植物分類,地理
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50 巻, 1 号
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  • 若林 三千男, 高橋 弘
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    岐阜県南東部および京都市北部,南西部に隔離分布する一新種,Chrysosplenium pseudopilosumを記載した。この種はシロバナネコノメソウ列ser. Pilosaに属し,以下の形質をもつ点で特徴づけられる。1)萼は緑色で鐘状,2)萼片は先が円形またはやや切頭形で萼筒とほぼ同長,3)雄ずいと花柱は萼片から突出,4)葯は黄色,5)子房はほぼ上位またはその約25%のみが基部で萼と癒合する。このような形質の組み合わせをもつ花はシロバナネコノメソウ列のどの種にも見られない。長いストロンを持たないことや種子の形状などからツクシネコノメソウC.rhabdospermum(以下ツクシ),シロバナネコノメソウの仲間C.album(以下シロバナ),コガネネコノメソウの仲間C. pilosumに類似するが,子房が上位に近いというネコノメソウ属の中でも稀な特徴を重視すると,この新種はシロバナに最も近縁と考えられる。しかし萼が緑色で萼片が萼筒とほぼ同長である点はツクシにもよく類似する。最近の分子系統学的研究(Nakazawa et al., 1997)で,シロバナとツクシは単系統群であることが示唆されているが,これを考慮にいれれば,この新種はシロバナとツクシの間をつなぐ分類学的位置をもつものと推定される。また,岐阜および京都に生育する植物の間には,いくつかの形質で違いが見られるので,後者を新変種と認めヤマシロネコノメvar. divaricatistylosumと命名,記載し,基準変種トウノウネコノメ(岐阜県東濃地方に分布することによる)var. pseudopilosum(以下トウノウ)と識別した。ヤマシロネコノメは1)花がやや大きい(直径約4.6ミリ)(トウノウでは3.5-3.8ミリ),2)萼の背軸側に毛が散在(トウノウでは無毛),3)さく果の宿存2花柱の間の角度は,約140。から180。に展開(トウノウでは50。から80。),4)種子表面には半円形のいぼ状小突起が縦に列生し,隆起した肋はほとんど目立たない(トウノウでは隆起した肋上に棒状の小突起が列生),などの特徴をもつことで区別される。
  • 菅原 敬, 堀井 雄治郎
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 13-20
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    チョウカイフスマ(Arenaria merckioides var. chokaiensis)は秋田・山形県境に位置する鳥海山高山帯に固有なナデシコ科の多年草であるが,その性表現は雌個体と両性個体からなる雌性両全性異株(gynodioecy)であることが知られている。この植物では性型の分化に伴い,柱頭の長さにも二型性の分化が生じ,雌花は両性花よりも著しく長い柱頭をつける。この二型性柱頭の機能的意味を探るため,鳥海山野外集団において実際の花粉付着量,果実や種子の生産量を調査した。また実験園へ移植した両性個体を用いて自家不和合性の程度を調べた。その結果,雌花は両性花よりも有意に長い柱頭をもつにもかかわらず,実際柱頭に付着する花粉粒は両性花において多いという傾向が見られた。野外では雌花の長い柱頭は花粉捕獲のうえで実際有利に働いているとはいえないようである。また,野外での結果率や結実率(種子数/花)は両性個体より雌個体においてむしろ高いという傾向がみられた。この結果は花粉付着量と対応しないが,自家受粉による両性花の結実率が他家受粉による両性花の結実率よりも著しく低いという結果を考慮すると,野外における両性個体の結実率の低さには自殖による影響が現れている可能性がある。
  • 菅原 敬, 堀井 雄治郎, 久原 秦雅, 平田 聡子
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    アオモリマンテマは本州北部の青森県然岳とその周辺地域(白神山地の一部),秋田県男鹿半島,和賀山塊の限られた地域に産するナデシコ科の多年草である。この植物は,垂直に切り立った岩壁に生育し,また生育地も互いに離れていることから集団間に何らかの分化が生じていることが予想され,実際野外調査で和賀山塊産の個体は一見して花が大きいように思われた。そこで青森県および秋田県の5集団を用いて,この種の花形態(特に花冠サイズに着目)ならびに核形態を調査した。その結果,秋田県の集団(男鹿,和賀山塊の3集団)は花弁の幅が確かに青森県の集団(然岳,暗門)より広い傾向にあるが,全体としては連続した変異であることがわかった。また,染色体数は2n=72で,集団間に核型においても違いは認められなかった。この染色体数はこれまで報告された日本産種のなかではもっとも多く,同属の染色体基本数x=12を考慮すると倍数性(6倍体)由来と推定された。形態比較や染色体のデータに基づいて近縁と考えられるタカネマンテマとの関係についても若干の考察を試みた。
