大気環境学会誌
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59 巻, 2 号
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総説
  • 松田 和秀
    2024 年 59 巻 2 号 p. 23-29
    発行日: 2024/02/22
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    地表面へ沈着した大気汚染物質が生態系へ与える影響を評価する際、これらの物質の大気沈着量を精度よく推計することが重要となる。湿性沈着に比べて乾性沈着は、その量を把握することが難しく推計精度における不確実性は未だに大きい。本総説では筆者が取り組んできたフラックス観測による乾性沈着あるいは大気–地表面交換メカニズム、および乾性沈着推定法による大気沈着量評価に関する研究について、世界的な研究の動向とともに概観した。ここで紹介したフラックス観測は2002年から2021年にかけて、オゾン、二酸化硫黄、PM2.5硫酸塩、PM2.5硝酸塩、硝酸ガス、アンモニアを順次対象としたものである。フラックス測定手法は濃度勾配法と緩和渦集積法を用い、温帯、冷温帯、熱帯に位置する各森林サイトにおいて観測を実施した。窒素成分に関しては農地においても観測を実施した。特に不確実性の大きい森林におけるサブミクロン粒子の沈着速度について、乾性沈着モデルでは考慮されていないいくつかのプロセスに注目して考察するとともに、観測値の不確実性についても議論した。さらに、日本の遠隔域における硫黄および窒素の総沈着量の評価結果を示しつつ、今後の大気沈着研究について考察した。

研究論文(ノート)
  • 松本 潔, 熊谷 遼大, 萱沼 大輝, 小幡 元弥
    2024 年 59 巻 2 号 p. 38-46
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー

    山梨県甲府市の市街地域にておよそ3年間、PM2.5に含まれるメチルアミニウム塩(MA)、エチルアミニウム塩(EA)、ジメチルアミニウム塩(DMA)、ジエチルアミニウム塩(DEA)、トリメチルアミニウム塩(TMA)、トリエチルアミニウム塩(TEA)の観測を行った。これら6種類のアミニウム塩がPM2.5中水溶性有機態窒素(WSON)濃度に占める割合は5.6%であった。また、これらの中ではMAが最も濃度が高い傾向を示した。半分以上のサンプルで濃度が検出下限以下となったEA、TMA、TEAを除くMA、DMA、DEAの3種類のアミニウム塩は、いずれも夏季に濃度が高い傾向を示した。暖候期の発生源として、特にMAとDMAについては、農地や森林の土壌などからガスとして揮散した後エアロゾルに取り込まれるプロセスが重要と考えられる。DEAについては、東京圏からの人為起源エアロゾルの輸送の影響も示唆された。一方、寒候期の発生源としてはバイオマス燃焼が重要であった。その影響は、特にMAで顕著であった。

研究論文(技術調査報告)
  • 石割 隼人, 武田 麻由子, 代田 寧, 長谷部 勇太, 朝倉 純, 小松 宏昭
    2024 年 59 巻 2 号 p. 30-37
    発行日: 2024/02/22
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    生物に由来する成分の寄与を確認するため、PM2.5中のタンパク質について神奈川県内の都市部と山岳部で季節ごとに採取した試料をマイクロBCAタンパク質アッセイに供することで定量を行った。その結果、都市部と山岳部の両方の試料にタンパク質が一定量含まれていることが確認された。また、PM2.5中のタンパク質濃度は日間変動が確認され、春季および夏季においては都市部と山岳部は同様の日間変動が認められたが、秋季および冬季においては異なる日間変動を示し、また、山岳部より都市部の濃度が高い傾向であった。PM2.5の質量濃度に対するタンパク質濃度の寄与割合を求めたところ、平均で2割前後であることが明らかとなった。さらに、PM2.5中のタンパク質濃度と有機炭素成分および水溶性有機炭素成分濃度の相関が、採取地点や採取時期によらず常に高い傾向であった。なお、一般的なタンパク質であるウシ血清アルブミンを用いて有機炭素分析および水溶性有機炭素分析を行ったところ、それぞれ定量的な応答が認められたことから、これまでPM2.5中に有機炭素成分や水溶性有機炭素成分として検出されたものの中にタンパク質に由来するものが相当量存在していることが示唆された。今後、PM2.5にタンパク質のような生物由来である成分が含まれていることを前提に調査・研究を行っていく必要性・重要性が示された。

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