分布の傾向を調べた.その結果,大陸集団からおよそ 30-40万年前に分岐した 3つの mtDNA系統(R1-R3)が確認され,いずれもウラルと沿海州で遺伝的多様性が高く,分布の東西で広く共有されていることが明らかとなった.一方,カムチャツカ半島では R1系統の限られたハプロタイプのみが検出され,創始者効果の影響が示唆された.また,サハリン・北海道・南千島では,R1系統からおよそ 16万年前に分岐した島嶼固有の系統 H1が分布している一方で,サハリンからは R2系統のハプロタイプも見つかった. Mc1rの解析からも,島嶼には大陸のクロテンと共通な系統と,ニホンテンやアメリカテンとも近縁な祖先系統が混在していることが判明し,さらに北海道からは全身黄色性をもたらす変異をもったハプロタイプも複数個体から見つかった.これらの結果から,クロテンは第四紀の環境変動による森林帯の分布変化により,ユーラシア大陸の広域で系統の分断化と拡散を経験した一方で,カムチャツカ半島へは近年の放散によって分布を確立したと考えられる.また,北海道を中心とした極東の島嶼は独自の系統分化と多様性創出の舞台となっていることが示された.
  • 矢部 辰男, 橋本 琢磨, 森 英章
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-193
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     小笠原諸島の母島列島と父島列島および聟島列島にはクマネズミ (Rattus rattus)の分布する島が多く,ドブネズミ (R. norvegicus)は母島とその属島である平島だけに知られていた.しかし 2010年 10月の母島属島における調査により,平島以外にも妹島,姪島,姉島,向島でドブネズミが獲られた.これらのドブネズミは,日本本土で一般に見られるドブネズミよりも体が極端に小さい(体重比較には妊娠個体を含まない).月齢の対数値 (X)と体重 (Y)との間には,オス Y = 2.8 + 118.0X (r2 = 0.61, n = 15,p < 0.01),メス Y = 6.4 + 98.7X (r2 = 0.30, n = 26,p < 0.01)の関係が見られた.これに対して,東京湾の第 2海堡(1912年に建造された人工島で,越冬個体は冬季に体脂肪を消耗するので当年個体よりも小さい)で獲られたドブネズミの越冬個体はオスY = 6.7 + 274.5X (r2 = 0.48, n = 64),メス Y = 6.9 + 224.8X (r2 = 0.72, n = 55)である (Yabe, 1982).回帰式から,例えば 6カ月齢の体重を比較すると,オスとメスの順に母島属島では 94.6gと 83.1gに対して,第 2海堡では 220.3gと 181.8gであり,明らかに母島属島のネズミが小さい.ちなみに第 2海堡の当年個体ではオス281.3g,メス 259.9gとなり,さらに大きな差がある.ドブネズミでは遺伝的変異の小さいことが知られているので,母島属島における低体重は環境要因に起因するものであろう.
  • 沖本 康平, 下井 岳, 橋詰 良一, 亀山 祐一
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-194
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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    【目的】トガリネズミ形目は霊長目と齧歯目の分化の基幹とされており,両者の間を埋める動物モデルとして意義が認められている.我々は同目の道内最優占種オオアシトガリネズミに着目し,2009年から実験動物化に向けて調査,採取,飼育を行ってきた.本研究では雌雄同居による繁殖実験を行い,産子を得ることに成功したので報告する.
    【方法】オオアシトガリネズミは 5~ 10月に墜落缶で捕獲し,ジャンボミルワーム,冷凍コオロギで飼育した.繁殖実験の供試個体は尾の被毛で前年産まれと思われるものを選抜し,体毛ゲノムによるPCRで性別を確認した(第 58回日本生態学会).雌雄同居は多孔板の仕切りで 24時間の馴化をした後に行った.同居は 3または 7日間行い,同居前,同居終了時,同居終了後 14日に体重を測定した.
    【結果】近縁で室内繁殖に成功しているヒメコミミネズミを参考にした 7日間の同居では,大幅な体重減少,個体の死亡が発生した.同居 7日に死亡した雌で子宮に直径約 2_の着床胚が観察され,この個体は同居の早い時期に交尾したことが推測された.同居期間を 3日間に短縮すると個体の体重減少は軽減され,同居 2日目に交尾行動が観察された.この個体は同居終了後 14日目に大幅な体重の増加,同居終了後 21日に 4仔の分娩が観察された.オオアシトガリネズミは体重測定による妊娠診断が可能で,妊娠期間は 23日前後であると推測された.捕獲した妊娠雌から産まれたものを含め,産仔はすべて離乳に至ることなく死亡した.同種の繁殖に当たっては,分娩した雌の飼育方法,特に給餌の改善が必須と思われた.オオアシトガリネズミを飼育下で交尾,分娩させることに成功し,同種を室内繁殖できる可能性が示された.
  • 宮田 桂子, 鈴木 哲, 大沢 航介, 的場 祐弥
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-195
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     ニホンヤマネ Glirulus japonicusは,冬眠や日内休眠など特殊な生態を有していることから研究対象として注目されている一方で未だ不明な点が多い.また,天然記念物に指定されており観血的な調査が困難なことから,非接触による生体計測が求められる.非接触による生態観察として,過去にマイクロ波を用いて冬眠中のニホンツキノワグマ Ursus thibetanus japonicusの生体計測を試み,呼吸数の概日リズムなどを捉えたことから,本研究では冬眠中のヤマネの心活動,呼吸活動の観察に対してこの手法の適用を試みた.
     対象個体は展示動物としての制約があることから,調査は 2012年 12月から 1月下旬までの数日間のみを対象とした.使用したマイクロ波は,一般の無線 LANに用いられる 2.4GHzの周波数帯を用いたものとし,安全かつ電波法に準拠したものを利用した.その出力波形に対して周波数解析を行い,心活動および呼吸活動の変化に相当すると考えられる周波数帯をそれぞれ 1~10Hz,0.5~ 4Hzと仮定し,その帯域のピーク周波数変化を観察することとした.
     その結果,活動期から冬眠期への移行過程である 12月中において,心活動,呼吸活動の変化に相当すると仮定した周波数帯にピークが確認でき,冬眠期間と考えられる 1月下旬には,心活動,呼吸活動それぞれのピーク周波数が 2Hz(120bpm),1Hz(60bpm)付近まで低下することを確認した.また,このピーク周波数に数分から十数分程度の周期的な変動があることが確認できた.
     このことから,非接触による生体計測は有効であるとともに,ヤマネのより詳しい生態を動物園来園者に伝える飼育展示技術における有用な手段である可能性が示唆された.
  • 山梨 裕美, 足立 幾麿, 林 美里
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-196
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     飼育下の動物が,本来の生息地ではほとんど観察されないような行動をおこなっていることはよく知られている.たとえば,飼育施設内の同じ場所を行き来することを繰り返す常同歩行行動などである.こうした行動は異常行動といわれ,動物福祉を考えるうえでネガティブな指標として捉えられることが多い.チンパンジーにおいても,多くの異常行動が報告されている.その多様さゆえ,異常行動の発達や発現の背景は異なると考えられるが,これらの行動の分類・整理はされていない.
     そこで今回,過去の知見の精査,および行動観察をとおし,チンパンジーの異常行動を整理した.文献のレビューは,1960年代から出版された論文のうち,チンパンジーにおいて異常行動を扱ったものを対象とした.同じ行動に用いられている用語が文献により異なる場合は再定義し,エソグラムを作成した.エソグラムは,さらに行動パターン・行動の発達する環境・行動の結果もたらされる影響をもとに分類した.さらに,京都大学霊長類研究所のチンパンジー 14個体を対象に,2008年 4月から 2013年 3月までの観察記録を元に,該当する行動が観察されたかを記載した.
     結果 59種類の行動が異常行動として報告されていた.うち,野生下でも報告があるものが,7種類含まれていた.また,残りの 52種類の行動のうち,先行研究より発達の背景がある程度具体的に推察できたものは 4種類であった.たとえば,Repetitive rockingなどの行動は社会的な接触が限定的な人工保育と関連があることが一貫してみられたが,そのほかの行動には一貫した傾向はみられなかった.
     霊長類研究所のチンパンジーに見られた行動は,うち 26種類であった.全体として,食行動を含むものが多く,来歴との関連は先行研究と一致していた.今後,こうした行動エソグラムを異なる環境下,または違う種と比較していくことでその背景をあきらかにしたい.
  • 風間 麻未, 田上 正隆, 波多野 順, 真田 誠至
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-197
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     トガリネズミ科の小型哺乳類は,一般に基礎代謝速度が大きいため,体サイズに比して多くの餌が必要だと言われている.しかし,野外での観察や飼育の困難さから,これらの種の日間エネルギー摂取量を推定した例は少ない.なかでもカワネズミ Chimarrogale platycephalaは半水棲という生態的特徴からエネルギー摂取量がとくに大きいことが予測されるが,本種の日間摂餌カロリーについての知見は皆無である.本研究では,カワネズミ 2個体(雌雄各 1個体)を室温下のアクリル水槽内で 8ヶ月間飼育し,個体の日間摂餌カロリーを推定した.餌は期間を通して,日中は生きたコオロギ 2匹に加えて Insectivore diet(Mazuri製)と a/d缶(Hills製)を等量混合したもの(以下混合餌)を,夜間は上記混合餌のみをそれぞれ飽食状態になるように与えた.日間摂餌カロリーは残餌量から推定した.飽食下における本種雄個体の日間摂餌カロリーは,24.5 ± 3.1 kcal(体重 1g当たり0.52kcal)と推定された.また,上記条件において,雌雄個体共に,昼夜を問わず自身が排出した便を食べる行動(食糞)がほぼ毎日観察された.食糞は消化効率の低いコオロギを与えた後に頻繁に観察された.本種は,糞中の半消化状態の餌を再び摂取することにより,栄養の吸収効率を高めている可能性がある.
  • 平賀 真紀
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-198
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     集団で生活する霊長類にとって飼育環境は社会的な刺激に乏しい.たとえば,隔離や人工保育によって同種の仲間や母親から長期間離されたチンパンジー(,Pan troglodytes)は,社会交渉に乏しく,大人になっても交尾や育児が適切にできないなどの問題が指摘されている.飼育下で生まれた赤ん坊をできるだけ豊かな社会環境で生活できるようにすることはもちろんのこと,同居する大人個体にとっても赤ん坊の存在が良好な社会的刺激を与えると考えられてきた.しかし,大人どうしの交渉に赤ん坊が与える影響はほとんど分かっていない.横浜市立よこはま動物園では飼育環境を野生の状態に近づけることを基本理念とし,2009年よりチンパンジーの複雄複雌集団を飼育している.2011年 6月より社会管理のために行動観察を継続してきた.2012年に赤ん坊が 2個体誕生したことから,赤ん坊の社会的エンリッチメント効果を明らかにすることを目的として,赤ん坊が生まれる前と生まれた後ならびに赤ん坊の成長にともなう同居大人個体 7個体どうしの社会交渉を比較した.対象は,よこはま動物園で飼育されている 21~ 35歳のチンパンジー 7個体(雄2,雌5),観察期間は 2011年 8月 1日から 2013年 3月 31日までとした.行動は,飼育員 5名が交代で,放飼直後(9~ 10時の間)から 30分間観察した.1回の観察で 3~ 4個体,2~ 3日毎に全個体の行動を記録した.記録方法は,個体追跡法で,1分間隔の瞬間サンプリングとした.行動レパートリーは採食や休息など 13項目とし,対象が明確な場合は行為の方向も記録した.観察データは 1週間単位で,各個体・各行動レパートリーの頻度を算出した.その結果,6ヶ月齢までは赤ん坊による積極的な交渉は見られないにも関わらず,赤ん坊の誕生後に社会交渉はすべての個体で増加した.社会交渉の増加には成育歴による差が見られ,自然保育個体は人工保育個体よりも社会交渉が増加する割合が大きいことが分かった.
