日本地球化学会年会要旨集
2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日目)
G9 地球外物質・宇宙惑星化学
  • 羽場 麻希子, 山口 亮, 鍵 裕之, 長尾 敬介, 日高 洋
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A01
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    Esthervilleメソシデライト中で見つかった大きなジルコン(>100μm)について,反射電子像,カソードルミネッセンス(CL)像の撮像,顕微ラマン分光法による結晶度の評価,そして高感度高分解能イオンマイクロプローブを用いた希土類元素定量分析およびU-Pb年代分析を行った.反射電子像,CL像,ラマンスペクトルはいずれも粒子内に部分的にUやREEが濃集している領域が存在することを示している. 207Pb-206Pb年代は4520±27 Maであった.この形成年代はこれまでに報告されているメソシデライト中のジルコンの207Pb-206Pb年代(4563±15 Ma)と比較して有意に若い.従って,メソシデライト中にはメタルとシリケイトの混合時に形成もしくは過成長を起こしたジルコンが存在すると考えられる.
  • 小池 みずほ, 太田 祥宏, 高畑 直人, 佐野 有司, 杉浦 直治
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A02
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    火星隕石AHL 84001は、他の火星隕石に比べ著しく古い結晶化年代と複雑な衝撃変成史を示し、火星の古環境およびその後の進化史を探る上で重要な情報を持つ。一方で、火成のアパタイトやメルリライトなどのリン酸塩鉱物は、存在量は少ないが、マグマ中の微量元素を濃集し様々な情報を与える。特にUやThを含む為にU-Th-Pb年代分析に利用されてきた。本研究では優れた空間分解能を持つNanoSIMSを用いて、隕石中のリン酸塩鉱物のU-Pb年代を直径50-100ミクロンのシングル・グレインの分析で決定した。更に、グレイン内の元素濃度の分布から、隕石の経験した熱史について考察した。
  • 伊藤 正一, 柳井 佳穂里, サラ ラッセル, ジム グリーンウッド, 圦本 尚義
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A03
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    隕石母天体内での流体(H2O)のふるまいは,これまで全く不明瞭であった.これら流体のふるまいに制約を与えるため,近年,リン酸塩鉱物の岩石学的,同位体的研究が盛んに行われてきた(e.g., Jones et al., 2011; Yanai et al., 2012). 本講演では,系統的に,熱変成度の異なるLL4-6のリン酸塩鉱物に含まれる微量結晶水の定量及び水素同位体組成を報告する予定である.
  • 横山 立憲, 三澤 啓司, 岡野 修, Chi-Yu Shih, Laurence E. Nyquist, Justin I. Simon, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A04
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    角礫岩コンドライトから、アルカリ元素に富む岩片が報告された。岩片のアルカリ元素分別過程の解明を目的としたRb-Sr同位体年代学研究から、アルカリ元素分別が太陽系初期に起きたことが示唆された。本研究では、岩片の高いカリウム存在度に着目し、新たにK-Ca同位体系を適用し、岩片のK-Ca年代を求め、Rb-Sr同位体系と併せて、岩片のアルカリ元素分別過程について考察をおこなった。
  • 山野辺 正邦, 中村 智樹, 嘉数 勇基, 石田 初美
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A05
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    CMコンドライト隕石NWA5958のType-A CAIの粗粒なメリライトの10Be/9Be初生比は4.6×10^-2であった。この値はCV隕石中のCAIのメリライトの初生比(e.g. 9.5×10^4;MacPherson et al. 2003,7.2×10^4; Sugiura et al. 2001)に比べ大きな値となった。またCIコンドライトで規格化した希土類元素存在度はEuに正の異常が見られる平坦な存在度を示し、一方酸素同位体比はCVコンドライト隕石中の多くのCAIsのメリライトが16O-poorを示すのに対し、このCM隕石中のメリライトは16O-richであった。以上の分析結果から、このCAIは太陽近傍にて再加熱され、メリライトは再溶融を経験した。またこのCAIは形成後、円盤内で強い太陽宇宙線を浴びたため、10Beが核破砕反応でCAI中に生成されたと考えられる。
  • 日高 洋, 米田 成一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A06
