ソフトウェアの品質や生産性を向上させるために,いろいろな設計技法が提案され用いられている.しかし,品質や生産性に関する問題はいつの時代にあっても重要であり,まだ多くの課題が残されている.本報告では,品質と生産性に密接に関係するソフトウェアの構造に注目する.新藤は,二次元を用いたシステム記述法とサイモンのシステムの準分解の概念に基づいた構造化法を提案している.また,熊・新藤はこうした考えをソフトウェアに適用し,ソフトウェアの構造分析が行えることを報告した.これらの報告では,構造化の計算に数量化3類を用いている.数量化3類により得られるスコアを用いて構造の詳細を検討できる利点があるが,二元表が大きくなると固有値問題を解くための計算に時間がかかるという問題がある.本報告では,熊・新藤の二元表によるシステム記述に対応する二部グラフを作成し,Dulmage-Mendelsohn分解を適用することにより,固有値問題を解くことなく構造化を行う方法を提案する.大規模で複雑なソフトウェアでは,大まかな構造をDM分解で把握し,詳細構造は数量化3類を用いて検討することを提案している.
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