【目的】突然に重要な感覚を失う可能性に直面することを強いられた網膜剥離患者の体験の意味を理解し,構造と特徴を明らかにする.
【方法】9名の網膜剥離患者に非構成的な面接を行い,得られたデータを現象学的アプローチを用いて質的記述的に分析する.
【結果】網膜剥離患者の体験する構造は,以下のとおりであった.網膜剥離患者は,視覚の変化を気にしながらもすぐに治るだろうと考えていたが,変化は進んでいくばかりだった.そこで患者は周りの人の後押しもあって病院へ行き,医師から病名と手術しなければ失明するので緊急入院・緊急手術が必要と告げられて驚き動揺していた.直後に手術をすれば失明はしないとわかり安堵し,即座にその日の手術を受諾していた.しかし,手術を待つまでの間に万一の場合の失明不安に思いが至り,再び気持ちが揺れ動いていた.手術後,視力を保持していると実感して安心することができていた.経過は順調かどうかを自分の視覚を用いて自己確認をしていた.退院後,発病以前の生活に戻ることができ,社会的役割の喪失はないが,払拭しきれない再発の不安を抱えていた.その対処行動として定期的に検診を受診していた.
【結論】網膜剥離患者の体験の特徴は,突然に与えられた失明の不安と失明回避による安心を繰り返すという揺れる経過をたどるものであった.
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