  • 國府方 吾郎, 小山 博滋
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    オグルマ属の2種ホソバオグルマ(Inula britannica subsp. linariifolia)とカセンソウ(I. salicina var. asiatica)の体細胞有糸分裂中期染色体をアセトオルセイン染色法及び18S ribosomal DNA (18S rDNA)をプローブとした蛍光インシチュ・ハイブリダイゼーション法を用いて観察を行った。ホソバオグルマは染色体数2n=24であり,3つの18S rDNA部位がみられ,そのうち1つではシグナルが他の2つと比べて小さかった。一方,カセンソウは染色体数2n=16であり,2つの18S rDNA部位がみられた。ホソバオグルマにおける3倍体の報告は今回が初めてである。
  • 傳田 哲郎, 横田 昌嗣
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 35-42
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    琉球列島の海岸には,琉球列島固有種であるミヤコジシバリIxeris nakazoneiと,ハマニガナI. repens(2n=16),オオジシバリI. debilis(2n=48)の3種が同所的に生育している。このうちミヤコジシバリは,果実,総苞片,葉などの形態的特徴に基づき,ハマニガナとオオジシバリの雑種であると推定されている。本研究では,これら3種の関係を明らかにするための第一段階として,沖縄島産ミヤコジシバリの染色体数および核形態について調査をおこなった。その結果,ミヤコジシバリには染色体数2n=32,40,48の3つのサイトタイプが存在することが明らかとなった。ハマニガナやオオジシバリの染色体基本数がx=8であることから,染色体数2n=32,40,48のミヤコジシバリは,それぞれ,四倍体,五倍体,六倍体であると考えられる。これら三つのサイトタイプの基本となる核型は,ニガナ属のうちx=8の染色体基本数を持つものと同じであった。四倍体のミヤコジシバリは,染色体数がハマニガナとオオジシバリの中間であることや,これらの種と常に同所的に出現することから,ハマニガナとオオジシバリの種間交雑,あるいはハマニガナと六倍体のミヤコジシバリとの交雑によって生じた可能性が高い。五倍体のミヤコジシバリは,染色体数から判断すると,四倍体のミヤコジシバリとオオジシバリ,あるいは,四倍体と六倍体のミヤコジシバリの交雑によって生じたものと推定される。一方,六倍体のミヤコジシバリがどのようにして生じたかについては,現段階では不明である。
  • 萩沼 一男, KIPIRO DAMAS, ALOIS SITAPAI, 戸部 博
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    パプアニューギニアに自生する被子植物8科9属9種について、若い葉を用いて調べた体細胞染色体の数と形態を報告する。全9種及び6属について初めての報告である。Cansjera leptostachya(オピリア科)は2n=20,Dracontomelon dao(トウダイグサ科)は2n=32,Endiandra brassii(クスノキ科)は2n=30,Endospermum moluccanum(トウダイグサ科)は2n=48,Gymnacranthera paniculata(ニクズク科)は2n=44,Haplolobus floribundus(ブルセラ科)は2n=44,Mishocarpus grandissimus(ムクロジ科)は2n=32,Pimeleodendron amboinicum(トウダイグサ科)は2n=22,Siphonodon celastrineus(ニシキギ科)は2n=28の染色体数をもつことが明らかにされた。
  • H. O. EDEOGA, N. O. OGBEBOR
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ナイジェリア産Aneilemaの4種(A. aequinoctiale, A. beniniense, A. paludosum and A. unbrosum)について光学顕微鏡を用いて,葉,茎,根について解剖学的構造について観察を行った。葉には含有水分のために無色になった大きな下表皮細胞があり,それが貯蔵組織であることを示している。A. aequinoctialeの根には16本の維管束があり8本の維管束がある種と異なっていた。この研究は,Aneilemaの種では解剖学的特徴が分類に有効であることを確かめた。
  • 福原 達人, 秋本 淳一