  • 綿貫 宏史朗, 落合 知美, 平田 聡, 森村 成樹, 友永 雅己, 伊谷 原一, 松沢 哲郎
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-199
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     日本におけるチンパンジー Pan troglodytesの飼育は,1920年代に始まったと考えられている.2013年 6月 20日現在, 326個体が 51施設に飼育されている.大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)では,国内で飼育された類人猿の個体情報を収集しており,過去の飼育個体を含めたチンパンジー約 1000個体分の情報を把握している.それによると,日本国内の個体群は 1990年代にピークを迎え減少傾向にある.高齢個体の割合の増加,血統の偏りなども懸念されている.今後,動物園や研究施設等でのチンパンジーの個体数を維持していくためには,適切な飼育管理や繁殖計画が重要だと考えられる.本発表では,日本におけるチンパンジーの飼育形態の変遷を振り返る.個体の福祉や繁殖計画を立てるうえで重要な飼育形態に着目し,具体的には,GAINのデータベースに登録された情報より,飼育目的(動物園等での展示,医学研究,認知・福祉研究)および 1施設当たりの飼育個体数の変遷について分析をおこなった.戦前に数か所の動物園で飼育がおこなわれ,第二次世界大戦中は 1個体まで減少したが,戦後の動物園ブームにより展示目的での輸入が再開した.1970年代後半~ 1980年代にかけて,厚生省による肝炎研究の推進により医学研究用個体が多数輸入された.2012年には医学研究施設で飼育される個体がゼロになった.チンパンジーに関わるさまざまなできごとが,チンパンジーの飼育形態に変化を及ぼしてきたものと考えられる.個体の福祉や保全に対する意識の高まりによる影響も推察される.一方で,単独で暮らすなど野生本来の社会構造とはかけ離れた飼育形態を強いられる個体も依然として存在している.現在の問題点を見直し,今後の飼育管理や福祉に役立てたい.
  • 落合 知美
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-200
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     現在,日本の 51施設で 326個体のチンパンジーが飼育されている (2013年 5月 31日現在).チンパンジーの飼育をおこなう上で,行動や生態について正しい知識を待ち,過去の経験などから明らかになった飼育のノウハウなどを参照し,日常の飼育管理に役立てることはとても重要だろう.そのため,これらの情報をまとめ,飼育担当者が簡単に参考にできるような「飼育マニュアル」の作成が望まれる.日本においては,過去にチンパンジーの飼育マニュアルが作成された経歴はないが,アメリカではすでに数冊の冊子が発刊されている.そこで,これらの内容を紹介するとともに,日本でのチンパンジー飼育マニュアル作りについて考えたい.1992年にアメリカ動物園水族館協会 (以下 AZA)が発行した「The care and management of chimpanzees in captive environments: a husbandry manual development for the chimpanzee species survival plan」は,AZA加盟園のノースキャロライナ動物公園が,博物館からの助成を受け,チンパンジーの飼育についてまとめたものである.分類,行動,管理,獣医学,施設設計の 5章で成り立っており,論文などからまとめた情報に加え,3回にわたる独自のアンケート調査の結果も掲載されている.2001年には,アメリカ霊長類学会より「The care and management of captive chimpanzee」が出版され,飼育管理に関する一般情報に加え,歴史や法律などについてもまとめられた.2010年に AZAが発行した「Chimpanzee care manual」は 10章で構成され,それぞれの内容に関わる AZA認定基準を,赤枠の囲みで参照している.アメリカでは現在,1884個体が飼育されているが,AZA認定基準が適応されるのは,加盟園の 35施設 254個体である(http://www.chimpcare.org,2013年 4月 30日現在).日本でのチンパンジー飼育マニュアルを作成する際には,こうしたアメリカの事情もふまえた上で,参照していく必要があるだろう.
  • 井上 紗奈, 新藤 いづみ, 藤岡 隆二, 竹菴 明日香, 松本 令以
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-201
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     これまでさまざまな種の霊長類を対象とした比較認知研究がおこなわれてきたが,曲鼻猿における研究はまだ少ない.本研究で対象とするアカエリマキキツネザルは,マダガスカル島にのみ生息し絶滅が危惧されるキツネザルの一種である.原始的な特徴を残しつつも独自の進化を経ており,周日行性で嗅覚が鋭く,繁殖や子育てに特徴がみられる.本研究では,認知における進化的基盤を探るため,横浜市立野毛山動物園で飼育されている 2個体(オス;10歳,メス;13歳)を対象として,タッチパネルモニタをもちいた認知課題を導入した.装置は,タッチパネルモニタを飼育室の金網越しに設置し,モニタ画面上に画像を呈示した.被験体に対しモニタ画面に触る馴致をおこなったのち,画像選択課題を導入した.第一段階では,事前に設定したカテゴリーのなかから 1枚の画像が呈示され,被験体が画面に触れると必ず報酬(リンゴ片)が得られるものとした.第二段階以降は選択課題とし,2種のカテゴリーから 1枚ずつを対呈示し,被験体が正カテゴリーの画像を選択すると正答とした.正答時にはリンゴ片を報酬として与え,誤答時には無報酬で 2秒のタイムアウトののち次の試行へ移った.ただし,被験体2個体は同室のため,どちらかモニタ前に来た個体に試行をおこなわせ,被験順序は問わないこととした.また,被験体は探索時に鼻をもちいる傾向があったため,鼻タッチも手指タッチと同様に一反応として扱った.第一段階では,画像ごとの反応時間を調べることで,反応を誘発するパラメータについて検討した.また,テスト刺激として異なるカテゴリーの画像を試行間に挿入し,ベースカテゴリーの画像との反応時間の違いを調べた.第二段階では,異なるカテゴリーの組み合わせによる弁別学習について検討した.
  • 花塚 優貴
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-202
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     描画行動は 2つの物体を関連づけて扱う高度な認知機能を必要とする.霊長類ではヒトと大型類人猿でのみ確認されている.大型類人猿に自由に描画できる機会を与えると豊富な色を用いて多くの直線や曲線を描く場合もあれば,ほとんど描かない場合もある.この描画量や質は他者の存在によって促進されることがヒトやチンパンジーで報告されている.しかし大型類人猿の中で唯一社会集団を作らず生活するオランウータンにおいては他者の存在が描画行動にどのような影響を与えるのかは明らかになっていない.そこで本研究では他者(飼育員)によってオランウータンの描画行動に影響があるかどうか,印象評定法を用いて明らかにすることを目的とした.
     東京都多摩動物公園にて飼育されていたボルネオオランウータン,モリ.(メス)の描いた絵画 18枚を分析対象とした.絵画の特徴を分析するための方法として,対象の印象を主観的に評価することのできる SD法を用いた.評価者は 61名の大学生(男性 29 名,女性 32 名,平均年齢 19.24歳)とし,彼らに 18枚の絵画の評定を求めた.評価項目は対義語となる形容詞 9 対(例:好き.嫌い)とし,18枚の絵画のそれぞれが7段階で評価された.因子分析を行った結果,好感性因子と活動性因子と命名される 2つの因子が抽出された.ここで絵画の好感性および活動性の尺度得点が飼育員の性別によって違いが認められるかどうか検討した.2(飼育員の性別:男性,女性)×2(得点:好感性,活動性)の被験者間要因の分散分析を行ったところ,好感性得点において交互作用が認められた.この結果は男性飼育員が出勤した日は女性飼育員が出勤した日よりも,より好感的という印象を与える絵をオランウータンが描いていたことを示している.以上の結果から,社会交渉をする機会が少ないオランウータンにおいても飼育員という他者の存在が描画行動に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 佐藤 杏奈, 香田 啓貴, 南雲 純治, 正高 信男
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-203
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     乳児に特有な物理的特徴(大きな瞳,小さな鼻や口,丸い顔,短い四肢など)は哺乳類と一部の鳥類に普遍的に存在し幼児図式と呼ばれている.これは,養育行動を引き出す鍵刺激になっていると古典的に提唱されているが,ヒト以外の動物を用いた研究は少ない.われわれは先行研究で,視覚対呈示法を用いて,カテゴリーの弁別能力の有無及び乳児画像への選好性について調査した.その結果,オナガザル科の霊長類 2種(ニホンザルとキャンベルズモンキー)において,乳児-オトナのカテゴリーを弁別し,乳児の画像の方をより長く見ることが明らかになった.しかし,幼児図式におけるどの物理的な要因が選好性につながっているか,個体の性別や年齢がどのような効果をもたらすのか,いまだわからないことは多い.そこで本研究では,乳児選好性に関してより詳細に検討するため,ニホンザルの全身画像と顔画像,また異種の刺激を用いて選好注視法を実施し,実験動物の性別や年齢ごとの群間比較を行った.
     これらの結果から,ヒト以外の動物における乳児画像に対する選好性について議論し,乳児選好性や養育行動の進化的な起源について考察したい.
  • 市野 悦子, 松沢 哲郎
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-204
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     京都大学霊長類研究所では 14個体のチンパンジーを飼育している.本研究報告の執筆時点で,全員が 12歳以上で,うち 1個体は下肢の麻痺があって仲間とは同居していない.残る 13個体(男女比3:10)を 2群に分けて飼育している.かりにA群とG群と呼ぶ.2012年 6月に,計画的に次世代を作る群れづくりを開始した.それ以前は,A群は 6個体で男女比は2:4だった.男性 2個体は,推定 37歳のアキラと,人工授精でできたその息子で 13歳のアユムである.G群は 7個体で男女比は 1: 6だった.アキラ-アユムという父系のもと自然交配で次世代を作ることを構想した.ただし人工哺育のアキラは交尾ができない.母親が哺育したアユムは交尾行動ができる.そこでアユムを父親候補とし,G群にいたパン(29歳女性)を母親候補として群れ間で移籍させて次世代繁殖を試みた.両者の過去 1年間のようすを報告する.交尾の目撃例は少ない.アユムとパンの個体間関係を,性皮の腫脹に着目して,夜間の就眠場所と,昼間の認知実験参加という 2つの指標から検討した.夜間の就眠場所については,チンパンジーの夕食後の就眠場所を記録した.昼間の認知実験参加については,実験施行記録を参照した.この 2つの行動を,パンの性皮腫脹のレベルと関連づけて分析した結果を報告する.避妊薬の投与をやめると,パンの性皮は平均約 38日で腫脹と退縮を繰り返した.以下の 3点が明確になった.パンの性皮が腫脹すると,1)夜間にアユムはその近くで寝る,2)昼間にアユムは認知実験に参加しないでパンと一緒にいる.3)また,この 1年間を通してみると,アユムとパンが日中および夜間に近接している日数が徐々に長くなっている.両者の関係が徐々に近いものになりつつある傾向が読み取れた.なお 2個体目の母親候補としてクレオ(13歳)もG群からA群に移籍させた.その経過も合わせて報告する.