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    ガスリッチ隕石として知られているカポエタ隕石(ホワルダイト)について酸による段階的溶出実験を行い,得られたフラクションのSr, Ba, Ce, Sm同位体測定を行った結果,最初の溶出フラクションから一連のp-過程核種84Sr, 130Ba, 132Ba, 136Ce, 138Ce, 144Smにおいて顕著な同位体過剰が検出された。このフラクションはカポエタ隕石中に含まれるレゴリス粒子の宇宙風化を受けた部分が溶出されていると考えられることから,本研究における一連の同位体測定の結果は、初期太陽の激しい活動がもたらした宇宙風化の検証につながると考えられる。
  • 三浦 弥生
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    244Puは半減期82Maの消滅核種で、太陽系形成時に存在していたことは理論研究や隕石内に見られる244Pu核分裂起源Xeや核分裂飛跡から明らかとなっている。244Puは近隣の重元素と同様に超新星爆発におけるr-processにより生成され、それらの存在度を知ることは元素合成モデルや太陽系固体物質形成時期の制約に非常に有用である。本研究ではAllende隕石(CV3コンドライト)のコンドルールについて、希ガス同位体分析をもとに244Pu量および244Pu/U比を求めた。244Pu/Uとして0.014+/-0.004(10分析の平均)が得られ、この値から元素合成モデルがどのように制約されるか考察する。
  • 馬上 謙一, 坂口 勲, 鈴木 拓, 糸瀬 悟, 松谷 幸, 工藤 政都, 石原 盛男, 内野 喜一郎, 圦本 尚義
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    Nagao et al. (2011) によるはやぶさ試料の希ガス同位体分析は太陽風照射とそれに伴う太陽風起源He/Ne間の分別を明らかにした.しかし,希ガス分析は粒子一粒ごとの結果でありSTEM観察との直接比較を行うには希ガス分析事前にSTEM観察を行うなど,分析方法の工夫が必要である.そこで,我々が開発したポストイオン化二次イオン質量分析装置LIMAS(Laser Ionization Mass Nanoscope)を用いることで,希ガス同位体分析を数十nmスケールの空間分解能で行うことが可能となり得る.本発表では新しい局所希ガス同位体分析手法をもとに,イトカワ表層での太陽風照射の履歴に関して期待される結果について述べる.
  • 寺田 健太郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G9 地球外物質・宇宙惑星化学
    セッションID: 1A09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    大強度陽子加速器施設J-PARC MUSE (MUon Science Establishment)の世界最高強度のパルスミュオンビームを用いた深さ方向分析"の予備分析の結果とマーチソン隕石およびアエンデ隕石の"muonic" X線分析について報告する"
G2 古気候・古環境解析の地球化学
  • 横山 祐典, 鈴木 淳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    熱帯から亜熱帯域の気候変動の卓越したモードにエルニーニョやラニーニャ, そして大気の変動である南方振動があるが, それらを含めたエルニーニョ・南方振動の挙動を理解することは, 気候システムの全体の理解に繋がる重要なテーマである.これらの気候システムの理解のためには長期間の測器記録の高分解能記録が有用であるが, 1950年を遡るとそれらのデータは少ない. そこで古気候分野では, 間接指標(プロキシ)をもちいた過去の気候復元研究が行われている.本講演では, 筆者らのグループを含めた古気候古海洋研究者において行われてきた近年の古気候研究におけるENSO復元の例を用いながら, ENSO研究の現状について紹介する.
  • 石輪 健樹, 横山 祐典, 池原 実, 上原 克人, 宮入 陽介, 鈴木 淳, Obrochta Stephen, 池原 研, 木元 克典, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    北西オーストラリア・Bonaparte湾で行われた白鳳丸KH11-1航海で採取されたコアの化学分析により最終氷期最盛期の堆積環境の復元を行った.最終氷期最盛期の海水準に相当する水深で採取されたコアを分析に用いることにより、海水準下降期・海水準最低下期・海水準上昇期のタイミングを捉えることでき、最終氷期最盛期における海水準変動の復元が可能である.本研究では最終氷期最盛期は約3000年間と短い期間であったことが結果として得られた.この結果は大陸氷床が安定 であった期間が短く、固体地球の応答に平衡に達していなかったことを示唆するものである.またBonaparte湾は現在約6 mと大きな潮汐を有している地域である.古潮汐モデルの結果から、最終氷期最盛期における潮汐変動と化学分析の変化に関係性があることが示唆され、海水準変動による潮汐変動が堆積環境に大きな影響を与えていることが示唆された.
