大気環境学会誌
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58 巻, 3 号
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研究論文(技術調査報告)
  • 長田 和雄, 小山 慎一, 大塚 克弘, 星 純也, 橳島 智恵子
    2023 年 58 巻 3 号 p. 67-73
    発行日: 2023/03/27
    公開日: 2023/03/27
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    大気中の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds: VOCs)は、光化学反応によりオゾンやエアロゾル粒子を生成する原因物質である。近年は人為的な排出量が削減されて都市域での大気濃度は低下しつつあるが、継続的なモニタリングが必要とされている。本研究では、バッテリー駆動で自動的にパッシブサンプラー(VOCs Solvent Desorption: VOC-SD)の曝露と保管が可能なオートサンプラー(VOC Passive Automatic Sampler: VPAS)を開発した。この装置は8本の吸着管を装着できるので、1試料あたり24時間の曝露で7日分のサンプルと1つのブランクを得ることができる。比較のため、キャニスターによる標準手法(24時間採取)との同時観測を1週間行い、トルエンやエチルベンゼン、キシレンについて解析した。吸着管への捕集量と、キャニスターによる大気濃度と曝露時間の積との間には非常に良い直線関係が見られた。取り込み速度は既往研究とほぼ同様の値が得られた。また、採取時間が24時間と比較的長くても、日ごとの濃度の違いが風向頻度の違いに関連付けられることがわかった。今後、種々のVOCに対する大気濃度レベルでの取り込み速度をVPAS用に整備すれば、遠隔地あるいは商用電力の利用できない場所におけるVOC濃度の経時変化や、面的な分布を把握する際に有用である。

  • 木村 知里, 森野 悠, 永島 達也, 荒木 真, 上田 佳代, 米倉 哲志
    2023 年 58 巻 3 号 p. 74-85
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    大気化学輸送モデル(CTM)は大気オゾン(O3)の濃度を過大評価する傾向にあるため、CTMをO3の環境影響評価に活用するためには計算値のバイアスを補正することが好ましい。本研究では、日本におけるO3濃度場を構築することを目的に、統計的手法と機械学習モデルを用いてCTM結果のバイアス補正を実施するとともに、その再現性を相互比較した。解析対象は2012年の日本で、バイアス補正手法には、平均濃度比補正(手法1)、分位マッピング(手法2)、機械学習モデルの1つであるランダムフォレスト(手法3)を利用した。また、一般環境大気測定局で測定されたオキシダントデータを訓練データとテストデータに分割して交差検証を実施した。いずれの手法でもO3濃度1時間値の平均バイアスは改善されたが、手法3のみが平均誤差と相関係数を改善するとともに、時空間分布を適切に再現していた。また、O3濃度1時間値から算出した日最高8時間値や「40 ppbを超える1時間値の閾値超過分を積算したO3ばく露量」については、手法2・3ともにバイアスを大きく低減していた一方で、手法3のみが平均誤差と相関係数を改善していた。機械学習モデルを用いることで、健康影響と農作物影響に必要なO3濃度指標値のバイアスを整合的に補正できることが示された。また、バイアス補正前後の計算値を用いた、O3ばく露に起因する健康影響と農作物影響の推計結果も合わせて示した。

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