  • 田中 正之, 岩橋 宣明, 水野 章裕, 松永 雅之, 伊藤 二三夫, 伊藤 英之
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-205
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     マンドリルの大人オスの顔は,真っ赤な鼻筋とその両側の青みがかった皮膚のコントラストが特徴的で,霊長類の中でも際立って「目立つ」顔だと思われているが,実際にサルにとって目につくのだろうか.このことを検証するために,京都市動物園で飼育されているマンドリル 4個体(オトナオス1,オトナメス1,コドモメス2),チンパンジー 4個体(オトナオス2,オトナメス2),シロテテナガザル1(オトナオス)を対象に視覚的好みを調べるテストをおこなった.本実験の参加個体はすべて,本実験以前にタッチモニターに対する訓練を完了していた.課題は Tanaka(2007)で用いられた自由選択課題で,画面上のランダムな位置に提示されるスタート刺激に触れることで試行が開始された.画面に 6枚の写真が提示され,参加個体が触れた写真が拡大され 5秒間提示された.一度選択した写真は消されて,残った 5枚の写真の中で 1枚に触れると,その写真が拡大して 5秒間提示された.提示刺激は,マンドリル,同じマンドリル属のドリル,マンガベイ属,ロフォセブス属,ゲラダヒヒ属,ヒヒ属からそれぞれ 1枚で構成した.各種(属)について 30枚の写真をそれぞれ 2回ずつランダムな組み合わせで提示した.テストの結果,マンドリル 4個体,チンパンジー 4個体では,特定の種(属)に対する選好性は示されなかった.マンドリルの隣に展示されているテナガザル 1個体のみ,マンドリルに対する選好性を示した.参加個体の選択傾向を検証するため,Tanaka(2007)で用いた刺激セットを用いたテストをおこなったところ,チンパンジー 3個体とテナガザル 1個体,マンドリル 1個体で先行研究と同様の,ヒトの写真に対する選好性が示され,参加個体がランダムに選択していたのではなかったことが示唆された.以上の結果から,マンドリルの顔がマンドリルにとって視覚的に目に付くわけでもなく,その他の種にとっても注意をひくものでもないことが示唆された.
  • 平井 直樹, 本郷 利憲, 稲冨 貴美, 魚谷 恭太郎, 佐々木 成人
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-205
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     サルが道具を使用出来るようになるまでの学習過程を解析し,道具使用に必要な感覚・運動の統合機序を明らかにすることを目的とした.道具としてピンセット(Pct:長さ100mm)をサルに使わせた.Pctの開口部に置いた 5mm角の餌(芋)を挟み取れるように訓練した後,餌を Pctから離し,先端を正確に餌の所まで運び摘めるまでの学習過程を,前・上・側面からビデオ撮影した手・頭の動きと眼球運動との関連から解析した.Pctを強制的に手に握らせて学習させたサルと,置いてある Pctを自分で操作し学習したサルでの比較を行った.
     手に Pctを持たせた第一群のサルでは,数秒かけて先端を餌の方向に運ぶが,一度で餌に到達出来ない.はじめは一回で諦めていたが,試行を繰り返すと一度餌の近傍に置き再び持ち上げ餌に向かって下ろす.この動きを繰り返して先端位置の調整をしていた.特徴的なのは,手を動かしている時は目を餌や Pctに向けることが無い点である.Pctが餌の台についた後,はじめて目を向ける.再び Pctを持ち上げる時,視線を餌から離す.これを繰り返し Pctで正確に餌を掴むようになった.5日目からは一度で Pctの先端を餌の所に運び挟むことが出来るようになった.
     はじめから自分で Pctを操作しなければならないサルでは,Pctを掴まず手掌で押すように餌の方に運んだ.しかし 5cmの距離であっても,小刻みに動かしては止めることを繰り返した.この学習過程でも,サルは手を動かしている間は Pctと餌を見ることはなく,止めた時に見る.そして再び目を離し,Pctを動かす.この過程を繰り返す.餌を見ながら操作するのは三日目になってからであった.
     サルが手の代わりに初めて道具で物を操作する時,視覚はオンラインで動きを修正するためでは無く,手の動きに伴う道具作用部と操作対象物の位置関連を把握するための情報を得るために利用して,道具を身体図式の中に取り込んでいると考えられる.
  • 堀田 英莉, 関 義正, 岡ノ谷 一夫, 齋藤 慈子, 中村 克樹
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-207
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     ヒトの乳児の泣き声(crying)は,苦痛や空腹といった何らかのニーズを非明示的にあらわすシグナルであり,ほとんどの哺乳類の乳児は泣き声をあげることで養育者から養育行動を引き出すことができる(Gustafsonら,2000;Bard,2000).アカゲザルやチンパンジーなどヒト以外の霊長類でも,ヒトほど顕著ではないが,母親を含む養育者との身体的な分離が生じたときに,乳児は distress callやscreamを発する(Bard,2000).ヒト以外の霊長類において,乳児の泣き声への応答について調べた研究は未だ少ないが,ヒトを含めた霊長類の養育行動を明らかにするためにはヒト以外の霊長類の乳児の鳴き声への応答を調べることが重要である.コモンマーモセット Callithrix jacchusはヒトと似た家族を社会の単位とし,協同繁殖を行う.本研究では,コモンマーモセットの乳児の泣き声が父親及び母親個体の発声行動に与える影響について調べた.被験体には,コモンマーモセット 5頭(オス 3頭,メス 2頭,6.0 ± 1.6歳)を,乳児音声刺激として被験体の実子(1-7日齢)の泣き声を(乳児条件),成体音声刺激として同じ飼育室の異なるケージで飼育されている成体個体(オス 3頭,メス 3頭,3.6± 0.64歳)の音声(phee call)を使用した(成体条件).また比較のため,無音刺激を用いた(無音条件).実験では,防音箱内に設置したテストケージへの 15分間の馴化を行ったあと,刺激提示前 5分間と刺激提示中の 5分間,刺激提示後 20分間の発声を録音した.時間と条件の 2要因について分散分析を行った結果,乳児条件では成体条件や無音条件と比較して,刺激提示終了後から 10分間にわたって発声頻度が上昇することがわかった(F = 3.543, df = 10/40, p < .01).今後は,乳児の鳴き声を聞いた親個体の神経系の応答やホルモン変化を調べ,泣き声の養育行動へ与える影響について調べたい.
  • 友永 雅己, 黒澤 圭貴, 川口 ゆり
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-208
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     近年,ヒト以外の動物において,自身の「内的状態」の認知,すなわち「メタ認知」に関する研究が数多くおこなわれている.その多くは,訓練によって形成された行動によって,自分の選択行動の確信度や記憶の内容の確実さを報告するというものである.その一方,自発的な行動から動物たちが自らの認知の状態を認識していることを示す研究はそれほど多く報告されていない.今回,弁別課題遂行時に 1個体のチンパンジー・アイが示した行動が,彼女の選択反応の確信度に対応している可能性が示唆されたので,ここに報告する.アイは,各種の写真の中から標的刺激を検出し選択する視覚探索課題に行っていたときに,選択反応直後に頻繁に報酬供給装置(フィーダー)を見るという行動を頻繁に示した.ただし,反応と同時にチャイムやブザーが鳴り,正解時にはフィーダーが作動するため,これらの外的な手がかりが,この行動の生起の手がかりとなっている可能性は否定できない.そこで,このようなフィードバックが反応直後ではなく 1秒後に提示される遅延あり条件と従来の遅延なし条件を用意し,この条件下での課題遂行中のアイの行動をビデオで記録し,選択反応直後のアイの行動を 3種類に分類して記録した.(1) No Look:フィーダーの方を見上げない,(2) Side Look:画面から目を離して横を向くがフィーダーの方は見上げない, (3) Look Up:フィーダーの方を見上げる.その結果,フィードバック遅延条件では,誤反応後にはフィーダーを見上げる行動の生起頻度が有意に低下した.正誤のフィードバックはこのような行動の生起後に与えられるので,外的な手がかりによってこの行動の変化が生じたわけではないことは明らかである.この結果は,このフィーダーの見返し行動が,アイの自分の直前の反応の正誤の確信度に対応している可能性を示唆している.
  • 加藤 卓也, 石井 奈緒美, 竹節 治夫, 田中 伊知郎, 羽山 伸一
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-209
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     野生動物に対する安全な化学的不動化薬の選択は重要であるが,ニホンザル(Macaca fuscata)においても,行動追跡用発信機の装着時など化学的不動化を要する機会は多い.これまで塩酸ケタミンが一般的に使用されていたが,2007年に麻薬指定されたことから代替可能な薬が求められている.飼育下では,塩酸ミダゾラム単体または塩酸メデトミジンとの混合投与(以下,M-M混合投与)の適用が報告されている.しかし,餌付け群および野生群については,代替薬に関する詳細な報告はなされていない. 本研究では,餌付け群のニホンザルに M-M混合投与を行い,導入時間,導入後の心拍数,呼吸数,体温の経時的変化を明らかにすることを目的とした.また,これらの項目に夏季と冬季の間で,季節的な影響が存在するか否かを調べた. 2010年から 2011年までの期間に,地獄谷野猿公苑でニホンザルの捕獲調査を実施した.捕獲した個体に,塩酸ミダゾラム 0.42 ± 0.03 mg/kg (mean ±SD)と塩酸メデトミジン 0.20 ± 0.01 mg/kgを混合投与した.2歳から 6歳までの計 16頭を解析の対象とし,投与から導入までの所要時間,導入後の心拍数・呼吸数・体温を,投与から 10分,20分,30分,40分まで 10分毎に記録した.8月を夏季(n=10),10月および 12月を冬季(n=6)として設定した. 導入時間は,夏季が 4.0 ± 1.5分 (mean ±SD),冬季が 4.0 ± 0.9分で季節差は認められなかった.心拍数と呼吸数は,経時的に減少する傾向はみられたが,一時上昇する個体も存在した.他方,体温は,いずれの季節も経時的に減少することが明らかとなった.さらに,体温の減少は,夏季より冬季のほうが顕著に認められた.以上の結果は,塩酸メデトミジンまたは塩酸ミダゾラムの薬剤特性が影響していると考えられ,現場で使用する際は素早い導入を期待できるものの,不動化時の各種モニタリングに留意する必要がある.
