グリオキサール(Glyoxal)は大気中に気相とエアロゾル中どちらにも存在するジカルボニル化合物であり、その発生源は主に燃焼過程からの直接排出と非メタン炭化水素の光化学反応による二次生成であることが知られている。グリオキサールはエアロゾルや微小液滴中で二次有機エアロゾル(SOA)を生成することから、その大気濃度や発生源に関する研究が進められている。しかし実大気でのグリオキサールの観測例は限られている。本研究では新規に開発された高感度光吸収法 (広帯域キャビティ増幅吸収法:IBBCEAS) を用いて、2015年8月にFM多摩丘陵(東京都八王子市)周辺のガス状グリオキサールの濃度測定を行った。観測期間中の平均濃度は0.25±0.20 ppbvであり、都市域での観測例と同程度の濃度であった。大気微量成分濃度との同時観測結果との検討から、観測地点周辺のグリオキサールの発生源は光化学反応による生成であることが示唆された。
2013年から2016年にかけて日本の年平均PM2.5濃度は全国的に減少し、環境基準達成率も一般環境測定局で2014年の37.8%から2016年には約88%と大幅に改善された。この理由を、中国での排出量・濃度の減少と化学輸送モデルによるソース・リセプター解析で調べた。中国のPM2.5濃度や衛星計測SO2、NO2濃度は年率約10%で減少し、これは排出量の減少によると考えられた。ソース・リセプター解析は、中国の濃度が20%低下した場合、福岡の年平均濃度の約12%減少を示した。これは2014–2016年にかけての観測された減少量 (約10%) に相当していた。中国で、この排出減少率が継続すると1–2年のうちにPM2.5年平均基準を満たす地点が増加し、日本国内でのPM2.5高濃度越境問題は急速に改善に向かうと考えられる。