11)Aconitum formosanum は,台湾北部の1500~2000 m くらいのカシ類の林中に生じる茎の横臥する種類である。山本博士は,これと A. Fukutomei を混合された。A. Fukutomei のタイプは極めて不完全であるが,高山帯に生じる茎の直立するものと思われ,もっと小さく,花梗が短かく,雄芯と心皮は無毛である。12)Aconitum Kojimae は台湾南部の高山に生じ,茎,花梗,兜の毛が屈曲していることにより,他のものと容易に区別できる。13)コウヤハンシヨウズルは種としては紀伊半島および四国の山地に分布し,花のすぐ下に大きな苞をつける。この苞の大きさは相当変化があるが,分布と関係し,地方的な変種に分けられる。すなわち,コウヤハンシヨウズル Clematis obvallata は紀伊半島に生じこれは 15~20 mm の長さで,萼片の2/3より長い。大体全縁か,または上部に少し鋸歯があり,紫色を帯びる。しかし,中には,強く欠刻し,ほとんど着色しない葉状の苞をもつものもある。このようなものを,オオミネハンシヨウズル C. o. f. incisa とよぶ。四国産のものは,苞がもっと小さいが,その中,劒山のものは,大体萼片の半分くらいで,多少とも欠刻がある。これがシコクハンシヨウズル C. o. var. iyoensis である。四国西部のものは,更に苞が小さく,大体萼片の 1/4~1/6 くらいであり,ほとんど全縁である。このようなものをイヨハンシヨウズル C. o. var. iyoensis とよぶ。14)Ranunculus ficaria 前にヒメユリキンカとして発表したものは,これの間違いであつたので,ここに訂正する。15)ミヤマカラマツは Thalictrum filamentosum から明確に区別することができず,それの変種とみなすのが妥当である(植物分類地理15巻84項参照)。その場合の学名としては,Th. fil. var. tenerum が用いられているが,これの変種小名は北海道産のものによっている。しかし,北海道産のものは,本州,四国,九州産のものと,少し異なるようである。すなわち,全体がより小さく,小葉はより細く,普通は先の方で浅裂する程度である。根は,ミヤマカラマツのごとく,紡錘状に肥厚もするが,また,しばしば,数珠状に2個所ほどで球形または楕円形に肥厚する。このような数珠の肥厚は,本州産のものにも見られることもあるが,あまり顕著でなく,かつ稀である。
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