  • 好廣 眞一, 濱田 穣, 河野 光治, 齊藤 良裕
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-210
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ニホンザルの四肢奇形は,日本の自然界に起きている異常現象である.人間によって餌付けされている群れで特に多発し,1969-72年に奇形出生の峰があった.四肢奇形個体の出生は,高崎山群で1955年はじめて観察された.餌付け後 3年目だった.(伊谷:水原,1955) 演者らは,2007年の日本霊長類学会第 23回大会において,1955-1977年の.間に高崎山群で観察された四肢奇形個体の,性,年齢,奇形箇所の形態を記載し,通算 114頭がいたことを発表した.これは,(1)1977年 8月に行った,ニホンザル奇形問題研究会と高崎山自然動物園の合同調査で記載された四肢奇形個体 66頭,(2)1962年, 1965年, 1971年の個体数調査時に作成された個体カード中の奇形個体を,各調査を企画・運営された方々の御好意により記録させていただいたもの,(3)九州大学医学部解剖学教室と京都大学理学部動物学教室自然人類学研究室に保存されていた高崎山群の死亡個体を,両教室の御好意によりレントゲン撮影させていただいたもの(4)既報の記載(IWAMOTO,1967他)を突き合わせ重複を除いたものだった.
     今回これらに,1978年と 1979年の高崎山群捕獲総合調査(和秀雄代表)において,浜田穣,和秀雄により撮影されたレントゲン写真,1976年 9月の山極寿一による調査で記録された四肢奇形個体,その他の資料を加えて,1979年 12月までに観察された四肢奇形個体を記載する.
  • 佐鹿 万里子, 阿部 豪, 郡山 尚紀, 前田 健, 坪田 敏男
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-211
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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    【背景】近年,エゾタヌキ Nyctereutes procyonoides albusの地域個体数減少が報告されており,この原因として疥癬やジステンパーなどの感染症や外来種アライグマの影響が考えられているが,その原因は明らかとなっていない.そこで本研究では,エゾタヌキ(以下,タヌキとする)を対象に,ホンドタヌキで集団感染死が報告されているイヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus:以下,CDVとする)について疫学調査を行った.
    【材料と方法】調査地域は,2002~ 2004年に重度疥癬タヌキが捕獲され,さらにタヌキ個体数減少も確認されている北海道立野幌森林公園を選定した.2004~ 2012年に同公園内で捕獲されたタヌキ 111頭において麻酔処置下で採血を行うと同時に,マイクロチップの挿入と身体検査を行った.血液から血漿を分離し,CDVに対する中和抗体試験を行った.
    【結果】CDVに対する抗体保有率は 2004年:44.4%,2005年:8.3%,2006年:14.3%,2007年:11.1%,2008年:7.7%,2009年:54.5%,2010年:8.3%,2011年:0%,2012年: 0%であった.また,同公園内では 2003年に 26頭のタヌキが確認されたが,2004年には 9頭にまで激減し,その後,2010年までは 10頭前後で推移していた.しかし,2011年は 18頭,2012年には 16頭のタヌキが確認され,タヌキ個体数が回復傾向を示した.
    【考察】抗体保有率は 2004年および 2009年に顕著に高い値を示したことから,同公園内では 2004年と 2009年に CDVの流行が起きた可能性が示唆された.また,2002~ 2004年には,同公園内で疥癬が流行していたことが確認されているため,同公園内では CDVと疥癬が同時期に流行したことによってタヌキ個体数が減少したと考えられた.
  • 石井 奈穂美, 加藤 卓也, 名切 幸枝, 羽山 伸一, 梶ヶ谷 博
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-212
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     霊長類のグルーミングの機能を検討する際は,グルーミング行動に影響を与える要因を考慮することが不可欠である.ニホンザル( Macaca fuscata,以下サル)では,シラミ( Pedicinus sp.)との密接な関係が示唆されており,シラミ卵数と体毛密度が比例することが報告されているが,卵数についてサルの性・年齢や生息地の違いを検討した研究はない.そこで本研究では,サルの体毛上のシラミ卵数について,性・年齢ごとの地域差・部位差を検討した.
     観察対象は,青森県下北半島において特定計画にもとづき個体数調整のために殺処分された野生のサルの皮膚とした.皮膚サンプルは性と年齢区分(Infant,Juvenile,Adolescent,Adult)に応じて分類し,実体顕微鏡により観察区画内(3cm 2)の卵を数えた.地域差について,観察個体の手の届く部位(左手首外側)の卵数を,福島県福島市に生息するサルと比較した結果,下北半島のサルにはより多くの卵が膠着していたが,Juvenile個体の卵数が多い点は両地域で共通していた.部位差について,同様の観察を手の届かない部位(腰部)で行った結果,手首に比べ少数ではあるが,Adult個体により多くの卵が膠着する傾向が見られた.なお,両部位において卵数に性差は認められなかった.
     地域により卵数が大きく異なっていた点については,体毛密度といった物理的要因を考慮すべきである.また,両地域の手首において Juvenile個体により多くの卵が見られたことは,歯の萠出等卵の除去を妨げる要因によるものであると考えられる.部位により,卵数および卵が多く見られる年齢区分に違いがあったことは,他個体から受けるグルーミングの影響によるものであると考えられる.
     以上より,サルのグルーミング行動に影響を与えると考えられるシラミ卵数は,地域・部位・年齢に応じて異なる可能性が示唆された.
  • 尾針 由真, 押田 龍夫
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-213
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     人獣共通寄生虫である肝蛭類は,主に有蹄類の肝臓および胆管に寄生する吸虫で,肝蛭症の原因となる.近年,ウシ等の家畜の肝蛭症は減少傾向にあるが,野生のエゾシカでは高率に肝蛭が感染しているという報告があり,エゾシカの個体数の増加に伴って家畜およびヒトへの感染の拡大が懸念される.このため野生のエゾシカにける肝蛭の寄生状況を把握することは,畜産業および公衆衛生双方の観点から重要になると考えられる.そこで本研究では,家畜の飼育頭数が多い北海道十勝地方において,野生のエゾシカへの肝蛭の寄生状況を把握し,今後の肝蛭症拡大対策の基礎資料を呈示することを目的とした.調査期間を 2012年 5月から 10月とし,十勝管内および十勝の外縁部であるえりも町と阿寒湖周辺に設定した調査地において,エゾシカの糞を拾集し,虫卵検査を行った.十勝管内から計 507サンプルを拾集し分析した結果,寄生率は 14.20%であったことから,十勝地方におけるエゾシカの肝蛭感染は既報の地域のものと比較すると低いレベルにあることが示唆された.また,北海道の食肉検査所のウシにおける肝蛭感染データに基づいて,エゾシカとウシの肝蛭寄生の関連性を比較したが,明瞭な関連性は見られなかった.しかし低いレベルであっても肝蛭に感染したエゾシカ個体が十勝に存在することは明らかであり,今後は家畜への感染と併せて,山菜等を摂食することによるヒトへの感染についても,歯科個体群動態に基づいて留意することが重要であろう.
  • 安藤 元一, 山田 啓貴, 山脇 幸乃
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-214
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     焦電型センサーを用いた自動撮影カメラは,動物の体表温度と背景温度との温度差を検知して作動する.本研究では背景温度が動物の検知率にどの程度影響するか調べた.実験には 3種類のセンサーカメラ(FieldNote Duo,LtlAcorn5210および TrophyCam Basic Model)を用いた.さまざまな背景温度(0-35℃)のもとで,1)37-38 ℃に保った中型動物大のプラスチックケースおよび2)着衣の人間をカメラから 2-4m離れた場所で画面を横切るように動かし,シャッター作動率を求めた.また,体毛に覆われた中大型哺乳類の体表温度は体温より低いことから,放射温度計を用いてアライグマとウマの体表温度を放射温度計で測定した.
     背景温度が 31℃以下では1)2)のすべてのカメラが正常に作動した.しかし1)では 32℃以上(体表温度と背景温度の差が 5-6℃以下)になると検知率が低下しはじめ,35℃(温度差 2-3℃)になると,検知率は機種によって 70-90%に落ちた.2)では背景温度が33℃以上になると検知率が低下しはじめ,35℃では機種によって 50%に低下した.カメラ機種についてみると,TrophyCamは背景温度の影響をほとんど受けていなかった.アライグマとウマの体表温度は,背景温度 23-24℃において胴部は 28-30℃,毛の少ない顔面は 31-32℃であった.これらのことからみると,陽当たりの良い場所における夏季昼間の自動撮影では背景温度が撮影率に影響している可能性が高い.動物体表温度の低さから見ると,更に低い背景温度下でも影響があるかもしれない.こうした可能性は,実際の野外撮影結果からもうかがえた.
  • 井上 比加里, 酒井 悠輔, 坂本 信介, 森田 哲夫, 越本 知大, 篠原 明男
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-215
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     乳類の消化管内に共生する微生物叢は宿主における食物の栄養利用に大きく寄与している.このことについて近年では,16S rRNA遺伝子を指標とした解析が盛んに行われており,哺乳類の消化管内微生物叢の多様性は一般的に草食,雑食,肉食の順に高いことが示されてきた.しかし研究対象は大型哺乳類が殆どで,野生の小型哺乳類の消化管内微生物叢については不明な点が多い.そこで本研究では小型哺乳類で雑食性のアカネズミ(Apodemus speciosus)および昆虫食性のコウベモグラ(Mogera wogura)の消化管内微生物叢を明らかにし,その一端を解明す,ることを目的とした.宮崎県で捕獲したアカネズミの盲腸およびコウベモグラの腸管後半部分の内容物から微生物叢の 16S rRNAライブラリーを構築し,それぞれ 210および 206クローンの塩基配列を解析した.その結果,アカネズミでは Firmicutes門(62%)が最も優勢で,続いて Bacteroidetes門が多く観察され(30%),これまでに報告された哺乳類の消化管内微生物叢と同じような構成を示した.その一方でコウベモグラでは,Proteobacteria門(36%)と Actinobacteria門(34%)が同じような割合で検出されたが,これまでに報告された一般的な哺乳類の消化管内微生物叢とは大きく異なっていた.また得られた微生物叢の多様性の度合いを,シャノン指数(H’)を用いて評価し,これまでに報告された哺乳類の値と比較したところ,アカネズミ (H’=4.41)は雑食性哺乳類の中でも微生物叢の多様性が比較的高く,コウベモグラ(H’=4.67)の微生物叢は大型肉食動物と比較すると極めて高い多様性を示す事が分かった.以上の結果から,野生由来の小型哺乳類の消化管内には多様な微生物叢が生息していることが示唆された.