  • 松中 哲也, 西村 弥亜, 守田 益宗, 渡邊 隆広, 中村 俊夫, Liping Zhu, 奈良 郁子, 今井 章雄, 笹 公和, 末木 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    チベット高原南部域における最終氷期最寒冷期以降の水循環変動を、湖沼堆積物中の各種プロキシを基に復元すること、およびその特徴を他の南西モンスーン域の古気候記録と比較することによって引き出すことを目的とした。ヒマラヤ山脈南端近くの湖の堆積物を対象に、花粉、水草、TOC、δ13CTOC、粒子サイズ、および炭酸塩態カルシウムの分析を行った結果、以下の事が示唆された。1) 1,170年周期の水循環変動を伴いながら、退氷現象が18,500年前には既に起こり、16,500年前以降更に活発化した。2) 15,000年前、南西モンスーンが弱まっていたにもかかわらず、湿潤化が突発的に進行し、他の地域より数百年早く気候改善が開始した。3) ベーリング/アレレード期におくて、南西モンスーンの発達によって湿潤化が急速に進行した。4) 完新世の気候最適期は、他の南西モンスーン域の中で最も早い11,400年前から開始し、最も遅い2,500年前に終了した。
  • 山本 真也, 内山 高, 輿水 達司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    山梨県・富士北麓地域の山中湖は、従来約2000年前の富士山火山活動によって河川がせき止められ成立したものと考えられてきた。一方、近年の山梨県の調査により、その成立が約6000年前に遡ることが明らかにされたが、その成因については未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、山中湖で掘削されたボーリング試料中の植物バイオマーカー組成の変動を調べ、過去1万2000年間の湖水位変動とその要因を検討した。その結果、堆積物中の沈水植物の寄与度を示すPaq値の変動から、約6000年前に水生植物が増加していたことが明らかとなった。一方、同堆積物中の長鎖脂肪酸の平均鎖長の変動は、山中湖流域で水生植物が増加する約6000年前に、流域の有効降水量が増加していたことを示しており、山中湖の成立が、富士山火山活動のみならず流域の湿潤化の影響を受けていたことが示唆された。
  • 三枝樹 慧, 沢田 健
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    バイオマーカーを使った古水温指標で最近、真正眼点藻から検出されるC28とC30 1,13-ジオールおよび1,15-ジオールの量比を用いた長鎖ジオール指数(Long-chain Diol Index (LDI); Rampen et al.,2012,GCA)という指標が新たに古水温指標として提案されている。また、演者らの研究グループでは、表層堆積物データによる水温-長鎖ヒドロキシメチルアルカノエイト指標との関係からヒドロキシメチルアルカノエイト指標(12-hydroxy Methyl Alkanoate index (MA12))として提案している(Kobayashi et al., 2012)。本研究では、それら新しい水温指標を日本近海の堆積物コアに応用し、海洋表層水温の年代変動を復元したので報告する。
  • 水田 麻美, 藤田 周, 山下 剛史, 北 逸郎, 大野 正夫, 桑原 義博, 林 辰弥, 長谷川 英尚, 千代延 俊, 佐藤 時幸
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    氷床拡大期(約250万年前)の5万年間(MIS 99~101)の堆積水銀量の変動パターンを明らかにし,第四紀の全期間に亘る堆積水銀量の気候変動史とその海洋水銀の堆積メカニズムを解明するため,北大西洋海域で掘削されたU1314の堆積コアの千年スケールの解析を行った。この水銀量変動はIRD量とよく対応しており,間氷期(MIS 99)から氷期(MIS 100)まで上昇し,MIS 101かけて減少に転じている。この両者の変動関係は,氷床拡大期に増加し,縮小期に減少する数万年スケールの気候変動に対応し,かつ同海域のU1308とU1304の現在から100万年前までの関係と一致している。さらに,両者の変動には,3千年と5千年の周期をもつピークが存在している。このような海洋水銀の堆積メカニズムが,全第四紀に亘って同様である可能性を報告する。
  • 宮川 千鶴, 水田 麻美, 山下 剛史, 北 逸郎, 大野 正夫, 桑原 義博, 林 辰弥, 佐藤 時幸
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    北大西洋堆積物コアを用いて,ガウス-松山地磁気逆転境界を含む,250万年前から290万年前までの堆積物コア試料を50 cm間隔で分析し,前年度発表したこの海域の現在から100万年前までと氷床拡大縮小期の表層水塊構造の気候変動の比較研究を行っている。その結果,石灰質ナンノプランクトンの上部種とTOC量は,4万年の周期を示すが,両者は逆パターンの変動関係を示す。また,有機炭素同位体比の値は,TOC量と逆パターンを示し,-22‰から-25‰の間で変動している。これらの変動幅は,U1308とU1304から得られた100万年前から現在のまで期間の変動幅に較べて明らかに小さい。一方,ガウス-松山地磁気逆転境界付近では,変動幅は顕著に大きくなっている。これらの結果に, この境界付近の2 cm間隔での分析結果を合わせて報告する予定である。
  • 田中 崇史, 石村 豊穂, 木元 克典, 原田 尚美, 鈴木 淳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A17
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    底性有孔虫であるUvigerina属は、古環境解析に用いられる代表的なタクサである。本研究では,①種内での個体毎の安定同位体比のばらつきの有無を評価、また②種間での安定同位体比の差違を明らかにすることを目的に,Uvigerina属の環境指標としての有用性を再検討した。 Uvigerina属の炭素・酸素安定同位体比は個体毎の同位体組成に高い均質性がみられ、他地域での先行研究(Ishimura et al., 2012)にて報告された分析結果と調和的である事から、種が異なってもUvigerina属自体の安定同位体組成はばらつきが小さく、1個体でも環境指標となり得ることを見出した。一方で、炭素安定同位体比に関しては、U. akitaensis はU. ochoticaに比べておよそ0.7‰重い値を持つという有意な差を見いだした。
  • 石村 豊穂, 角皆 潤, 長谷川 四郎, 中川 書子, 大井 剛志, 北里 洋, 菅 寿美, 豊福 高志
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    底生有孔虫殻の同位体組成は海洋環境指標として有用であるが,同位体非平衡(vital effectなど)の複雑さや,分析技術の限界という問題点があった.本研究では微量炭酸塩安定同位体比測定法を用いて個体別同位体組成を明らかにし,有孔虫という分類群全体の同位体非平衡の特徴を理解することをめざした. 分析結果から,種内の個体分散が小さい種ほど直接的に低層水のδ13C・δ18Oを推定する指標となることがわかった.また,殻重量が重く成長度合いが高い個体ほど,一個体でも環境指標として有効な指標となることがわかった.一方,有孔虫全体で同位体非平衡の特徴を図示すると,種毎で検討するよりも,有孔虫という分類群全体で捉えることにより,そのトレンドが明確に浮き彫りになることがわかる. また本研究では,vital effectが強い種でも同位体組成の個体分散をもとにして底層水の安定同位体組成を推定することが可能であることもわかった.