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 59-73
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    雄性両全性異株の蔓性一年草であるミヤマニガウリ(ウリ科カボチャ亜科ミヤマニガウリ連)の花の特徴,とくに雄しべ・子房室の配列,維管束走行,蜜腺,毛,フェノロジーを観察した。両性花・雄花とも2個の2葯性雄しべと1個の1葯性雄しべを持つ。このような雄しべ構成はウリ科カボチャ亜科の多数の分類群に見られるが,それらでは2葯性雄しべに2本の維管束が入るのに対して,ミヤマニガウリでは各雄しべに入る維管束は1本で,むしろ2葯性雄しべを3本持つグループ(スズメウリなど)と共通する。他のウリ科の多くと同様に葯と葯隔の境界付近に大きな基部細胞を持つ毛があるが,その形状は他の属で既知のものと異なり,球形の細胞が積み重なっている。両性花では葯の裂開と柱頭の成熟のあいだの時間差が小さく,雌性期と雄性期は大きく重なっている。両性花・雄花ともカップ状の花托の底部に蜜腺がある。
  • 井上 延彦, 戸部 博
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 75-79
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ミツガシワ科3属に基づいて,この科が,ユガミウチワ科やキキョウ科にみられるような3から6細胞層の薄い珠皮ではなく,キク科やクサトベラ科に見られるような,10から25細胞層になる厚い珠皮をもつことがわかった。このことから,他で発表されたキキョウ目の分子系統図などに照らして,薄い珠皮から厚い珠皮への進化が,キク科,クサトベラ科,ミツガシワ科,カリケラ科(この科については珠皮の厚さはまた未定)に共通の祖先で起こったことが明らかになった。
  • WONGSATIT CHUAKUL, PROMJIT SARALAMP
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 81-99
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    薬草採集家にインタビューし,さらに標本の採集と同定を行うことにより,Phu Kham Village, Pua District, Nan Province(タイ王国)のTai Lueがどのような薬用植物を利用しているか,調査を行った。採集標本は農業省の二つの標本室(BK,BKF)にある標本と付き合わせて確認した。その結果,58科に属する123種が利用されていることが分かり,そのうち16種類は薬用植物として初めての記録であった。123種の内訳は,双子葉植物が104種,単子葉植物が15種,裸子植物1種,シダ類3種であった。このうち68種が他の薬用植物と混ぜて46通りに使われるが,他の55種は単独で治療に利用されている。
  • 高宮 正之
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 101-138
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
    ミズニラ属の形態,胞子,繁殖様式,細胞学及び代謝について総説した。塊茎,根,葉,胞子嚢の形態学的解剖学的特徴について述べ,それらの分類学的意義について論じた。大胞子と小胞子の形態や変異をまとめた。有性生殖,無融合生殖,栄養生殖を説明し,胞子発芽を解説した。これまで発表のあった世界中の染色体データーをまとめた結果,本属には2倍体(2n=22)から12倍体(2n=132)の倍数性シリーズがあること,8種に種内倍数性があること,調べられた81分類群では2倍体が27,4倍体が30と2,4倍体の割合が高いこと,13の自然雑種があること,等が明らかとなった。これらの結果は,本属において雑種形成と染色体倍加による網状進化が一般的であることを示している。最後に日本産ミズニラ属の分類と類縁について説明した。
  • 永益 英敏, 船越 英伸, 迫田 昌宏
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 139-141
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 藤井 伸二, 永益 英敏, 栗林 実
    原稿種別: 本文
    1999 年50 巻1 号 p. 142-145
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/09/25
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 索引
    1999 年50 巻1 号 p. 146-
    発行日: 1999/08/28
    公開日: 2017/11/17
    ジャーナル フリー
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