大気環境学会誌
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57 巻, 6 号
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研究論文(原著論文)
  • 板橋 秀一, 嶋寺 光, 速水 洋, 櫻井 達也
    2022 年 57 巻 6 号 p. 129-138
    発行日: 2022/11/04
    公開日: 2022/11/04
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    瀬戸内地域はPM2.5の環境基準達成率が低く、その地域汚染の要因を解明する必要がある。本研究では、香川県三豊市沖合において、2020年秋季にドローンを用いた海面上PM2.5鉛直濃度分布の集中観測を実施した。センサー類を搭載したドローンにより海面高度10–500 mまでの計測を計15回実施した。風向の鉛直分布からは、日中は高度500 mまで北より(岡山県側)の風であった。10月13日17時の観測では高度500 mまでPM2.5濃度は7 µg/m3前後の低濃度であったが、14日6時には高度500 mまでにわたって30 µg/m3を超える最高濃度が観測され、このとき、高度10–30 mでは逆転層を形成し、下層は南より(香川県側)の穏やかな陸風であった。ドローン計測地点周辺の常時監視測定局の観測でも同様に14日午前中に高濃度が観測され、さらに瀬戸内地域の常時監視測定局を見ると、前日13日夕方から夜にかけて岡山県側でPM2.5濃度が20 µg/m3前後とやや高くなっていた。数値モデルによる鉛直濃度分布の解析も通じ、夜間に岡山県側から香川県側に輸送されたPM2.5が、中国山地と四国山地に囲まれたこの地域特有の滞留しやすい状況下で早朝に高濃度化した状況が考察された。さらに、瀬戸内地域内の輸送に加えて、中国東北部に由来した東アジアスケールの長距離輸送も影響を及ぼしていたことも考えられた。

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