  • 平林 頌子, 横山 祐典, 鈴木 淳, 川久保 友太, 宮入 陽介, 岡井 貴司, 野島 哲
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    サンゴ骨格のδ18OとSr/Ca比は表面海水温(SST)復元に用いられる代替指標であるが、それらは骨格成長速度の影響を受け、環境変化を正しく記録しないという問題が指摘されている。McConnaughey (1989)は、δ18Oはサンゴの骨格成長速度が速いほど軽くなることを示した。一方でSr/Ca比には成長速度依存性がないことが、近年のサンゴの飼育実験の結果から明らかになってきた(Inoue et al., 2007; Hayashi et al., 2013)。本研究では熊本県天草市牛深町から採取されたハマサンゴのδ18OおよびSr/Ca 比の骨格成長速度依存性の評価を行った。本研究の結果、Sr/Ca比は成長速度に依存しないことが明らかになり、Sr/Ca比は非常に優れたSSTの代替指標であることが示唆された。これにより、温帯域サンゴを使用した温暖化の長期復元が可能になると考えられる。
  • 長島 佳菜, 鹿山 雅裕, 西戸 裕嗣, 豊田 新, 黒崎 泰典
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A20
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    石英は地殻を構成する主要な鉱物であり、SiO2という単純な組成ではあるが、結晶成長時の温度や圧力の違いにより、様々な結晶構造の変異(欠陥や転移)や不純物元素(Ti4+, Ge4+, Al3+, Fe3+など)の混入を生じる。また生成後に受けた温度や圧力によっても欠陥の解消や新たな生成また不純物の移動などを生じ、石英の結晶構造には、生成時だけでなく、生成後の環境に関する情報も記録される。筆者らは、石英の結晶構造の変異や元素の混入が多岐に渡ることに注目し、様々な手段で構造欠陥と微量元素の検出を試み、石英の供給源推定に役立てたいと考えている。本研究では、石英の欠陥ならびに不純物中心の特徴を古気候研究へ応用すること、具体的には堆積物中の風成塵(ダスト)の起源地推定を念頭に、中国のタクラマカン砂漠とゴビ砂漠表層から採取された石英の個別粒子について、カソードルミネッセンス分析を行い、各砂漠由来の石英の違いを抽出することを目指した。
  • 野津 太一, 田近 英一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G2 古気候・古環境解析の地球化学
    セッションID: 1A21
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,化学風化の制御要因の地域性を明らかにし,全球化学風化速度の気候依存性を求めるため,風化帯の物理・化学的素過程を組み合わせた数値モデルを開発した.このモデルは,現在の世界の大河川の流出水主要陽イオン組成をよく再現できる.
    感度実験の結果,現在の世界の大河川においては化学風化が輸送律速を受けていると考えられる地域が多いが,2つの制御要因の競合する条件にある地域も確認された.このことは,気候変動に対する化学風化速度の応答を議論する場合に,本研究で開発したような地域性を考慮できるモデルを用いる必要があることを示唆する.