  • 岡田 充弘, 小山 泰弘
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-216
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ニホンジカの枝葉の採食痕を利用した生息状況の評価は,林業関係者などが簡易に広域で調査可能であることから北海道などで試行されている.しかし,長野県のようにニホンジカとニホンカモシカが同所的に混在する地域では,枝葉の採食痕だけで加害種を判別することは困難である.そのため,ニホンカモシカによる影響が出にくい樹木の剥皮採食と,ニホンジカが集中的に冬季に採食を行うササ類に注目して,ニホンジカの生息状況を評価することを試みた.これまでに,冬季の主要食物であるササ類の採食程度を指標化したササ類の健全度と,ヒノキなどの主要造林樹種や天然木の剥皮採食の嗜好性と発生する立木サイズから,ニホンジカの生息状況を推定してきた.そこで,これまでの結果を基にカモシカが混在する地域でも利用可能と考えられるササ類,および樹木の剥皮採食痕など利用したチェックシート案を作成した.今回,林業関係者を対象としてチェックシートを利用した生息状況調査を実施し,その効果を検討したので報告する.
  • 金城 芳典
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-217
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     四国におけるアライグマの分布状況については,発表者らが 2006年に調査を実施している(金城・谷地森,2007).その結果から,アライグマは香川県東部を中心として,徳島県の吉野川北岸まで分布していることが分かっている.また,香川県では自然繁殖しており,徳島県でもその可能性が高いことが確認されている.2006年時点では,愛媛県および高知県では自然繁殖は確認されておらず,また,野外での確実な確認情報は少なかった.しかし,ここ数年,アライグマの野外での確認情報が増加している.外来生物への対策を検討する際,対象となる生物の分布状況を把握することは大変重要である.また,分布状況は継時的に変化するので,継続的に把握することが必要である.そこで本研究は,アライグマの四国における分布拡大状況について把握し,アライグマ対策を効果的に実施するための基礎資料とすることを目的に実施した. 四国におけるアライグマの現在の分布状況を把握するため, 2006年以降に得られた情報を整理した.整理した情報は,捕獲記録,目撃記録および文献情報である.目撃記録については,写真があるものや,尾のリングを確認するなど,確実にアライグマであると考えられるものだけを整理した.その結果,四国におけるアライグマの分布は 2006年時点と比較して西側に分布が拡大していることが確認された.県別に見ると,香川県では県西部での捕獲地点が増加していた.徳島県は大幅な分布拡大の傾向は見られなかった.高知県では確実な野外確認の情報は得られなかったが,愛媛県では東温市でアライグマが撮影された他,四国中央市,新居浜市および西条市の香川県境に近い3市でアライグマが捕獲された.発表では現時点での分布状況に加え,分布拡大速度などについても検討したい.
  • 原口 美帆
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-218
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では 1891~ 2007年に発行された狩猟雑誌(猟之友,銃猟界,狩猟と畜犬,狩猟界)と,1927~ 2012年に発行された鳥獣関連書籍を用いて,記事内容の時代変化を調査した.狩猟雑誌については,上記期間に発行された各誌から約 5年ごとに 3~ 6冊(計 90冊)を抽出して記事総数を数え,見出しと記事内容から宣伝記事,狩猟記事,飼育記事に大別した.鳥獣関連書籍としては,出版年鑑を 5年ごと(1990年以降は約 3年ごと)に調べ,その中から畜産業・獣医学に分類された単行本 2,806冊を調査対象とした.
     狩猟雑誌の 1冊あたり総ページ数をみると 1968年が最も多く,以降はゆるやかに減少した.宣伝記事では 1950年代から 1970年代までは銃器に関するものが最も多かったが,2000年代からは猟用ワナの宣伝が最多となった.狩猟方法の紹介記事は 1950年代までは鳥類が主だったが,1980年代からは哺乳類の方が多くなり,とりわけ 1990年代以降はシカ・イノシシの狩猟方法が 8割強を占めた.調査対象の書籍中における野生動物は,毛皮獣として数冊確認されたのみであり,野生動物を愛玩目的で扱った書籍はなかった.野鳥に関わる単行本は 23冊確認され,ほぼ全てが愛玩目的の書籍であった.1960年代までのこれらの書籍は野鳥の捕獲・繁殖方法が主に掲載されていたが,1970年代に入ると野鳥を庭に呼び込む内容に変化し,1990年代には洋鳥の飼育法が多くなった.愛玩動物に関する単行本は 1990年代に入ってから急激に増加して 2007年には 250冊を超えたが,そのほとんどがイヌの書籍であった.以上のことから,狩猟雑誌における記事数や内容は狩猟人口の変遷や獣害の発生頻度を反映していることが,また単行本からは愛玩飼育の時代傾向を知ることができた.
  • 幸田 良介, 虎谷 卓哉
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-219
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     特定外来生物であるアライグマの分布と被害は全国各地で拡大しており,大阪府においても防除実施計画が策定されている.しかしながら,現在のところ,効果的・効率的な防除推進に欠かせないアライグマ生息状況に関する情報が十分に整理されているとは言い難い.そこで本研究では,捕獲時に収集されている個体情報と農業集落へのアンケート情報という 2つの既存データを活用し,大阪府域のアライグマ生息状況の経年変化を明らかにすることを目的とした.
     捕獲個体情報については捕獲数や捕獲場所のほか,体重,性別,妊娠率及び推定出産数の項目を,アンケート情報については生息の有無,出没頻度及び被害強度の項目を利用した.捕獲場所とアンケートを得た農業集落の位置座標を入手し,捕獲数については 3次メッシュごとに集計した.さらに各項目について IDW法による空間補間を行い,大阪府全域における空間分布を解析し,経年変化を調べた.
     空間分布の解析の結果,アライグマの生息範囲は大阪府ほぼ全域に広がっており,北部,東部及び南部に出没頻度と被害が大きい地域があり,それらの地域で捕獲数も多くなっていた.アライグマ捕獲数と捕獲のあったメッシュ数は,2005年から 2006年にかけて急増していたものの,それ以降は微増にとどまっており有意な増加はみられなかった.また,性比や体重については地域ごとの差はみられるものの経年的に継続するような明確な傾向はなく,全域での平均値にも近年の大きな変動はみられなかった.一方,2012年には推定出産数がほぼ全域で増加していた.以上のことから,大阪府におけるアライグマ生息状況は近年ほぼ一定の状態で保たれているものの,今後急増する可能性があり,継続的な捕獲の必要性が示唆された.今後はわな設置場所や設置期間についての情報を収集し,密度指数である捕獲効率を算出することが必要である.
  • 篠原 明男, 内田 栄太, 井上 比加里, 七條 宏樹, 坂本 信介, 森田 哲夫, 越本 知大
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     哺乳類はセルロースなどの繊維質を加水分解する消化酵素を産生できず,それらを栄養源として利用する草食性哺乳類は,繊維質分解に寄与する微生物を消化管内に共生させている.ウシなどの前胃発酵動物は主に前胃に,ウマ・ウサギなどの後腸発酵動物は主に盲腸に微生物を共生させ,それぞれの消化管を大型化し発達させた.一方で小型齧歯類にも草食傾向の強い種が存在する.その中には前胃と盲腸の両方を発達させ,形態学的には前胃発酵動物と後腸発酵動物の両方の特徴をあわせ持つものもいる.これらの消化管のうち,盲腸は繊維質分解に寄与しているのではないかという報告が散見されるものの,前胃の役割は殆ど明らかになっていない.そこで本研究では,大きな前胃と発達した盲腸をもつトリトンハムスター( Tscherskia triton)の前胃と盲腸内の微生物叢を 16S rRNA遺伝子配列を用いて同定することで,前胃と盲腸の栄養学的な意義を検討した.
     前胃および盲腸内容物から抽出した DNAから,16S rRNA遺伝子(約1400bp)を PCR法によって網羅的に増幅し,サブクローニングを経て塩基配列を決定した.前胃から 234クローン,盲腸から268クローンの配列を解析したところ,前胃では Lactobacillus属(乳酸菌)が優占的に検出され,その多様性は大型反芻獣の前胃内微生物叢と比較して極めて低かったのに対して,盲腸内からは多様な微生物種が検出され,草食性の後腸発酵動物であるウサギの盲腸内微生物叢に匹敵する高い多様性が検出された.これらの結果から,トリトンハムスターの盲腸は繊維質分解に寄与していると考えられたが,前胃は大型の前胃発酵動物とは異なる役割を担っていると推測された.同定された微生物叢から推測する限り,前胃内では乳酸発酵が行われており,前胃は盲腸の補助的な発酵槽として機能している可能性も考えられた.
  • 小池 伸介, 曽我 昌史, 江成 広斗, 小坂井 千夏, 原口 拓也, 根本 唯
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-221
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ニホンジカ(以下,シカ)の密度モニタリング法の一つとして糞を用いた方法(糞粒法や糞塊法)がある.こうした方法を実施する上で,実施場所での糞の分解率を明らかにする必要があるが,実施場所内での糞の分解率に差異が存在する場合には調査精度が低下する可能性が考えられる.糞の分解率には降雨といった気象条件のほか,食糞性コガネムシ(以下,糞虫)の活動が影響することが知られる.また,糞虫の活動に影響を及ぼす要因には季節,植生などが知られるが,気温も大きな影響を及ぼす.そのため,ごく狭い範囲であっても,標高が異なることで糞虫相や糞虫の活動状態に違いが存在する可能性がある.さらに,この違いはシカの糞の分解率にも影響を及ぼしている可能性がある.そこで,栃木県・群馬県の足尾・日光山地において,シカの糞の分解率を異なる標高間(標高600,900,1200,1500m)で調査し,その季節変化についても検討した.調査では,シカの糞を毎月,各標高に設置し,設置後 24時間および 1カ月間隔で糞の分解率を計測した.また,同時に毎月,各標高でピットフォールトラップを用いて糞虫の採取もおこなった.さらに,各調査地では温度も計測した.糞虫の活動には気温が大きく影響し,温度が高いほど活動する糞虫の量は多かった.そのため,糞虫の量や活動期間は標高によって異なった.また,活動する糞虫の量が多いほど糞の分解率も高かった.同じ標高では,糞の分解率は夏期を中心に高かった.また,同じ時期では,糞の分解率は低標高ほど高かった.一方,糞虫が飛来しない冬季には,設置した糞は翌春まで分解されはじめなかった.以上の結果より,標高差のある山岳地帯で,糞を用いたシカの個体数推定法を用いる場合には,標高間の糞の分解率の違いにも考慮し,実施時期等を検討する必要があるといえる.
