無機粒子に限定した二次生成粒子の挙動を調べるために, 2006年4月の川崎市においてSPMの高濃度が観測された日を対象として, 測定局に設置されたSPM自動計測器のテープろ紙について水溶性成分濃度を分析した。各成分間の関係, 測定局で同時に測定されたガス濃度, 気象状況及び後方流跡線解析の結果から, Case I (4月12日から13日) 及び II (4月18日から19日) における二次生成粒子の発生及び移流の可能性について考察した。Case Iでは, SPM高濃度時において, NO
3-濃度が上昇し, Cl
-濃度が減少していたことが分かった。この結果から, 高湿度下において, 主としてHNO3ガスの凝集及び海塩粒子への凝縮による二次生成粒子の発生が, SPMの高濃度の一因と考えられた。Case IIでは, SPM高濃度時において, SO
42-及びCa
2+濃度が上昇しており, 後方流跡線解析の結果からは大気塊が中国大陸から日本の関東地方へ流入していることが分かった。この結果から, 中国大陸から移流した黄砂が, SPMの高濃度に寄与したと考えられた。また, これらの結果から, テープろ紙の分析結果及び周辺データの活用によって, 二次生成粒子の発生及び移流を推測できることを明らかにした。
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