G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
  • 伊藤 健二, 森泉 純, 山澤 弘実
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B01
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    森林生態系は陸尉記載大のCO2吸収源かつ放出源であり、気候変動の将来予測には森林内炭素収支を理解することが不可欠である。なかでも森林土壌は森林全体の約2/3もの炭素を貯蔵している巨大な炭素リザーバーである。本研究では土壌表面に存在する植物遺体(リター)層と土壌層間の炭素供給機構の解明を目的とし、地表に新たに供給されるリターフォール、数年上の分解とリター供給を受けてきたL層リター、表層土壌の炭素含有率および炭素同位体比を分析することで、土壌層への炭素供給にリター以外の供給源が大きな寄与を与えている可能性が示唆された。
  • 酒井 義人, 森泉 純, 山澤 弘実
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B02
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    二酸化炭素は光合成により植物体に固定され、落葉・落枝を経て土壌中に土壌有機物 (SOM)として貯留される。SOM は陸域生態系で最大の炭素リザーバーであり、その分解による二酸化炭素放出の変動は大気中二酸化炭素濃度に大きく影響する。SOMの分解速度は、土壌の含水量や温度などの環境因子より変動するが、極端な乾燥とその後の再湿潤で二酸化炭素放出率が大きくなることが報告されている。しかしその定量、メカニズムの解明は不十分である。本研究では、土壌の乾燥再湿潤による二酸化炭素放出量増加の定量化、そのメカニズムの解明を目的とし、採取土壌の培養により土壌の乾燥再湿潤による二酸化炭素放出量、炭素同位体比(δ13C値)を測定することで、SOMの分解速度及び分解される基質の特徴を調べた。
  • 安藤 卓人, 沢田 健, 西 弘嗣, 高嶋 礼詩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B03
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    中期白亜紀は高海水準で非常に温暖な時代であり,有機物に富む黒色頁岩の堆積から幾度も海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event; OAE)が起こったと推測されている。OAE1b(115~110Ma)は,テチス海を中心とした地域的なOAEであったとされ,Aptian/Albian境界を挟んで長期に渡って複数の黒色頁岩層が確認される。特に最盛期であるKilian層準・Paquier層準の黒色頁岩中からはメタン生成アーキア由来のPMI(2, 6, 10, 15, 19-ペンタメチルイコサン)などが検出されることから,「アーキアの海(Archaeal ocean)」が広がっていたとされている。本研究では,OAE1b層準の詳細なバイオマーカー分析を行い,アリルイソプレノイドに着目して起源を推察し,層準内におけるそれらの濃度変化から当時の海洋生態系の復元を試みた。
  • 宮田 遊磨, 沢田 健, 中村 英人, 池田 慧
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B04
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    白亜紀のような古代の堆積物中には陸上高等植物に由来する有機物片が普遍的に存在している.これらは主に植物体を構成するリグニンやクチンといった抵抗性高分子から構成され,化学的に安定で微生物分解や続成作用に抵抗性を持つため選択的に保存されたものである.これ等の有機化合物は分類群や生育環境によってその組成が特徴的に変化するため,化学分類指標や古環境指標などへの応用が期待されているが,地質時代の堆積物で検討した例は少ない.演者らの研究グループでは,白亜紀の陸上植物化石の化学分析により,抵抗性高分子を構成しているエステル結合態の飽和脂肪酸ユニットの組成が部位により異なることを明らかにし,化学分類指標を提案している(Ikeda et al., submitted).本研究では,様々な植物組織が含まれる海成堆積物中の植物由来の不溶性有機物(ケロジェン)に応用し,古植生や陸域古環境の復元に適用できるかを検討した.
  • 緒方 秀仁, 沢田 健
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B05
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    堆積岩中の有機物の大部分は、生体由来の、酸・塩基・有機溶媒に不溶の巨大分子であるケロジェンであり、化石燃料資源や過去の環境・気候の復元、古生物学に関連する研究において重要な情報源となっている。従来、ケロジェンの地球化学分析においては、熱分解分析(pyrolysis)が広く用いられてきたが、近年では誘導体化試薬を添加し加熱することで、瞬時に加水分解と誘導体化を行う熱化学分解分析(Thermochemolysis)が注目され、応用されつつある。しかし、ケロジェンのような複雑な巨大分子の熱化学分解分析の明確な手法が確立していない。本研究では、タイプの異なるいくつかのケロジェンにおいて、3種類の誘導体化試料を用いて、それぞれの加熱温度・時間などの分析条件が与える反応効率への影響を検証した。そして、ケロジェンの熱化学分解分析の最適条件を提示する。
  • 淵田 茂司, 水野 友貴, 益田 晴恵, 土岐 知弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B06