  • 松浦 友紀子, 高橋 裕史, 伊吾田 宏正, 池田 敬, 東谷 宗光, 梶 光一, 日野 貴文, 吉田 剛司
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-222
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ニホンジカの個体数増加や分布域拡大がもたらす諸問題の激化に伴い,日本各地で効率的な捕獲方法が模索されている.効率的な捕獲のためには,複数の手法を組み合わせることが効果的と考えられ,環境条件や社会条件に応じてワナや銃器を用いた捕獲が選定される.各方法についての捕獲効率は,単位期間や捕獲試行回数当たりの捕獲数により評価される例が多くみられる.しかし,この方法で算出された捕獲効率では,捕獲対象個体群の個体数が考慮されておらず,個体数調整としての効果が不明瞭である.そこで本研究は,各捕獲方法が個体数調整に及ぼす効果を明らかにすることを目的として,シカの捕獲を実施した.すなわち,個体数管理対象地域に複数の捕獲サイトを設定し,各捕獲サイトにおいて捕獲対象となる「ターゲット」個体数を推定し,ターゲット個体数に対する捕獲頭数を捕獲効率として,各捕獲方法の効果を検討した.調査は長年にわたり生息数調査がなされており,精度の高い生息密度推定が行われている洞爺湖中島で行った.観光地でもある本調査地において,安全性と地形等を考慮し,島内に 3つの捕獲サイトを設定し,構造物を用いた捕獲(追い込み捕獲,囲いワナ捕獲)と銃器を用いた捕獲(餌付け有,無)を選択し,2012年 3月から捕獲を実施している.各サイト内に複数設置した自動撮影装置画像から得られた撮影頻度と群れサイズを用いて,各捕獲サイトのターゲット個体数を推定した.捕獲開始時の生息数は 277頭(55.4頭/km2)と推定されていたが(梶 未発表データ), 2013年 6月までに 100頭以上の捕獲を行い,生息密度は 33頭 /km2程度に減少した.今回は,管理目標としている 50頭(10頭/km2)に達する前の途中経過として 2013年夏までの結果を報告する.
  • 上田 弘則
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-222
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     これまでにイタリアンライグラス,トールフェスク,エンバク,ライムギ,オーチャードグラスという 5種類の寒地型牧草の中で,ライムギが最もイノシシによる採食被害程度が低いことを明らかにした.イノシシの出没頻度の低い地域では,被害がほとんどなかったのに対して,出没頻度が高い地域では 4割弱の被害が発生したことを昨年度報告した.今回は,ライムギを播種する時期を変えることで,イノシシによるライムギの採食被害割合をさらに下げられるかどうかについて明らかにした.島根県大田市の採草地に 8.4aの試験区を 4つ設定して,9月下旬,10月中旬,11月上旬,12月上旬にライムギを播種した.播種後にエクスクロージャーを設置して,翌 5月にエクスクロージャー内外で牧草を刈り取って乾燥重量を計数した.また,各試験区に自動撮影カメラを設置してイノシシの試験区の利用頻度を明らかにした.いずれの試験区でも,イノシシの利用頻度は播種後 2~ 3ヶ月にピークがみられたが,ピーク時の利用頻度には試験区ごとに差がみられ,12月区の利用頻度が最も高く,次いで 11月区, 10月区, 9月区の順で低くなった.このようなイノシシの利用頻度と対応するように,5月に刈り取ったエクスクロージャー外の現存量は,12月区で最も低く,次いで 11月区,10月区,9月区の順で高くなった.ただし,有意差がみられたのは,12月区と 9月区,12月区と 10月区の間だけであった.エクスクロージャー内の現存量の結果も踏まえて,播種時期の違いによるイノシシのライムギの採食被害の軽減効果について考察する.
  • 西 信介
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-224
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     2013年 3月に鳥取県鳥取市にある湖山池でワモンアザラシ( Pusa hispida)が目撃された.湖山池は周囲17.5km,面積6.8km2,平均水深 2.8mと浅く,日本で最も大きい池である.長さ 3.2kmの湖山川を通じて海と繋がっている汽水湖だが,1963年に湖山川河口近くに水門が設置され,湖山池周辺農地の塩害対策で海水の流入は制限されてきた.しかし,湖山池の富栄養化でヒシが大発生し,その腐敗臭が大問題となり,2012年 3月 12日に水門設置後初めて水門が全面開放され,高塩分化が図られている.
     2013年 3月 7日午後 2時 45分頃,地域住民が湖面に静置された漁具(産卵床)の上にいる海獣を見つけ,地元 TV局に連絡,翌日午前にその TV局が撮影に成功し,午後には全国放送された.当初,撮影された映像から,その海獣は,ゴマフアザラシかゼニガタアザラシの子供と推察されたが,その後撮影された写真,映像によってワモンアザラシで,成獣のメスの可能性が高くなった.ワモンアザラシは日本海から湖山川を通って湖山池に進入したと思われた.
     3月 7日から 26日までの 20日間で,目撃された日は 11日(以上)だったが,確実な目撃情報は最初に確認された漁具周辺のみで,その場所は,海に続く湖山川から最も遠い場所に位置する小さな入り江である.天候は晴れか曇で,波の無い穏やかな日に,入り江入口付近の漁具に上った.漁具は岸から約 30mの場所に固定されており,近くの桟橋で 20m弱まで近付くことができた.そのワモンアザラシは,最初は人間の声に反応して水中に潜っていたが,1週間程で,大声で話しても,カメラのフラッシュの光にも,警戒している様子だが,逃げなくなった.目撃された時間帯は,初めて目撃された 3月 7日のみ午後であったが,それ以降は,夜明け後から午前 11時頃の間で,短い時は十数分,長い時は 3時間以上漁具の上に滞在し,1日に複数回,漁具に上ることもあった.
  • 浅野 舞, 和田 直己
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-225
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     哺乳類は様々な移動運動を行う.陸生哺乳類は,速く移動するために歩数を増やし歩幅を広くする.さらに歩容を変えることで,より速い移動を可能にする.歩容は速度が上がるにつれてwalk → trot → gallopと変化する.多くの陸生哺乳類が最高速度で走るときに用いるのが gallopである.ウシ科動物のアンテロープは移動運動の速さを特徴とする.アンテロープの仲間には小型の,ブラックバック,スプリングボック,トムソンガゼルなどで,顕著な跳躍を移動運動の特徴とするものがいる.これらの動物はその跳躍で特徴づけられる.本研究の目的は,その中のブラックバック Antilope cervicapraが,gallop時の跳躍の高さをどのように制御しているのかを解明することである.
     実験は姫路セントラルパークで行い,ブラックバックの走行を 300fs/secで撮影し,モニター画面上で体軸と関節にポイントをとった.高さはキ甲の高さを基準に,低・中・高と分類し,その時の運動解析を行った.
     その結果,跳躍を可能にするメカニズムが前肢と後肢に確認された.その結果について報告する.協力姫路セントラルパーク,安佐動物園
  • 池田 敬, 松浦 友紀子, 高橋 裕史, 吉田 剛司, 村井 拓成, 梶 光一
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-225
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ニホンジカの密度推定には,区画法や糞粒・糞塊法などが利用されているが,これらの手法は膨大な調査努力量が必要であり,ハビタットや調査時期によって制約される.カメラトラップ法は調査面積が狭いという問題はあるが,これらの制約を緩和して利用できる.この手法は,主に密度推定に標識再捕獲法を用いているが,個体識別の困難な種では,標識装着のための捕獲に膨大な労力がかかる.そのため,個体識別の必要ない手法(Rowcliffe法)を適用し,精度の高い密度を得ることが可能となれば,様々な種に有効な手法となる.Rowcliffe法は閉鎖個体群では精度と確度が共に高い推定値を得たが,移出入のある開放系での検証は行われていない.そこで,開放系のエゾシカ個体群で Rowcliffe法による密度推定の精度を評価した.2012年 6月 ~11月に支笏湖周辺の針広混交林(1000ha)に自動撮影装置を 30台設置した.
     Rowcliffe法には,カメラから得られる群れサイズ,支笏湖周辺のエゾシカに装着した GPS首輪から算出される移動速度データを利用し,密度を推定した.推定密度の精度には,平均と標準偏差から算出した変動係数を用いた.
     推定密度は 10.7~26.9頭 /km2で変動し,7月 ~9月は安定した一方で,それ以外の時期では変動した.変動した要因としては,10月は繁殖期のためオスの活動量が増加し,それに伴い撮影頻度(頭 /日)が上昇すること,11月は季節移動により全体の撮影頻度が減少することが考えられる.また,変動係数は 0.09~0.17となり, Rowcliffe法は精度の高い手法であり,撮影枚数が多い場合に精度が高くなることが示唆された.
     以上の結果から,Rowcliffe法は繁殖期や季節移動の時期は安定した推定密度を得ることが難しかった.そのため,精度の高い密度指標を得るには,これらの時期を避けて使用した方が良いと考えられる.しかし,全体を通して Rowcliffe法は精度の高い密度推定が可能であった.
  • 中別府 奈央, 和田 直己
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-227
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     シロテテナガザル Hylobates larのbrachiation(腕渡り)は,掴み手を支点とし,身体の重心をおもりとした単振り子に例えて説明される.シロテテナガザルは自らの筋活動により,この振り子の形態を変えることで運動の方向と速さを変化させることができる.自然界で不規則に伸びた枝々の間を俊敏かつ自由自在に移動するシロテテナガザルにとって brachiationをコントロールするのは重要なことである.では具体的にシロテテナガザルは身体のどの部位をどのように動かすことで運動を変化させているのであろうか.シロテテナガザルの brachiationを観察していると,進行方向や速さを変化させるときに大きく後肢を動かしているのが分かる.この事から,brachiation時の運動の変化には後肢の積極的な運動が重要な役割を果たしているのではないかと考えた. 本研究では,シロテテナガザルが brachiationの向きや速さを変えるときどのような動きをするのか,特に後肢に注目して, ① continuous-contact brachiation時, ② ricochetal brachiation時, ③brachiationを行いながら方向転換を行った時,の 3つの場合において動画を撮影し,2D Dippmotionを用いて運動解析を行った.
  • 浜井 美弥, 伊佐 正, 中村 克樹, 山根 到
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-228
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニホンザル」は,生理学研究所(代表機関)と京都大学霊長類研究所(分担機関)の協力体制のもと,研究用ニホンザルの飼育下繁殖と提供事業を行っている.これまで主に脳神経科学研究分野からの申請を対象に,厳正な審査を経て過去 7年間で合計30の大学・研究機関に 355頭を提供,その成果論文は高次脳機能に関わる病態解明と治療,BMI,再生医療など多様な医療技術開発に寄与する基礎研究分野で公表され始めている.
     平成 22年度には次世代シークエンサーによるニホンザルゲノム多型解析とブラウザ構築に着手,23年度は専門家の助言のもと,冊子「ニホンザルの感染症について」を編纂した.また,プロジェクトの意義を周知するための広報活動も積極的に展開し,研究者コミュニティの情報共有,意見交換の場として,メーリングリスト,実験動物使用者会議などを運営,ニホンザルの適正な飼養に寄与する基礎データの蓄積,霊長類の実験使用をめぐる国内外の動向,実験動物福祉に関する最新情報の収集も行っている.
