石川馨は,その著書「日本的品質管理」において品質第一をはじめとする六項目が「経営の一つの思想革命」を意味していると述べている.本論文では,これらの項目と石川氏がバックグラウンドにある指摘する状況を関連付け,経営学の問題として検討した結果,そこには極めて重要で現代的に意味深い経営学上の四論点が現れることを示す.第一は,企業の目的は利潤だけではなくて,革新による財の提供であること.第二には,由来を異にするけれども日米共通の縦割りの弊害に対して,機能別管理から進んで,生産過程に沿った所謂横管理中心の組織の研究を要すること.第三に,テーラー主義を否定し,QCサークルはファインエンジニアリングに当たるものとして,これを公式任務とすべきであること.第四に,レイオフや調達に見られる米国式市場主義は望ましいものではなく,蓄積,継続を趣旨とする企業行動を取るべきであること.
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