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    アミノ酸およびその高分子体は海洋における有機炭素の主要なリザーバーとして,生物地球化学サイクルの中で重要な役割を果たしている。本研究では,南部マリアナトラフ付近から採取した熱水中に含まれるアミノ酸量を測定し,熱水循環に伴うアミノ酸の挙動について考察した。200℃以上の高温の熱水からは,10 μM以上の加水分解性アミノ酸が検出されたが,50℃以下の低温の熱水および海水では1 μM以下で,アミノ酸の濃度は一貫して低かった。一般的に,アミノ酸等の有機分子は温度の上昇に伴不安定となるが,今回,高温の熱水ほどアミノ酸の濃度は高くなった。生物由来のアミノ酸を含む岩石や堆積物と高温の熱水が反応することで,アミノ酸の溶出が促進されているのであろう。
  • 光延 聖, 濱村 奈津子, 片岡 剛文, 白石 史人, 坂田 昌弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 現世および過去の有機物・微生物・生態系の地球化学
    セッションID: 1B07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究において演者らは、化学種決定と機能遺伝子解析を併用し、ヒ素汚染環境でおきるヒ素酸化反応の生物地球化学的考察を行なった。化学種決定に基づいた速度論的考察およびヒ素酸化酵素遺伝子の定量から、本研究フィールドでは生物的なプロセスによるヒ素酸化反応が支配的であることがわかった。ヒ素酸化反応によって生成される5価のヒ酸は水酸化鉄鉱物など固相へ取り込まれやすい性質をもつため、この生物学的プロセスによるヒ素酸化反応によって堆積物へのヒ素固定が促進されることが予想される。
G12 水圏環境化学
  • Adebanjo Jacob Anifowose, 竹田 一彦, 佐久川 弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    東広島市黒瀬川河川水中の過酸化水素、一酸化窒素(NO)、OHラジカル(.OH)について、2013年1月から5月にかけて毎月測定した。`過酸化水素濃度は、フェントン反応を介して分析し、亜硝酸 、硝酸濃度はイオンクロマトグラフィで測定した。過酸化水素濃度の範囲は、94-172 nMであり、NOおよび .OHの生成速度(x 10-10 Ms-1)は、それぞれ0.03-14.81 、 0.06-6.36であり、消失速度は0.11-0.49 s 、 0.39-5.84 µs、定常状態濃度は0.01?3.66 (x 10-10 M) 、 0.52-27.46 (x 10-16 M)であった。さらに、NO生成速度と亜硝酸 濃度には相関があり(r2 = 0.933)、亜硝酸の .OH 生成寄与率70%以上であることから亜硝酸 は主要なNOおよび .OH前駆体であることを示唆した。
  • Chikumbusko Chiziwa Kaonga, 竹田 一彦, 佐久川 弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    河川水中における農薬の残留は最も重要な環境問題のひとつである。本研究では東広島市黒瀬川の6か所で毎月河川水の採取を行い、フェニトロチオン、ジウロンおよびイルガロールについて調査した。試料から対象化合物を固相抽出し、HPLC/UV-Visを用いて定量した。濃度の範囲はそれぞれ、ジウロン (n.d-4620ng/L)、 イルガロール (n.d-50ng/L) 、フェニトロチオン (n.d-310ng/L)であった。ジウロンは稲の作付が行われる5月に濃度が最も高く、フェニトロチオンは4月に最高の濃度であり、稲育苗床での使用に起因することが考えられた。イルガロールは1か所のみで検出され、5月に最も高くなったが、ジウロンより低い濃度であった。これは建物用の保護塗料に起因していると考えられた。
  • 角皆 潤, 南 翔, 佐久間 博基, 大山 拓也, 小松 大祐, 中川 書子, 加藤 憲二
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    火山周辺に形成される山麓湧水系は、飲料用などに適した酸化的な水質であることが多く、富士山湧水系も、そのほとんどが大気との気体交換平衡に近い、高い溶存酸素濃度を示す。しかし、これらの湧水系は、溶存全炭酸や硝酸にも富んでおり、これらは有機物を起源として、その呼吸反応(再無機化反応)によって形成されたことを示唆している。酸素は呼吸反応によって消費されるため、溶存酸素に富んでいることは矛盾しているように見える。そこで本研究では、富士山麓の自噴湧水で溶存酸素の酸素同位体組成測定を行い、湧水系の溶存酸素の起源や、大気平衡に近い溶存酸素濃度を保持するシステムを考察した。
  • 板井 啓明, 兵部 唯香, 田辺 信介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    琵琶湖の湖底表層には、マンガン濃集層が広く存在することが知られている。このマンガンは主に酸化物態で存在することから、近年の琵琶湖の貧酸素化により還元反応が進行し、湖水へ大量溶出することが懸念されている。本研究では、琵琶湖北湖盆7地点で採取したコア堆積物と間隙水の化学組成を基に、今後貧酸素化が進行した際のマンガンの形態変化および固-液分配変化を仮定し、拡散モデルを用いて底泥からの溶出フラックスの変化を推定した。その結果、貧酸素化にともなう溶出挙動変化は地点間で異なるものの、底泥からの溶出フラックスとして最大で現在の20倍程度に増加ことが推察された。
  • 中村 乾, 加藤 英孝, 鈴木 克拓, 本間 利光