     事業の運営方針は,関連諸機関から実験動物学,霊長類の生態・飼育管理の専門家,法曹関係者なども含めて構成された委員会に,各分野の専門家をアドバイザーとして招聘し審議の上決定している.提供申請の審査に際しては,実験動物の福祉向上,実験の適正化に関連する法令,ガイドラインが遵守されていること,実験計画が各機関の実験動物委員会の承認を受けていること,サル生体を取り扱う研究者全員がプロジェクト主催の講習会を受講済みであることなどを条件とし,公平かつ透明性の高い運営と研究者のコンプライアンス意識の向上を目指している.
     本発表では過去 11年間の活動内容総括とともに,将来の課題,展望について報告する.
  • 平田 滋樹
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-229
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     全国の野生鳥獣による農業被害額は年間 200億円にのぼり,営農意欲や定住意欲の減退にも繋がる深刻な社会問題となっている.そのため,イノシシ被害に対して,都道府県は特定鳥獣保護管理計画を,市町村は被害防止計画を策定し, ①防護柵の設置等による「被害管理」, ②緩衝帯の整備や誘引物の除去等による「生息地管理」, ③有害鳥獣捕獲等による「個体数管理」の総合的な管理を進めながらイノシシと人間の軋轢回避に努めている.
     長崎県においても約 5億円の農業被害が発生し,うち 8割をイノシシが占めており,対応策として防護柵の設置,誘引物の除去および家畜放牧による緩衝帯整備,有害鳥獣捕獲等による個体数調整に加え,これらの管理を推進する人材の育成にも力を入れている.このような取組により,イノシシ被害額は減少し,被害発生地域も縮小傾向にある.しかしながら,イノシシ被害は依然として高水準にあり,管理の実行性と効果を検証し,取組を継続する必要がある.
     そこで,イノシシの管理方法の中で把握しやすく研究開発の事例が多い防護柵による被害管理を中心に,被害発生地でのイノシシ管理の現状把握を行った.その結果,2010年度に被害が発生した 704地区のうち,防護柵設置を検討しているのは 291地区にすぎず,被害が発生していても被害管理が行われない地区が 6割にのぼることが明らかとなった.また,被害が深刻な 208地区の 3割が何らかの柵を設置しており,柵があっても効果が十分得られていない可能性が示唆された.これらのことから,イノシシ被害を軽減するためには,被害管理が行われるべき地域の意識を高めるとともに,被害管理を行っている地域において効果を向上させる必要があるといえる.
     今後は過疎高齢化が進む中でイノシシ管理のスピード化と効率化が求められることから,防護柵がイノシシに侵入される要因とそれを防ぐ技術について体系化を進めたい.
  • 鈴木 嵩彬, 池田 透
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-230
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     外来生物アライグマは,全国各地に生息範囲を拡大し,その対策は広域的連携を必要とする.しかし,現状では各自治体が個別に農業被害防止を目的とした捕獲事業を展開しているだけで連携が取れておらず,基本的捕獲手法や対策効果に関する情報も共有化されていない.各地で展開されている多くの対策は被害が出てからの対症療法的捕獲が中心であり,無計画に実施されている為,アライグマの完全排除どころか地域的根絶もおぼつかない状況にある.アライグマの侵入初期から対策終期までの対策全体を見通した状況の把握と対策体制構築が課題である.本研究では,このような現状の打開策としての対策のネットワーク化,及び対策情報の共有化について,その必要性と可能性について検討する為,都道府県の外来生物対策担当者を対象としたアンケート調査を行った.アンケートでは,対策の現状・対策に際し直面している,又は将来的に直面しそうな困難・対策情報を共有するネットワークへの期待,の 3項目(計 62問)について調査を行った.
     41都道府県よりアンケート回答があった.その結果,対策の現状として,捕獲後モニタリング調査や対策手法の見直しを実施せず,防除成果の指標を設定していないと回答した自治体が過半数であり,順応的管理が円滑に行われていないことが示唆された.また,困難として,地域におけるアライグマの現状(生息密度など)が不明,予算不足,自治体担当者の人員不足が多く回答された.期待として,防除実施自治体の 7割,未実施の 9割以上がネットワークに期待すると回答しており,特に各地の事例共有や対策手法の共有などが期待された.以上より,対策に利活用可能な情報を共有し,予算や人員,時間を削減可能な対策情報の共有ネットワークは必要であり,ネットワークとして担当者の負担を軽減する機能などの必要性が示唆された.
  • 鈴木 哲, 湊秋 作, 饗場 葉留果, 岩渕 真奈美, 森田 哲夫
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-231
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ニホンヤマネ(Glirulus japonicus)の生態は不明な点が多いことから,本研究では冬眠から覚醒する過程におけるニホンヤマネの生理的な変化を非接触で観察する試みを行った.
     調査は 2013年 2月 26~ 3/1日の期間,7頭を対象個体として行った.冬眠中の対象個体を計測システムに移すことで刺激を与え,覚醒状態まで移行する過程を観察することとした.その間,マイクロ波を用いて非接触で心活動,呼吸活動を計測するとともに,赤外線サーモグラフィにより非接触で体表面温度の変化を併せて計測した.このマイクロ波のセンサは,安全性と電波法に配慮し,一般の無線 LANに用いられる 2.4GHz帯のものを用いた.解析については,センサからの出力波形に対し,心活動,呼吸活動それぞれに相当すると仮定した周波数帯(心活動:1~10Hz,呼吸活動:0.5~4Hz)のピーク周波数変化を観察することとした.
     その結果,時間経過に伴い,心活動,呼吸活動のピーク周波数が共に上昇することが確認でき,さらに覚醒するまでの時間と環境温度の間には相関が確認された.また,覚醒し活動を始める直前には,心活動と呼吸活動の上昇率が変化する対象個体も確認された.その他,体毛があるためあくまでも参考として計測した赤外線サーモグラフィによる体表面温度の変化と呼吸活動との間に強い相関が認められるなど,いくつかの知見が得られた.
     これらの生理学的な意味や仕組みに関しては今後検討する必要があるが,マイクロ波など非接触によるセンシング技術によって,冬眠過程の観察も十分可能である示唆が得られた.
  • 嶌本 樹, 古川 竜司, 鈴木 圭, 柳川 久
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-232
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     タイリクモモンガ Pteromys volansは森林分断の影響を受けやすいと言われており,現在でも生息地の分断化・減少は多くの地域で進んでいる.本種が生息する林分の特徴を把握することは,保全対策を行う上で重要であるが,生息確認法は確立していない.夜行性かつ小型である本種は,直接観察が困難であるが,糞による生息確認が可能である.そこで糞による効率的な生息確認法を確立するために,本種の糞がよく落ちている場所の特徴や森林面積の違いによる調査努力量の変化を検討した.タイリクモモンガの生息が確認されている 11林分(面積0.42-13.69ha)において,10mのラインをランダムに 12本引き,両側 2mの範囲で糞の有無を確認した.本種がよく着地する大径木の近くに糞がよく落ちていると考え,糞の発見場所から最も近い樹木までの距離とその樹木の DBHを計測した.それらを,糞が確認されなかった樹木と比較するために,ランダムに選択した樹木の DBHとそこから最も近い樹木までの中間距離を計測した.GLMMによる解析の結果,糞は樹木に近い場所でよく発見されたが,DBHの影響は見られなかった.本調査では,発見された糞の 9割以上が樹木から 1m以内の範囲にあったため,樹木から 1mの範囲内で本種の糞を探すと良いだろう.次に,森林面積が大きくなるにつれて糞を探す努力量を大きくする必要があるかを検討するため,森林面積により糞の発見ライン数が変化するかどうかを解析した.糞の発見ライン数は 11地点で計 68本であり,1地点につき平均 6.2本であった.GLMによる解析の結果,森林面積は糞の発見ライン数に影響しなかった.そのため,森林面積の大きさによって,糞を探す調査努力量を変えなくてもよいことがわかった.本調査の結果では平均 6.2本のライン上で糞が発見され,1地点につき 5本以上のラインを引いて糞を探すことで,95%以上の確率で糞を発見することが可能であることがわかった.
  • 髙木 貴史
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-233
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
    会議録・要旨集 フリー
     ヒトは四足歩行動物から進化して二足歩行を獲得した動物である.四足歩行から二足歩行への移行は人類の進化を理解するために重要なテーマである.本来四足歩行動物であるラットは二足歩行トレーニングにより,安定した二足歩行能力を獲得する.我々は 2008年にラットの二足歩行モデル(RBWM:Rat Bipedal Walking Model)を確立し報告した.RBWMの成立過程は四足歩行のメカニズムが二足歩行へ変化する過程である.我々の RBWMにおける四足歩行と二足歩行の筋電図学的,運動学的研究は四足歩行と二足歩行の運動制御の類似性を示していた.
     本研究の目的は RBWMが二足歩行を行う時,移動運動に最も重要なパラメーターである速度の変化に対してどのように制御していくのか解明することである.実験には特別なトレーニングにより二足歩行能力を獲得した RBWM8匹( ♂ 3匹 ♀ 5匹,BW; ♂ 449~498g, ♀186~299g)を使用した.5cm/sec,6cm/sec,6.5cm/sec,7cm/sec,7.5cm/secの 5段階に速度設定したトレッドミル上での二足歩行及び四足歩行をハイスピードカメラ(300fs/sec)で撮影,同時に体幹と後肢の 7つの筋活動を記録した.特に速度変化へ歩数,歩幅をどのように制御しているか注目して解析を行った.
  • 城ヶ原 貴通, 井上 直子, 坂田 一郎, 宮戸 真美, 宮戸 健二, 金子 たかね, 飯田 弘, 織田 銑一, 易 勤, 山本 靖彦, 尾 ...
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-234
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     スンクスは,ジャコウネズミ(Suncus murinus)の実験室系統であり,1973年長崎県長崎市茂木町での採集個体より実験動物化が開始された.今年でスンクス実験動物化 40年を迎え,現在では国内外の様々な分野の研究にスンクスが利用されている.これまでに,国内外の複数の地域で捕獲調査が行われたが,現在は繁殖率がよく,スンクスの標準系統である KAT系統(ネパール,カトマンズ)をはじめとし,ミュータント系統を含め複数系統(亜系統含む)が育成・維持されている.
     スンクスは食虫目(=真無盲腸目)に属すため,一般的な実験動物であるマウス,ラットとは異なり,様々な種特異性を示すことが知られている.その一例として,消化管ホルモンであるモチリンの存在,嘔吐反射,ビタミンA催奇形性高感受性,卵巣摘出下での妊娠持続などがあげられる.このように,スンクスはマウス,ラットでは明らかにすることのできない様々な生物現象にアプローチできる非常に有益なモデル動物である.しかしながら,研究コミュニティーが小さく,ゲノム情報,トランスジェニックスンクスの作製,胚移植・凍結保存技術など実験動物として求められる多くの情報・技術の構築が遅れているのが現状である.