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    水田土壌は湛水期には有機物分解により還元状態が発達しやすく,落水時には酸素侵入により酸化的状態に移行する。土壌中の酸素拡散は気相率に依存するため,水田土壌の酸化還元状態やAs・Cdの可溶化・不溶化も気相率の支配を受けると予想される。ここでは,水田圃場から土壌試料を採取し,溶存AsおよびCd濃度と気相率の関係を明らかにしようとした。溶存As濃度と気相率の関係には閾値気相率が存在し,溶存As濃度が高かったのは,気相率が0.03-0.10 m3 m-3未満の試料に限られた。一方,溶存Cd濃度は気相率との間に正の直線的関係があった。このことは,水田土壌中の溶存As濃度とCd濃度は必ずしも相補的関係になく,気相率がAs不溶化の閾値よりやや高い試料では,両者がともに低い傾向があった。これらの結果は,適切な水管理により気相率をAs不溶化の閾値よりやや高めに保てば,水田土壌中の溶存AsおよびCd濃度を同時に低レベルに抑えられることを示唆する。
  • 河合 徹, 半藤 逸樹, 鈴木 規之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    残留性有機汚染物質(POPs)の環境中における動態は、大気-海洋-陸域-生物圏に渡って複合的に評価する必要がある。これまで、POPsを対象とした多媒体モデルの開発は広く行われており、環境媒体中における濃度レベルを予測することは可能となってきている。一方、これら全てのモデル研究において、環境媒体中の濃度から生物への曝露量を予測できる段階には至っていない。本研究では、筆者らが開発を行っている全球多媒体モデルに、衛星データベースの生態系モデルと既存の生物濃縮モデルを導入し、全栄養段階にある海洋水産資源へのPOPsの曝露量を時空間的に高い解像度で予測することを試みた。講演会では、排出から海洋生物への曝露に至るまでの一連のモデリングを紹介し、また、代表的なPOPsであるPCBsを取り上げてシミュレーションを行った結果を発表する。
  • 田中 雅人, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    ヒ素水質汚染の主な原因は天然由来の亜ヒ酸・ヒ酸などの無機ヒ素化合物である。一方で、有機ヒ素化合物は除草剤や農薬の用途で使用され環境中に存在しており、これらもまたヒ素水質汚染の原因となり得る。土壌中におけるヒ素化合物の吸着挙動を理解することは、ヒ素化合物による水質汚染の機構の解明や予測モデルを作成する上で重要であると考えられる。しかし、土壌中における有機ヒ素化合物の吸着挙動についてはあまり研究がなされていない。本研究では、土壌中における有機ヒ素化合物の吸着挙動を理解するために、メチルヒ素化合物(メチルアルソン酸(MMA)、ジメチルアルシン酸(DMA))およびフェニルヒ素化合物(フェニルアルソン酸(PAA)、ジフェニルアルシン酸(DPAA))について土壌への吸着実験を行い、広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定および量子化学計算により吸着構造の解析を行った。それらの結果をフェリハイドライトへの吸着構造解析との比較を行った。
  • 藤本 潤, 田中 万也, 高橋 義夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    希土類元素(REE)は様々な電子機器に使用され、重要な資源である。しかし、生産の遍在性が高いため、日本を含めた多くの国でREE資源の安定供給が課題となっている。そこでREEを高濃度で含み、日本の海底に豊富に存在するマンガン団塊に着目した。さらにREEの回収方法は環境への負荷が大きい、高コストといった問題点が懸念されている。以上のことから、環境にやさしく、低コストなREEの回収方法として、鉄還元菌を用いたマンガン団塊中のREEの同時抽出・濃縮法の研究を行った。
  • 太田 充恒, 久保田 蘭
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 水圏環境化学
    セッションID: 1B16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    (独)産業技術総合研究所では、元素形態別地球化学図作成に向けて研究を進めている。信頼性の高い形態分析を行うために、逐次溶解法を用いた地球化学標準物質中の元素形態分析の結果について報告を行ってきた(久保田ほか,2010年度年会)。しかし、逐次溶解法は化学的手法に基づく破壊分析法であり、目的としている化学形態を正しく分析しているのか不明な点がある。そこで、逐次溶解法を用いて化学形態毎に抽出した試料についてX線吸収端構造(XANES)を測定し、目的としている抽出形態であるのか確かめることを試みている。2010年度には銅の存在形態について、逐次溶解法による形態分析が目的としている抽出形態を忠実に反映している事を報告した(太田ほか,2010年度年会)。本発表では、亜鉛の形態情報についてXANESスペクトルの解析を行った結果を報告する。
G1 大気微量成分の地球化学
G1 大気微量成分の地球化学
  • 松本 潔, 篠原 広徳, 兼保 直樹, 山口 高志, 秋山 雅行, 野口 泉, 入野 智久
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    エアロゾル中元素状炭素(EC)は放射収支に大きな影響を及ぼすことから、気候変動の化学因子として近年特に注目されている。しかしその大気からの除去、すなわち地表面沈着に関する理解は乏しく、観測データは少ない。ECによる気候影響の評価の精度を高めるためにも、その沈着量や沈着過程に関する観測研究が必要である。本講演では、利尻島で採取された降下物中ECの測定結果を紹介すると同時に、その沈着過程について考察する。
  • 大山 拓也, 角皆 潤, 小松 大祐, 中川 書子, 野口 泉, 山口 高志