     我々は,2013年度より文部科学省科学研究費新学術領域研究,ゲノム支援の企画課題としてスンクスゲノム解析プロジェクトを開始した.本発表では,現在プロジェクトに参画している研究機関におけるスンクス研究を紹介するとともに,スンクスの実験動物としての有用性と展望を紹介する.
  • 田代 靖子, 五百部 裕
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-235
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     アフリカに生息するオナガザル科霊長類のうち,コロブス亜科では,母親以外の個体が新生児の面倒をみる行動が頻繁に観察される.またオナガザル亜科でも,サバンナや疎開林といった開けて乾燥した環境下に生息するヒヒ類やベルベットモンキー,パタスモンキーなどでこのような行動が頻繁に観察されている.一方森林に生息するグエノン類では,飼育下でこのような事例が観察されているものの,野生下での観察例は多くない.こうした中,ウガンダ共和国カリンズ森林でのロエストモンキーの観察中に,新生児に対するアロマザリング行動を観察したので報告する.
     カリンズでの断続的なロエストモンキーの観察は 1997年に開始され,2011年には現在継続して観察されている群れの個体識別が完了した.今回報告する資料を収集した調査期間は 2013年 2月 13日から 28日と 4月 25日から 5月 7日,2月の観察開始時の調査対象群の個体数は,2013年 1月 13日生まれと推測される新生児を含め 10頭であった.
     2月の観察期間中には,新生児は母親に運ばれていることが多かった.一方で,この新生児を母親以外の個体が面倒をみる行動もたびたび観察された.面倒をみた個体は新生児の姉と推測されるわかもの雌 1頭と,血縁関係がないと推測されるわかもの雌 2頭,血縁関係不明のわかもの雌 2頭であった.そして最長 2時間あまり,新生児は母親から離れて別の個体の世話を受けていた.4月から 5月の観察期間中には,新生児は母親に運ばれず自分で移動することが多く,母親以外の個体が面倒を見ることは少なくなっていた.本報告では,母親と新生児,そしてアロマザリング行動を行った個体のアクティビティ・パターンや採食時間などの分析から,この行動が生起した要因を考察する.
  • 小川 奈津子, 吉田 英可, 加藤 秀弘
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-236
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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    【目的】小型鯨類のスナメリに対する飛行機目視調査の発見データから,個体数推定のための有効探索幅を推定する.
    【方法】ライントランセクト法に基づく調査を,スナメリの 5主分布域 (仙台湾~東京湾,伊勢湾・三河湾,瀬戸内海,有明海・橘湾,大村湾 )で行った.本種の岸よりの分布 (KasuyaandKureha1979)を考慮し,海岸線に対し調査コースを垂直に設置するよう努めた.仙台湾~東京湾,伊勢・三河湾,有明海・橘湾,大村湾では緯度線に (以下,緯線調査),瀬戸内海では経度線に (経線調査),平行に調査コースを設置した.吉田ら (2013)に準拠し 2名の観察者が小型セスナ機に乗り,左右の海面を探索した.スナメリ群発見時,横距離 (群への伏角と高度から計算 )を記録した.有効探索幅は緯線調査と経線調査で別々に求めた.海面反射が探索に与える影響を除くため,緯線調査では調査コース南側の発見は除いた.Beaufort風力階級 3以上での発見は除いた.調査海域・年毎に,左右観察者間で横距離別の発見頻度を KS検定により比較し,差が認められなければ左右の発見を統合し年間で比べ,最後に海域間で比較した.有効探索幅はプログラム DISTANCEVer.6.0(Thomas,et al.2009)により推定し,モデル選択はAICによった.
    【結果】緯線調査は2002年11月~2012年8月に30回行われ,712群 1,287頭の発見があった.経線調査は2003年1月~2006年12月に14回行われ,209群 326頭の発見があった.両調査とも,観察者間,年間,海域間で発見頻度に差はみられなかったため(p<0.05),各々全データを統合した.横距離別の発見頻度は,両調査とも横距離 80mまで増加した後,減少に転じた.機体下方向の見落としが多いものと考え,横距離 80mでの発見率を 1と仮定した.緯線調査では Hazardrateモデル (調整項なし )が,経線調査では Uniformモデル (Cosine)が選択され,有効探索幅はそれぞれ 102m(CV=4.8%)と 97m(CV=6.2%)と推定された.
  • 野瀬 遵, 小林 秀司
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-237
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     ヌートリア Myocastor coypusは南米原産の適応力に優れた特定外来生物である.我が国において,輸入した繁殖個体が戦中・戦後の 2度にわたる毛皮需要低下により放逐され,各地で生息域を拡大している.岡山県では,生息条件が良好であった児島湾干拓地帯に放たれたものが定着するとともに,1970年代以降に県下一円に分布を拡げたと考えられている(三浦,1976). 岡山県においてはヌートリア駆除が促進されているが,この数十年ヌートリアによる農業被害額に大きな変動はみられず,従って個体群構造が比較的安定している可能性が示唆されている(小林ら,2012)
     野生動物の駆除や保護を目的とする場合,その対象生物の生態の把握は必須.である.しかし,我が国におけるヌートリアの生態そのものに関する報告は三浦(1970,1976,1977,1994)に留まり,行動圏を長期的に調査した研究はない.そのため,岡山県笹ヶ瀬川にて,ラジオテレメトリー法を用いて,長期的なヌートリアの行動圏とコアエリアの推移を明らかにするべく個体追跡調査を開始した.調査個体は目視調査により,使用している巣穴が特定されていることと,縄張りをすでに確立していると考えられる比較的大型の個体を対象とした.捕獲した個体にヌートリア用インプラント発信器(CIRCUIT DESIGN,INC.社製 LT-04)を埋め込み放逐した.電波の受信には指向性のある 3素子八木アンテナ(有山工業社製 YA-23L),オールモード受信機(アルインコ社製 DJ-X11)を使用し,ラジオテレメトリー法による個体追跡調査を行った.
     研究個体の現段階における日周期リズム・行動圏とコアエリアの算出・行動圏利用に関して報告する.また,今後は長期的にデータを積み重ね,ヌートリアの生態解明を目指す.
  • 森光 由樹
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P-238
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     野生動物の行動の研究は,これまで直接観察法が主体であった.しかし,多くの野生動物は人間を忌避し,観察が困難な場合が多い.野生動物に超小型撮影装置を装着し,動物側から撮影し情報を収集することで,生息環境,採食物の種類や量,個体間との関係について,より詳細に情報収集することが可能となる.報告者は,昨年,ニホンザルの首に装着可能な超小型ビデオカメラを開発し,新技術の有効性について報告した.本研究では,さらに,ビデオカメラを小型化し,動物への負担を軽減するとともに,バッテリーの蓄電量を上げ,長期間の撮影を試みた.撮影機本体は,電源とともに防水ケースに収納し,脱落機能の付いた発信器首輪 に取り付けた.総重量は,200g とした.カメラは,内蔵の超小型タイマーを利用して,録画時間の設定を行った.この機能を利用することで,省電力が可能となった.撮影スケジュールは,スキャニング法を用いて,朝 6時から夕方 6時の 12時間を 30分間隔で 5分間撮影させた.120分 /1日のスケジュールで,1週間撮影を設定した.録画媒体は,小さく軽度で記録容量が多い SD カードを採用した.捕獲不動化したニホンザルの首下にカメラを装着し,指定した時間に脱落させ,後日,カメラを回収し動画を解析した.その結果,生息環境,採食物,個体間の関係のデータを入手することができた.採食物は,6種が確認できた.本法は,今後,バッテリーとメモリー容量を上げることで,さらに詳細なデータが入手できると思われた.
  • Shou-Li Yuan, Yu-Wen Lo, Xing-Mei Jian, Liang-Kong Lin
    セッションID: PT-1
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     Asiatic water shrews (genus Chimarrogale) are small semi-aquatic insectivores inhabiting mountain streams. Ecological studies suggest they mainly consume aquatic invertebrates as food but details regarding prey species are still poorly understood. In Taiwan, the impact of typhoons dramatically change community structure of.aquatic invertebrates in every summer. The density and species richness of aquatic prey is much lower during.the summer season. We hypothesized that water shrews may change their prey usages to use more terrestrial invertebrates in this period. To answer these questions, stomach contents from 16 specimens of water shrews in Taiwan were examined. We calculated percentage of occurrence frequency and relative volume of prey items. Results confirmed water shrews used aquatic invertebrates as their main food which is similar to studies in other counties. But unknown items occurred 39.13% in frequency which was higher than other studies. Trichopteran (frequency=93.75%, volume=42.72%) and ephemeropteran (frequency=87.50%, volume=28.84%) nymphs.were the most frequently occurred items in stomach contents. We also identified some fragments of spider (frequency=12.50%, volume=0.97%), which indicated Taiwanese water shrew occasionally used terrestrial preys. Moreover, fish scales were also found in stomach contents with frequency in 12.50% and volume in 10.94%, which indicated Taiwanese water shrews could collect fishes but the proportion was much lower than aquatic insects. Water shrews consumed aquatic invertebrates annually. We found no evidence of changing preys during the summer season. Although our conclusions were limited due to insuffcient of sample size, the results can give a baseline information that keeping stable aquatic invertebrate communities is crucial for sustaining population of water shrews in Taiwan.
  • Po-Jen Chiang, Shi-Cao Tsai
    セッションID: PT-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     Tataka and Mt. Yushan in altitude 3,952m, which is the highest mountain of Taiwan and East Asia, is the most important recreation area of Yushan National Park. It has the vulnerable alpine ecosystem threatened by.global warming and heavy recreational pressure. We started camera trapping at Tatachia from 2009 April and.extended to Mt. Yushan trail from 2010. We deployed camera trapping with extra effort around the Paiyun mountain lodge in 3 different distances from the lodge assess its influences of backpacker activities rashes on the mammals. In addition, camera traps were placed at Mt. Yushan trail to record the activity and occurrences of hikers. Monitoring of hiker activity revealed the diel activity patterns. Sambar deer (Rusa unicolor) had significantly higher nocturnal activities near trails. Moreover, Formosan serow (Capricornis swinhoei) and sambar deer tended to avoid hiker peak hours at areas closer to trails. Sambar deer, yellow-thraoted marten (Martes flavigula), Siberian weasel (Mustela sibirica), squirrels and rodents except Taiwan field voles (Microtus kikuchii) has the highest occurrence rates near the Paiyun lodge. It is very likely sambar deer and rodents were attracted by the hiker trash and more minerals from human urines. And predators follow prey to exhibit high occurrence rates nearby the lodge. But the Taiwan field voles are plant eaters and don't benefit from human food. They, incontrast, face higher predation pressure ad occurred the least frequently near the lodge. It is recommended to.avoid.leaving.concentrated trash, food remains, or human excrement near the lodge. In summary, it is necessary to further monitor and assess the impacts of human activities to these vulnerable larger mammals and establish sound management for human activities and conservation of wildlife.
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