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、札幌(都市域)と利尻(バックグランド域)において、乾性沈着と湿性沈着の両方のHNO3の三酸素同位体異常(Δ17O)値の時間変化を、同時進行で定量化することで、両者の間に違いがないか検証した。分析の結果、利尻における乾性沈着HNO3と湿性沈着HNO3のΔ17O値は傾き= 1の直線関係を示した。これはHNO3の生成経路が両者間で同一であることを示している。一方、札幌では湿性沈着HNO3に対して、乾性沈着HNO3が有意に小さいΔ17O値を示し、その傾向は特に冬季に顕著であった。札幌では、近隣の発生源からの寄与が乾性沈着に反映されていることが示唆される。
  • 奈良 英樹, 谷本 浩志, 向井 人史, 野尻 幸宏, 遠嶋 康徳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    国立環境研究所では今まで大気観測の空白域となっていた東南アジア域において貨物船を用いた洋上大気中のCH4の長期連続観測モニタリングを2009年より実施している。今までの観測でCH4のピークがマレー半島東岸沖、およびボルネオ島西岸域において集中的に検出された。解析の結果、これらのピークは主に石油プラットフォームからのCH4の放出が原因であると考えられた。人工衛星観測データを用いて東南アジア域における石油プラットフォームの位置の同定を行った結果、今日多くのモデル計算に用いられているCH4の放出インベントリーデータ(EDGARv4.2)が東南アジア域における石油プラットフォームからのCH4放出量に関して大きな誤差を持っていることが明らかになった。
  • 白井 知子, 石澤 みさ, Ruslan Zhuravlev, Alexander Ganshin, Dmitry Belikov, 齊藤 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    インバースモデルを使用した全球の大気中二酸化炭素フラックス推定において、使用する観測値の違いで、結果にどのように違いが出るか、複数の観測データセットを用いて比較を行った。輸送モデルは、オイラー型の全球大気輸送モデルとラグランジアン型の拡散モデルを組み合わせたカップルモデルを用いた。インバージョンにより得られたフラックス推定値は、全球総量では観測データセットの違いで大きく変わらなかったが、地域ごとに比較すると、観測値が増えた地域で特に季節変動に大きな変化が見られ、観測網の充実が地域スケールのフラックス推定へ与える影響が示唆された。また、インバージョンにより最適化されたフラックスを用いたフォワード計算の結果を観測値と比較したところ、観測網を充実させるほど、観測値と計算値のずれが縮まることが示された。
  • 石島 健太郎, 豊田 栄, 滝川 雅之, 須藤 健悟, 青木 周司, 中澤 高清, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    大気中一酸化二窒素(N2O)は主要な温室効果気体として知られる一方で、今世紀最大のオゾン破壊物質であると考えられている。近年、N2O濃度測定精度の向上と、観測ネットワークの拡大により、N2Oの全球循環の把握を目的としたモデル研究を行う土台が整ってきた。N2O濃度の全球モデリングは最近では珍しくなく、逆解法による地表フラックスの見積もりも行われているが、もう一つのN2O放出源特定ツールであるN2Oの安定同位体に関しては、観測や室内実験等の研究は比較的数多くあるものの、全球モデルの研究は非常に限られている。本研究では、化学気候モデルをベースに開発されたN2O同位体モデルを用い、現代と産業化以前の大気中N2O同位体を再現し、それにより全球平均のN2O同位体放出量及び消滅量の見積った。その結果、N2Oの人為放出源の同位体比値は、過去の観測ベースの結果と比較して、傾向は似るが、有意に異なっていた。詳細については発表で報告する。
  • 佐藤 知紘, 佐川 英夫, 吉田 尚弘, 笠井 康子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    地球中層大気のオゾンは大きな酸素同位体濃縮(d, 約10%)を持ち,高度40kmより上空,中間圏における観測結果は一例も報告されていない.中間圏は成層圏とは異なる温度構造や化学反応プロセスを持ち,それらがオゾン同位体比にいかに影響するかを理解することは,地球のみならず惑星大気の酸素同位体比への知見の観点からも興味深い.本発表では,SMILESの観測データを用いて,成層圏から中間圏にかけての18OOOの酸素同位体比高度分布を初めて導出した.この高度分布は,成層圏では高度とともに増加,中間圏では減少し,温度と正の相関を示した.成層圏でのd18OOOの増加は過去の観測と良く一致し,成層圏界面で最大(18±5%)になった.中間圏でのd18OOOの減少は夜間でも確認されたので,光ではなく温度が主要因であると考えられる.
  • 松枝 秀和
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1 大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1C13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    日本航空の旅客機を用いた定期観測で得られた高度約10㎞の上空の二酸化炭素(CO2)のデータを解析し、人為源CO2放出量と密接に関係した長期的なCO2緯度分布の変化を捉えることができた。この関係を用いて、化石燃料燃焼起源のCO2放出がほとんど無い産業革命当時の緯度分布を評価した。その結果、1)南半球が北半球に比べて濃度が高く、現在とは逆の南北勾配となっていること、2)熱帯で相対的に濃度上昇するピークが形成されていることが明らかになってきた。
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